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9話:その名はギリースーツ
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5匹の鶏を仕留めた私たちは、それを料理長に託した。
「今夜は鳥祭りですね」なんて笑って言われたけど、ちょっと笑えなかった。
自分で鶏を絞めたのなんて初めてだし。
小鳥を撃ったことはあったのに、なんだか大きさが変わるだけで感覚が全然違った。
でも、私戦場に出たら人を撃つんだよね。
タリムのためだって割り切らないといけない。
「ミリアもルーナも良い連携でした。2人に追加で渡したいものがありますから私の部屋に来なさい」
「はい、お母様」
なんとも言えない気持ちで私たちはお母様の部屋に向かった。
お母様はソファーに座るとその向かいに私たちを座らせた。
「こんな連続である程度の大きさの生き物を撃ったのは初めてでしょうから衝撃ですよねミリア?」
「…」
「あなたたちには銃を渡した時に作戦を教えてあげると話していましたね。戦場では偵察をしながら敵将校を重点的に狙ってもらいます」
「それは、なぜでしょう?」
私にはなぜ将校だけを狙うのかが、よくわからなかった。
「いいこと?軍隊は組織なのよ。それはわかるわよね?」
「はい、わかります」
基本的に軍隊は指揮をする者、例えば5人隊長とか100人隊長とかそういう人たちの単位でまとまっている。
「つまり、その指揮をする人を集中的に倒せば、軍隊は乱れる。味方の援護になるわけね」
「ですが、そんなのどうやって見分けるのです」
「簡単よ。偉い指揮官は大体派手な格好をしているわ。ウチの第一軍団を思い出してご覧なさい?軍団長は専用の甲冑を纏っていたでしょ?」
確かにそういえばそうだ。
ウチの騎士団長全身甲冑着てるけど他の人たち着てないわ。
「それに騎乗していることが多いから狙いやすいはずよ」
なるほどと思う。
基本指揮を執る人は高いところにいることが多いし。
「なので、軍本体とは別に斥候としてふたりにはコーラシル川の向こうにいる王国軍に合流して欲しいの。そこで王国軍第三騎士団が戦線を維持しているわ」
「コーラシル砦が拠点ではないのですか?」
お父様がそこに詰めているからそこへ行くんだと思った。
「ミリアとルーナの役目は王国軍と共に戦うことよ。ま、王家に貸しを作りたいのも有るけれど」
なるほどと思う。
お父様は砦で防衛しているから、王国軍本体には合流できない。
でも子爵家として出兵しないわけにいかないから代わりに私たちが出るということにするのね。
「わかりました…」
まだ人を撃てる自信はない。
でもタリム子爵家の令嬢として戦場に行く限りはやらなきゃならない。
グッと拳に力を入れて頷く。
「覚悟が決まったようで良かったわ。 というわけで、これを渡します。ユーリあれを」
お母様が専属侍女のユーリに声をかけると、彼女はなんだか緑色や茶色が混ざったもふもふしたものを持ってきた。
「な、なんですかこれは?」
「ギリースーツというものよ。この服の上からきます」
もふもふとは別にいろんな緑色でランダムに染められた長袖の丈の長い上着とパンツが置かれる。
「これは迷彩服。このうえからギリースーツをきます。あとこれは専用のメイクね」
そういって白粉のようなケースを置くお母様。
蓋を開けるとこれも緑色をしている。
「いいこと?ミリア、ルーナ。あなたたちは戦場で一切発見されてはなりません」
「発見されない?」
「そう、自然に溶け込むの。このギリースーツは元からついてるカモフラージュ用のもふもふ以外にも、その場で木の枝や葉っぱを留められる構造をしています。自然に溶け込みなさい。そしてライフルの一撃で敵に見つからずに将校を倒すのよ」
敵に見つからない?
つまり騎士のように正々堂々とは戦わないということ?
名乗りもあげないの?
そんな闘い方をして大丈夫なのかしら…
「今夜は鳥祭りですね」なんて笑って言われたけど、ちょっと笑えなかった。
自分で鶏を絞めたのなんて初めてだし。
小鳥を撃ったことはあったのに、なんだか大きさが変わるだけで感覚が全然違った。
でも、私戦場に出たら人を撃つんだよね。
タリムのためだって割り切らないといけない。
「ミリアもルーナも良い連携でした。2人に追加で渡したいものがありますから私の部屋に来なさい」
「はい、お母様」
なんとも言えない気持ちで私たちはお母様の部屋に向かった。
お母様はソファーに座るとその向かいに私たちを座らせた。
「こんな連続である程度の大きさの生き物を撃ったのは初めてでしょうから衝撃ですよねミリア?」
「…」
「あなたたちには銃を渡した時に作戦を教えてあげると話していましたね。戦場では偵察をしながら敵将校を重点的に狙ってもらいます」
「それは、なぜでしょう?」
私にはなぜ将校だけを狙うのかが、よくわからなかった。
「いいこと?軍隊は組織なのよ。それはわかるわよね?」
「はい、わかります」
基本的に軍隊は指揮をする者、例えば5人隊長とか100人隊長とかそういう人たちの単位でまとまっている。
「つまり、その指揮をする人を集中的に倒せば、軍隊は乱れる。味方の援護になるわけね」
「ですが、そんなのどうやって見分けるのです」
「簡単よ。偉い指揮官は大体派手な格好をしているわ。ウチの第一軍団を思い出してご覧なさい?軍団長は専用の甲冑を纏っていたでしょ?」
確かにそういえばそうだ。
ウチの騎士団長全身甲冑着てるけど他の人たち着てないわ。
「それに騎乗していることが多いから狙いやすいはずよ」
なるほどと思う。
基本指揮を執る人は高いところにいることが多いし。
「なので、軍本体とは別に斥候としてふたりにはコーラシル川の向こうにいる王国軍に合流して欲しいの。そこで王国軍第三騎士団が戦線を維持しているわ」
「コーラシル砦が拠点ではないのですか?」
お父様がそこに詰めているからそこへ行くんだと思った。
「ミリアとルーナの役目は王国軍と共に戦うことよ。ま、王家に貸しを作りたいのも有るけれど」
なるほどと思う。
お父様は砦で防衛しているから、王国軍本体には合流できない。
でも子爵家として出兵しないわけにいかないから代わりに私たちが出るということにするのね。
「わかりました…」
まだ人を撃てる自信はない。
でもタリム子爵家の令嬢として戦場に行く限りはやらなきゃならない。
グッと拳に力を入れて頷く。
「覚悟が決まったようで良かったわ。 というわけで、これを渡します。ユーリあれを」
お母様が専属侍女のユーリに声をかけると、彼女はなんだか緑色や茶色が混ざったもふもふしたものを持ってきた。
「な、なんですかこれは?」
「ギリースーツというものよ。この服の上からきます」
もふもふとは別にいろんな緑色でランダムに染められた長袖の丈の長い上着とパンツが置かれる。
「これは迷彩服。このうえからギリースーツをきます。あとこれは専用のメイクね」
そういって白粉のようなケースを置くお母様。
蓋を開けるとこれも緑色をしている。
「いいこと?ミリア、ルーナ。あなたたちは戦場で一切発見されてはなりません」
「発見されない?」
「そう、自然に溶け込むの。このギリースーツは元からついてるカモフラージュ用のもふもふ以外にも、その場で木の枝や葉っぱを留められる構造をしています。自然に溶け込みなさい。そしてライフルの一撃で敵に見つからずに将校を倒すのよ」
敵に見つからない?
つまり騎士のように正々堂々とは戦わないということ?
名乗りもあげないの?
そんな闘い方をして大丈夫なのかしら…
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