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二十話
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「ありがとうございます、ありがとうございます!!」
そう泣きじゃくってるのは、私の視線で見ても相当に薄汚れてぼろぼろになっている女性で、子の女性こそ、私の結婚式のあれこれの結果、目が飛び出るほどの高額な賠償金を支払わされている女性だった。
私は王様に願い出て、彼女の賠償金を肩代わりする事にしたのだ。
それを支払っても、痛くもかゆくもないほど、金剛紫勲章を持つ人の貴族年金は高額なのである。
金額を聞いて戦いたけれども、私は私達のとばっちりで、酷い目にあっている彼女に手を伸ばしたかった。
色々な人の中で、一番助けたいと思ったのは彼女なのである。
王様曰く
「カトリーヌ嬢たちの尋問が終わり次第、その賠償金を、彼等から返金してもらう事も視野に入れておけるからな」
と言われているので、そこら辺は王様がしっかりと行うのだろう。何しろ家の乗っ取りに匹敵する事をしたバートン様達は、かなりきつい尋問を行われるそうだったから。
「これ位の事しか出来なくてごめんなさい」
「いえ、いえ、いえ……!! お父さんもお母さんも倒れるほど働いても、一生かかっても返しきれないほどの金額だったから、ああ、ありがとうございます!!」
「お詫びとして、一か月くらいは体を休められるように余分に包んであるから、あなたもゆっくり体を休めてお仕事を探して、ね?」
「あなたは神様ですか!?」
そう言って担当の人は一層泣き出し、それを聞いていた彼女の病的な顔色の両親も泣きじゃくり、彼等が何度も頭を下げる中、私は彼女の家を後にしたのだった。
「聞いたか? 町中で噂になっていた大恋愛が、実はとんでもない嘘っぱちだったって!」
「聞いた聞いた、姉の婚約者と共謀して、姉を嵐の海に突き落としたんだろ?」
「美男美女の物語のような恋物語だと思ったのになあ」
町中で聞こえてくるそんな会話。私はそれらを耳にしつつ、どこからでも情報は流れてきてしまうのだろうと判断した。
これでは、たとえ罰がそこまで重い事にならなかったとしても、お母様やカトリーヌは恥ずかしくて外を出歩けないだろう。
そんな事を思いつつ、下級貴族の家が並び立つ通りを歩く。
横切った私の家は、私がいた頃とは違って見えるほど、薄汚れて、みすぼらしくなっていた。
それはそうだろう。私を死んだ事にした後、お金を手に入れる手段が減ったから、使用人達は見切りをつけて逃げ出し、家の事なんて何もできない事になっていたらしいもの。
そこでバートン様のお給金をあてにしたけれど、これまたバートン様も相当な浪費家で、お給金の八割を使い果たしてしまう人だったのだ。
そしてお金が足りなくなると、後輩を脅してお金をせびっていたとか。
彼もまた、黄金のクレタと呼ばれるほど財産家だった過去を持つ我が家を、あてにしていたのだろう。
ふたを開ければ借金がすごくて、それもあって式典のあの場で、私が島で一人暮らすと願い出た事に激昂したに違いない。
……そうなると予想したのだ。きっと邪魔が入る。だから、あの場で願い出れば、式典を台無しにしたとして、王様からの厳しい処分が下る。
そんな事を予測して、私はあの場で王様に願い出たという部分もある。
何も考えずに、あんな事を申し出たわけじゃないのだ。
「……さようなら、私の実家」
私はそれだけを、寂れた家に向って投げかけて歩き出す。その時だ。
「お嬢様!! 待っていたのです、いらっしゃってよかった!!」
私の背後から声がかかり、振り返ると、そこにいたのは元家令の爺やだった。
「爺や……」
「お嬢様、生きてくださって本当に良かった。爺やはお嬢様がそうやすやすと、海に身を投げたりしないと信じておりましたから!!」
爺やはそう言っておいおいと泣いた。爺やの忠告なども、お母様やカトリーヌは聞かなかったから、うっとうしがって、やめさせたのだ。
