スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ

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2話:射撃部

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学校の授業は午前中で終わる。
午後は自主的に勉強会をしたりお茶会をしたりって感じ。
うちの両親が学校に居た頃は午後も授業があったらしいんだけど、最近改定されたらしい。
自主的な勉強会には先生もおり復習や予習をしているようなのである意味授業と言えるかもしれない。
お茶会だって授業と言えば授業だ。
マナーの先生を呼んでのお茶会では終了後に採点されたりする。
もちろん部活にいそしむ生徒もいる。
私もその一人。
黒のパンツに青色の騎士服を着用して行う射撃部である。
青色はアルミナ王国の国旗の色。
そして私の後ろにはルーナが付いている。
ルーナの役目は観測手。
その時の風速や距離を正確に読み取って私に伝える役割を持つ。
部活で使う銃はバイエルンと呼ばれる最近開発されたマスケットだ。
有効射程は100m、最大射程は300mといわれている。
私はせいぜい100mなら必中って感じかな。
お母様がプレゼントしてくれた私の愛用の銃だ。
「お嬢様、今日は風が強いですね」
「おかげで昼の射撃で弾がそれたわ」
私とルーナが話していると射撃を終えた部長がこちらに歩いてくる。
「よぉタリム嬢。今日も練習か?」
「はいヴァイマル様。射撃の腕を上げるためには、とにかく”練習だ”ですから」
そう、私はお母様から聞いた怪鳥ケワタガモといつか戦うためにこの射撃を必ず毎日練習する。
まぁそんな鳥いないんだけど。
「今日の的はどうする?学校の汎用銃では20mで弾がそれたって聞いたぞ?」
「当たりはしましたよ。真ん中じゃなかったです。じゃあ150mからで」
「おー今日はルーナがいるからな」
部長は私がルーナを連れていることで指定した距離を納得してくれた。
私一人では100mがいいところ。
でもルーナがいれば300mだって必中できる。
「学校の銃歪んでるんですもん、ちゃんとした銃で補正しないと変な癖が付いちゃうわ」
そういって部長が的を移動してくれている間に、私は銃の準備をする。
弾を込める前に錆などが無いか全体を確認する。
火薬を入れる前に火打石が正常に作動することを確認。
「おーい、いいぞー」
部長がこちらに戻ってくる。
150って言ったのに200に設定されている…
「タリム嬢なら当てるだろ?」
「ルーナがいれば当たりますね!ルーナ!!」
そう言って私は構えを取る。
「東南東2、高さ1」
「撃ちます」
ズターン!!
「どんなもんです」
「いやーさすがだなぁ」
発射された鉛玉は見事に的の中心を射抜いていた。
「さすがお嬢様です」
「ルーナの読みのおかげね」
ありがとうとルーナの肩を叩けば茶色い短い髪を揺らして微笑んでくれる。
外では貴族とメイドという関係だけれど、私たちはお母様から鍛えられた戦友だから。

私が6歳の年、お母様であるミシェル•タリムはアルミナ王国1の狙撃手となった。
王国主催で行われた射撃大会で騎士団の腕自慢達を圧倒的に叩きのめす500mの狙撃を成功させた。
それも1人で、この記録は今だに誰も超えられていない。
「私にこんな実力があったなんてねぇ」
とはお母様の言葉。
結果として母に弟子入りする騎士団員がわんさか訪れ、その流れで私とルーナも銃の扱いを教えられた。

「何かあった時、領民を回るのも領主の勤めです。
そこに男女の差はありません」
そうして教えられた私たちだが、ルーナは銃の扱いがとにかく下手くそだった。
短剣などによる防衛術と風や天候を読む力はすごいのだが、何故か弾が逸れる。
逆に私は体を動かすのが苦手だ。
その代わり銃の扱いならお母様の弟子達には負けない。
そこでお母様は、私とルーナをペアの狙撃手チームとして育てた。
ルーナが風を読み、それを計算して私が狙撃する。
それが私たちだ。
それでもお母様の記録はまだ越えられないのだけど。
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