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スナゴと道中

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しかしまあ、都の狗族は体力がない物だ、スナゴはある意味感心した。
ここまで体力がないとなると、彼女以上にひ弱かもしれない。

「いやスナゴは結構体力があるぞ」

ぱきん、と小枝を折って火にくべるトリトン。獣化した姿の大きさと、のっぺらぼうの姿の差が歴然としているために、周囲の役人たちは怪物扱いで近寄らない。
その近くで魚を焼いているアシュレイは気にしないし、スナゴはこれがトリトンだと思っているためにちっとも、変じゃないのだが。
獣化の法則とやらは、都では結構重要な法則らしい。

「ねえさっきからあっちで、獣化の法則に合わないってこそこそ言っているのは何?」

「肉体の成長具合に合わせて、着替えた時の大きさが決まるっていう法則だ」

よく分からないスナゴや、知っているのか微妙なトリトンに対する説明は、そんな物だった。

「しかしあいつら、肉にこだわるよな、とれないくせに」

兎の肉に噛みつくトリトンが、不思議そうに言う。これはトリトンが簡単にとってきた獲物であり、スナゴとアシュレイと分け合うために持ってきたのだ。
本人は自分だけで食べてもよかったらしいが、やっぱり村の仲間と分け合うのが村のやり方なのだ。
そして、村人に偉そうな事を言い、危害を加えようとし、謝罪の一つもなかった都の役人たちに対しての対応は塩のようにしょっぱい対応である。
本人はそれに何の間違いがあるのだ、と断言するわけだが。
干し肉をかじっている集団は、非常にうらやましそうな顔で三人を見ている。

「大体野営の事なんて何も考えてないのに、よくまあ山に入れたもんだぜ」

「隣の村から一日がかりで山を登ってきたんだものね」

「おれでも多少の野営の事は準備したんだがな。あと着替えれば大抵の事はしのげるから、それに頼っていたわけだが」

「それが出来ないから、あいつら風邪ひいてんだろうよ、スナゴ、変な風邪がうつるといけないから近寄るんじゃねえぞ」

「異世界族にこっちの風邪がうつるのかな」

「しらねえけど、お前村で一番ひ弱なんだからな」

「はあい」

トリトンのいう事を否定はできないスナゴであった。何しろトリトンは一番頼もしい先輩なのだから。彼女はふうふうと焼けた肉をかじり、空を見た。

「明日は晴れるかな」

「スナゴが珍しく天気を当てた、明日は晴れるぜ」

「なら都の傾斜から見える海が一望できるな、海が見える港はそれは面白いんだ」

アシュレイは食べ終わった骨を噛みながら言う。髄まで食べたいようだった。

「行儀悪い、口の中に物を入れながら喋るな」

「そのあたり、トリトン先輩のお母さん、とってもうるさかったんだよ」

「都の階級の低い皇子よりもはるかに、きちんとしている礼儀作法を教える御仁だな、やっぱりあの女性は」

都を目指す道中、四日目の事だった。
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