そしてそのあとすぐに、私に働くように命令をして、私は社交界に出る事無く働き続けるという事になったのである。
きっと爺やがいたら、強く反対されるとわかっていたのだろう。
「爺や、ごめんね、私はこの家を継がないし、島で一人ひっそり暮らす事にしてるの」
「そんな事で怒ったり非難したりいたしません!! お願いです、爺やを連れて行ってください」
「爺や、それは出来ないわ、本当に何もない島なのよ。家も陛下が作ってくださると言っていたけれど、まともなものなんてそれ位しかない、自給自足の暮らしなのよ」
「爺やはお嬢様をずっと心配しておりました。やめさせられた後も必死にお嬢様の幸せを願い続けていたのです。ドリス様の亡き今、爺やがお仕えするのはお嬢様一人なのです!」
「そんな事を言われても、だめよ。あの人はきっと爺やの事も嫌がるわ」
「……あの人ですか?」
爺やが怪訝な顔になる。私は少し空を見て、牛頭の怪物の姿を思い描きながら続ける。
「私の命の恩人が、あの島にいたの。もう死んでしまっているだろうけれど、彼はあまり人が好きじゃなかったから」
きっと爺やの事も嫌がっただろう。鼻を鳴らして文句を言ったに違いない。
あの島は彼の島だ。彼の嫌がる事をして暮らすわけにはいかない。
「お嬢様の命の恩人ですか、そんな方がいらっしゃったとは……」
爺やはそう言って、私を見つめた。
「決意は変わらないのですね?」
「ええ。それに陛下が、必要な物資は定期的に送るとおっしゃってくださったの。だから何の心配もいらないわ。海賊に襲われないように、見回りも強化するともお話してくださった事もあるし」
「……そうでしたか。お嬢様、一つだけ最後にお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか」
「何を?」
「それでお嬢さまは幸せになってくださるのですね?」
「幸せかはわからないけれど、自分の選択肢に満足して生きる事が出来るわ」
私がそうはっきりと言うと、爺やは頷いた。
「では、海の向こうから、爺やはお嬢様の幸せを願い続けましょう。お元気で」
「ええ。あなたも元気でね」
私はそう言って、爺やと別れて、また歩き続ける。その時だった。
「大変な目にあってしまったみたいね、シャトレーヌ」
私はしゃれたカフェテラスに座っている、キュルーケさんを見つけて、呆気にとられていたら、彼女が手招いてきたのだ。
そして手招いてきてから言った言葉がこれである。
「……はい。ごめんなさい、家、丸焼きになってしまって」
「ああ、そんな事? 大丈夫よ。家が焼けるのは見た目だけだから」
「……え?」
「魔女っていうのはね、過去に魔女狩りなんてものもあったから、火あぶりの対処法に慣れているの。魔女の家は、焼けたように見せて住人を隠し、安全になったら復元するようにできているの。初歩の初歩の魔法でね」
「……魔女って本当にとてつもない力を持っているんですね……」
「魔女だから」
「……あと、それと……」
「知っているわ、あの子がめった刺しになった事もね。あなたのせいじゃないわ。というか、ありがとうとしか言いようがないわね」
あの子とは、きっと牛頭の怪物の事だろう。他にめった刺しになった知り合いはいない。
「……え?」
「あの子が意識的に人を殺したら、取り返しのつかない事になっていたの。あの子は本物の人喰いミノタウロスになってしまったわ。そうなったらあの島の周囲は、汚れて呪われた」
「……」
「あの子を人殺しにしないでくれてありがとう。本当は私がしなくてはいけなかった事だったけれど……あなたの声だけはあの子に届いてくれてよかった」
「でも彼は」
「大丈夫よ」
「え?」
「あの島とあの子は運命を共有しているから。あの島が終わらない限り、あの子も終わらない。そう言う、海神の恐ろしいまでの力の呪いがかけられている。……でもきっとそれも、あなたが戻れば終わるでしょう。あの子はあなたを信じていたから」
キュルーケさんの言葉はなぞかけにしか思えなかった。
