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スナゴと終わらない一日
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「だってトリトン先輩だって、行くんだろって感じだったのに。どうしてふてくされてるの?」
顔を覗き込んだスナゴに、トリトンが顔をそらす。
あ、言いたくない事があるんだ。
五年の経験でそれを感じ取った彼女は、追及をしなかった。
しても意味がないのだ。
こう言う風に、トリトンが黙っているときは彼のプライドがかかわっている。
そして言いたくなるまで蓋をされるのが、こういった行動の典型的な流れだった。
言いたくないなら仕方がない。
スナゴはしばし顔を覗き込んだままだったが、頷いた。
「トリトン先輩が言いたくなったら教えてくれる?」
この子供扱いは、彼にとってやや癪に障るものがあったらしい。
何しろトリトンは、狩りに参加していない子供の中で一番年上で、年上の自覚があるのだ。
そしてもうじき成人で、狩りに参加するのだから、子ども扱いなんてされたくないのである。
スナゴもわかってはいるものの、なんとなく彼らが重んじる狩りという物の、重要性を掴めないで五年である。
それは日本で、成人式が軽い物だからだろう。
成人式を過ぎて、お酒が飲めてタバコが吸えるくらい、としか認識していなかったからだ。
そりゃあ法律上色々な制限が外れたり、逆に制限がかかったりするが。
まだ子供のうちに、こちら側に飛ばされてきたスナゴにとって、その感覚はぬぐい切れない。
「見送ってから言われたんだよ」
ぼそりとふてくされた声で言い始めるトリトン。
いう気になったとは珍しい。
いう事を聞く予定で、スナゴは相手を見つめる。
顔をそらして、らしくなくぼそぼそと言い始めたトリトン。
「歌垣に見送ってから、母ちゃんとかに言われたんだよ。スナゴが嫁に行ったら寂しくなるって。……スナゴがそうなるって考えた事、一回もなかったんだ。スナゴはずっとここに暮らすって思ってた。なんだよその、珍妙な顔」
「いや……それで不機嫌だったの? トリトン先輩、私の事大好きすぎるでしょう」
彼女の素直な感想を聞き、がっと牙を見せて獣の表情で、トリトンが不機嫌を見せた。
「悪いかよ! こちとらずっとそうだったんだからな」
「悪くない、うん、悪くない気分。そっかトリトン先輩、大丈夫だよ、私もトリトン先輩がこの村で一番好きだから」
これまた彼女の素直過ぎる言葉に、トリトンの顔が間抜けな物になる。
そして近くで話を聞いていたサンドラが、言い始めた。
「ひどいスナゴ、女同士の友情はどこに行っちゃったのかしら!」
「だってトリトン先輩、一番頼りになる時あるし。ちびちゃんたちの面倒見てる時とか、ちびちゃんたちが大爆走している時とか。私追いかけられないもの」
真面目に言ったスナゴを見て、サンドラが爆笑した。何故かほかのメンツも笑いだし、トリトンもやや居心地が悪そうに唇を吊り上げた。
「スナゴはそうだった。忘れてた俺がばかだな」
「先輩、それ褒めてませんね」
しかしそんな会話も、サンドラの収穫を聞きたがった村長達が来た事で終わり、彼女たちもまた村の暮らしに戻って行った。
「なあスナゴ、また歌垣に行く気はあるのか」
「ないよ、友達出来ないし、匂いがないって言われるのは地味に悲しいし、気持ち悪いって言われるのは一回で十分」
「……じゃあ」
トリトンが小さな声で言う。
「スナゴが歌垣に行かないなら、おれは歌垣なんかに、いかなくていい」
会話の流れが読めなかったものの、たぶん言いたい事を言ったトリトン先輩はすっきりしたのだろう。
そんな表情で、子供たちを連れて獣化の練習に戻って行った。
子供たちも、また訓練だと大騒ぎしながらその後を追っていく。
