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4話:戦争勃発と学校の変化
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先月お母様から手紙をもらってから半年、平穏な学校生活は突如終わりを告げた。
私は今実家に向かう馬車の中ルーナと2人で今まで起きたことを振り返っている。
「ルーナ、貴族学校って本来、各貴族が王家を裏切らないように人質として子息令嬢を預けたのが始まりって聞いたのだけれど、今回みな実家に帰ることが許可されたのはなんでかしら?」
「戦争の状況が芳しくないからだと思いますよ」
ルーナの意見は尤もである。
帝国との戦争…厳密に言えば帝国の第二皇子が始めた戦争は、双方ともに銃を主力とする戦争となった。
隊列を組んでの一斉射撃の威力は尋常ではなく、多くの兵士が亡くなった。
特に今まで防御の中核であった盾持ち騎士たちはマスケットの前では無力でしかなく、互いに相手の射程に入らないように戦うようになったそうだ。
戦場の華であった騎兵突撃は今や自殺行為でしかなく、両国の貴族たちがその身をもって証明した。
おかげで、学校に通っていた子息令嬢たちの1/3に及ぶものが実家を継ぐためや、急遽自軍の旗頭として家に帰る事になった。
そうするともう学校が成り立たない。
王家は貴族学校の休講を決め、生徒には自主的な選択肢を残した。
結果、私たちは実家に帰っているのである。
「ガリム領までは距離がありますが、いつこちらに攻め込まれるかと市民は不安がっているそうね」
「仕方ないでしょう。昔の戦争は貴族と兵士がやるもので華々しい話ばかりが流れておりましたが、20年前の帝国との戦争はかつてと違い、ガリムというよりタリムが甚大な被害を受けたことから市民は怖くて仕方がないのですよ」
「それにしてもなぜ帝国は戦争なんか始めたのかしら?聞く限りまだ後を継ぐ皇帝も定まっていないのに、どうやって戦争なんて始められるのかしら」
そう、謎なのは今帝国に"皇帝"がいないこと。
第一皇子と第二皇子による皇位継承権争いが起こっているというのが事実のようなのだ。
「ルーナなにか知っていて?」
「ミリアも頭がよろしいんですからたまにはご自分で調べて考えたらよろしいのでは?」
「まぁそう言わず」
「私が聞いているのは、その皇位継承権争いが原因と聞いています」
「やっぱりそうよね…前皇帝も余計な遺言を残したものだわ」
前皇帝の遺言。
それは"より大きな功績を残した皇子を皇帝にする"である。
決定権は皇国の貴族院。
その貴族院が第一皇子派と第二皇子派で真っ二つなんだそうだ。
そして、第二皇子派はこの度の侵略戦争の成功をもって第二皇子を皇帝に就けたいらしい。
また、第二皇子は特に好戦的だと聞く。
外交で向かったアルミナ王国使節団に上から物をいうわ無茶な要求をするわで第一皇子に諌められていたそうだ。
その話からも第一皇子が皇帝についた方がどう考えても平和になると思うのだが、第二皇子派は軍部がついているらしく内戦になるぐらいなら外に向かわせようという第一皇子派の思惑もあるのかもしれないと言われている。
いいめいわくである
うちの実家は国境未確定地域に近いのだ。
今実家に帰っているが明らかに"危ない方向"へ向かっている事になる。
でもお母様から絶対に帰ってこいって言われているしなぁ
帰らんわけにはいかない。
それに…
「私も戦場にでてタリムを守りたいわ」
「レイノルド様はすでに防衛にあたっているとのことでしたね」
「コーラシル川砦に詰めているそう。怪我とかしていなければいいけれど」
剣の腕はたしかなお父様だけど見た目がほっそいので弱そうに見えるし、銃の扱いはからっきしなんだよね。
この半年の戦闘で銃の有用性は嫌というほど国内外に示されている。