でも、私があの時に、男達が殺されないように、牛頭の怪物を止めた事だけは正しかったと言われて、少しだけ心が軽くなったのだった。
そう泣きじゃくってるのは、私の視線で見ても相当に薄汚れてぼろぼろになっている女性で、子の女性こそ、私の結婚式のあれこれの結果、目が飛び出るほどの高額な賠償金を支払わされている女性だった。
私は王様に願い出て、彼女の賠償金を肩代わりする事にしたのだ。
それを支払っても、痛くもかゆくもないほど、金剛紫勲章を持つ人の貴族年金は高額なのである。
金額を聞いて戦いたけれども、私は私達のとばっちりで、酷い目にあっている彼女に手を伸ばしたかった。
色々な人の中で、一番助けたいと思ったのは彼女なのである。
王様曰く
「カトリーヌ嬢たちの尋問が終わり次第、その賠償金を、彼等から返金してもらう事も視野に入れておけるからな」
と言われているので、そこら辺は王様がしっかりと行うのだろう。何しろ家の乗っ取りに匹敵する事をしたバートン様達は、かなりきつい尋問を行われるそうだったから。
「これ位の事しか出来なくてごめんなさい」
「いえ、いえ、いえ……!! お父さんもお母さんも倒れるほど働いても、一生かかっても返しきれないほどの金額だったから、ああ、ありがとうございます!!」
「お詫びとして、一か月くらいは体を休められるように余分に包んであるから、あなたもゆっくり体を休めてお仕事を探して、ね?」
「あなたは神様ですか!?」
そう言って担当の人は一層泣き出し、それを聞いていた彼女の病的な顔色の両親も泣きじゃくり、彼等が何度も頭を下げる中、私は彼女の家を後にしたのだった。
「聞いたか? 町中で噂になっていた大恋愛が、実はとんでもない嘘っぱちだったって!」
「聞いた聞いた、姉の婚約者と共謀して、姉を嵐の海に突き落としたんだろ?」
「美男美女の物語のような恋物語だと思ったのになあ」
町中で聞こえてくるそんな会話。私はそれらを耳にしつつ、どこからでも情報は流れてきてしまうのだろうと判断した。
これでは、たとえ罰がそこまで重い事にならなかったとしても、お母様やカトリーヌは恥ずかしくて外を出歩けないだろう。
そんな事を思いつつ、下級貴族の家が並び立つ通りを歩く。
横切った私の家は、私がいた頃とは違って見えるほど、薄汚れて、みすぼらしくなっていた。
それはそうだろう。私を死んだ事にした後、お金を手に入れる手段が減ったから、使用人達は見切りをつけて逃げ出し、家の事なんて何もできない事になっていたらしいもの。
そこでバートン様のお給金をあてにしたけれど、これまたバートン様も相当な浪費家で、お給金の八割を使い果たしてしまう人だったのだ。
そしてお金が足りなくなると、後輩を脅してお金をせびっていたとか。
彼もまた、黄金のクレタと呼ばれるほど財産家だった過去を持つ我が家を、あてにしていたのだろう。
ふたを開ければ借金がすごくて、それもあって式典のあの場で、私が島で一人暮らすと願い出た事に激昂したに違いない。
……そうなると予想したのだ。きっと邪魔が入る。だから、あの場で願い出れば、式典を台無しにしたとして、王様からの厳しい処分が下る。
そんな事を予測して、私はあの場で王様に願い出たという部分もある。
何も考えずに、あんな事を申し出たわけじゃないのだ。
「……さようなら、私の実家」
私はそれだけを、寂れた家に向って投げかけて歩き出す。その時だ。
「お嬢様!! 待っていたのです、いらっしゃってよかった!!」
私の背後から声がかかり、振り返ると、そこにいたのは元家令の爺やだった。
「爺や……」
「お嬢様、生きてくださって本当に良かった。爺やはお嬢様がそうやすやすと、海に身を投げたりしないと信じておりましたから!!」
爺やはそう言っておいおいと泣いた。爺やの忠告なども、お母様やカトリーヌは聞かなかったから、うっとうしがって、やめさせたのだ。
そしてそのあとすぐに、私に働くように命令をして、私は社交界に出る事無く働き続けるという事になったのである。
きっと爺やがいたら、強く反対されるとわかっていたのだろう。