お母様が助言しているそうだけど…絶対私の故郷を馬鹿な帝国軍人になんて踏ませないからと思いながら、私は馬車に揺られていた。
私は今実家に向かう馬車の中ルーナと2人で今まで起きたことを振り返っている。
「ルーナ、貴族学校って本来、各貴族が王家を裏切らないように人質として子息令嬢を預けたのが始まりって聞いたのだけれど、今回みな実家に帰ることが許可されたのはなんでかしら?」
「戦争の状況が芳しくないからだと思いますよ」
ルーナの意見は尤もである。
帝国との戦争…厳密に言えば帝国の第二皇子が始めた戦争は、双方ともに銃を主力とする戦争となった。
隊列を組んでの一斉射撃の威力は尋常ではなく、多くの兵士が亡くなった。
特に今まで防御の中核であった盾持ち騎士たちはマスケットの前では無力でしかなく、互いに相手の射程に入らないように戦うようになったそうだ。
戦場の華であった騎兵突撃は今や自殺行為でしかなく、両国の貴族たちがその身をもって証明した。
おかげで、学校に通っていた子息令嬢たちの1/3に及ぶものが実家を継ぐためや、急遽自軍の旗頭として家に帰る事になった。
そうするともう学校が成り立たない。
王家は貴族学校の休講を決め、生徒には自主的な選択肢を残した。
結果、私たちは実家に帰っているのである。
「ガリム領までは距離がありますが、いつこちらに攻め込まれるかと市民は不安がっているそうね」
「仕方ないでしょう。昔の戦争は貴族と兵士がやるもので華々しい話ばかりが流れておりましたが、20年前の帝国との戦争はかつてと違い、ガリムというよりタリムが甚大な被害を受けたことから市民は怖くて仕方がないのですよ」
「それにしてもなぜ帝国は戦争なんか始めたのかしら?聞く限りまだ後を継ぐ皇帝も定まっていないのに、どうやって戦争なんて始められるのかしら」
そう、謎なのは今帝国に"皇帝"がいないこと。
第一皇子と第二皇子による皇位継承権争いが起こっているというのが事実のようなのだ。
「ルーナなにか知っていて?」
「ミリアも頭がよろしいんですからたまにはご自分で調べて考えたらよろしいのでは?」
「まぁそう言わず」
「私が聞いているのは、その皇位継承権争いが原因と聞いています」
「やっぱりそうよね…前皇帝も余計な遺言を残したものだわ」
前皇帝の遺言。
それは"より大きな功績を残した皇子を皇帝にする"である。
決定権は皇国の貴族院。
その貴族院が第一皇子派と第二皇子派で真っ二つなんだそうだ。
そして、第二皇子派はこの度の侵略戦争の成功をもって第二皇子を皇帝に就けたいらしい。
また、第二皇子は特に好戦的だと聞く。
外交で向かったアルミナ王国使節団に上から物をいうわ無茶な要求をするわで第一皇子に諌められていたそうだ。
その話からも第一皇子が皇帝についた方がどう考えても平和になると思うのだが、第二皇子派は軍部がついているらしく内戦になるぐらいなら外に向かわせようという第一皇子派の思惑もあるのかもしれないと言われている。
いいめいわくである
うちの実家は国境未確定地域に近いのだ。
今実家に帰っているが明らかに"危ない方向"へ向かっている事になる。
でもお母様から絶対に帰ってこいって言われているしなぁ
帰らんわけにはいかない。
それに…
「私も戦場にでてタリムを守りたいわ」
「レイノルド様はすでに防衛にあたっているとのことでしたね」
「コーラシル川砦に詰めているそう。怪我とかしていなければいいけれど」
剣の腕はたしかなお父様だけど見た目がほっそいので弱そうに見えるし、銃の扱いはからっきしなんだよね。
この半年の戦闘で銃の有用性は嫌というほど国内外に示されている。
お母様が助言しているそうだけど…絶対私の故郷を馬鹿な帝国軍人になんて踏ませないからと思いながら、私は馬車に揺られていた。
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