「爺や、ごめんね、私はこの家を継がないし、島で一人ひっそり暮らす事にしてるの」
「そんな事で怒ったり非難したりいたしません!! お願いです、爺やを連れて行ってください」
「爺や、それは出来ないわ、本当に何もない島なのよ。家も陛下が作ってくださると言っていたけれど、まともなものなんてそれ位しかない、自給自足の暮らしなのよ」
「爺やはお嬢様をずっと心配しておりました。やめさせられた後も必死にお嬢様の幸せを願い続けていたのです。ドリス様の亡き今、爺やがお仕えするのはお嬢様一人なのです!」
「そんな事を言われても、だめよ。あの人はきっと爺やの事も嫌がるわ」
「……あの人ですか?」
爺やが怪訝な顔になる。私は少し空を見て、牛頭の怪物の姿を思い描きながら続ける。
「私の命の恩人が、あの島にいたの。もう死んでしまっているだろうけれど、彼はあまり人が好きじゃなかったから」
きっと爺やの事も嫌がっただろう。鼻を鳴らして文句を言ったに違いない。
あの島は彼の島だ。彼の嫌がる事をして暮らすわけにはいかない。
「お嬢様の命の恩人ですか、そんな方がいらっしゃったとは……」
爺やはそう言って、私を見つめた。
「決意は変わらないのですね?」
「ええ。それに陛下が、必要な物資は定期的に送るとおっしゃってくださったの。だから何の心配もいらないわ。海賊に襲われないように、見回りも強化するともお話してくださった事もあるし」
「……そうでしたか。お嬢様、一つだけ最後にお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか」
「何を?」
「それでお嬢さまは幸せになってくださるのですね?」
「幸せかはわからないけれど、自分の選択肢に満足して生きる事が出来るわ」
私がそうはっきりと言うと、爺やは頷いた。
「では、海の向こうから、爺やはお嬢様の幸せを願い続けましょう。お元気で」
「ええ。あなたも元気でね」
私はそう言って、爺やと別れて、また歩き続ける。その時だった。
「大変な目にあってしまったみたいね、シャトレーヌ」
私はしゃれたカフェテラスに座っている、キュルーケさんを見つけて、呆気にとられていたら、彼女が手招いてきたのだ。
そして手招いてきてから言った言葉がこれである。
「……はい。ごめんなさい、家、丸焼きになってしまって」
「ああ、そんな事? 大丈夫よ。家が焼けるのは見た目だけだから」
「……え?」
「魔女っていうのはね、過去に魔女狩りなんてものもあったから、火あぶりの対処法に慣れているの。魔女の家は、焼けたように見せて住人を隠し、安全になったら復元するようにできているの。初歩の初歩の魔法でね」
「……魔女って本当にとてつもない力を持っているんですね……」
「魔女だから」
「……あと、それと……」
「知っているわ、あの子がめった刺しになった事もね。あなたのせいじゃないわ。というか、ありがとうとしか言いようがないわね」
あの子とは、きっと牛頭の怪物の事だろう。他にめった刺しになった知り合いはいない。
「……え?」
「あの子が意識的に人を殺したら、取り返しのつかない事になっていたの。あの子は本物の人喰いミノタウロスになってしまったわ。そうなったらあの島の周囲は、汚れて呪われた」
「……」
「あの子を人殺しにしないでくれてありがとう。本当は私がしなくてはいけなかった事だったけれど……あなたの声だけはあの子に届いてくれてよかった」
「でも彼は」
「大丈夫よ」
「え?」
「あの島とあの子は運命を共有しているから。あの島が終わらない限り、あの子も終わらない。そう言う、海神の恐ろしいまでの力の呪いがかけられている。……でもきっとそれも、あなたが戻れば終わるでしょう。あの子はあなたを信じていたから」
キュルーケさんの言葉はなぞかけにしか思えなかった。
でも、私があの時に、男達が殺されないように、牛頭の怪物を止めた事だけは正しかったと言われて、少しだけ心が軽くなったのだった。
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