スナゴはさてと腕まくりをし、周りに聞いた。
「この辺で栗が熟しているのはどのあたりでしょうね、木を揺すって拾ってきますよ」
「さすがスナゴ。トリトンたちが一段落したら、皆で栗拾いをしに行っておいで」
「じゃあ、籠とか出してきますね!」
栗は米が無くなる時期に、命をつなぐものの一つだ。
木の実の中でも大きなため、見つけるのがたやすくて、身が大きい分食べるところが大きくって良い。
彼女は倉庫の閂を開け、子供たちが栗拾いに使う籠や笊を引っ張り出し始めた。
のどかな村の一日は、こうして何事もなく過ぎるはずだったのだ。
「スナゴ! くそ、くそ!」
「なあさっさと行こうぜ? 早くしないと市場に行けない」
「離しやがれ! 咬み殺すぞ!」
「トリトン先輩、やだ、やめて!」
子供たちと栗拾いをして、歩き回っていた時だ。
スナゴは少し、子供たちから離れていた。
というのも、彼女の方が手慣れている分、栗を拾う範囲が広かったからだ。
「ちょっとあっち見て来るね。トリトン先輩、子供たち頼みましたよ」
「おう任せろ、ちびども、おれが見えなくなる場所に行ったら次はないぞ!」
「はーい!」
そんな子供たちと、トリトン先輩のお約束を聞きつつ、彼女は栗を拾うため、少し沢の方に行った。
やっぱりこのあたりに溜まるんだよな、と栗を拾っていれば、なんだか足元に影が落ち。
顔をあげれば見知らない男たちがいて、彼女は腕を掴まれていたわけだ。
「匂いがしないな、まちがいない」
「異世界族って本当に、高値で取引されるんだろう? これで俺たちの村の女を売りに出さなくっていいわけだ」
「聞けば異世界族は、どんな狗族や猫族、果ては鳥族長虫族、あらゆる奴らの子供を産めるそうだ。跡取りが欲しい奴らはよだれを垂らしてほしがるそうだ」
「異世界族は、病気にもかかりにくいし、お産も俺たちに比べて軽いからな」
とても嫌な単語が並んでいて、スナゴは身をよじって暴れた。
「離して、ねえ離して、いや、いや!」
「離さないしあんたの言う事は聞かないさ。俺たちも必至だからな」
「これ以上村の女をとられたら、村が亡びるからな」
何か深い事情のある村の住人らしい。しかしだから売られる事に同意できるわけがない。
散々暴れたスナゴに、やや手を焼いたらしい。
がつんとスナゴの頭に衝撃が加わり、殴られたのだとわかる。
しかし構わず暴れれば、今度は頬をぶたれた。
口の中が切れるほどの拳だったので、ぶたれたというよりも殴られたのだろう。
「助けて、助けて! トリトン先輩!」
本当に大変な目に合う、と心底怖くなったスナゴは、トリトンが遠吠えを使って村の人を集めてくれないかと叫んだ。
だが彼女の思ったように進まず、藪をかき分けて息を切らし、現れたのはトリトン一人。
目を見開いた彼は、次に信じられないほど目を吊り上げて怒鳴る。
「うちのに何手を出してんだ! 離せ!」
「成人前の子狼が何を言うんだ。俺たち成人狼に勝てるわけもない」
「だがこれ以上騒がれたら不味いぞ」
「俺が黙らせる」
スナゴを取り返そうと一気に距離を詰めたトリトンを、思い切り引き倒す男。体格差は歴然としていた。
彼はそのままトリトンを押しつぶしかねないほど、体重をかける。
「トリトン先輩! 誰か、誰か!」
スナゴは思い切り叫んだものの、村の人たちはこの方角に来ていないらしい。
そして先ほどに戻るのだ。
咬み殺す、と脅された男はせせら笑った。出来っこないという顔をしている。
「体格も違えば種も違うのに何を言うんだか。俺を噛みころ」
「ヴァアアアアアアアア!」
せせら笑いながらの言葉は途中で途切れた。
トリトンが、とても喉から発する音ではない物を上げたからだ。
その音は、一番近かった男をひるませ、そして。
大口をあけたトリトンの歯が、牙に変貌したのが分かったと思えば思い切り噛みつかれていた。
変貌は一瞬で、トリトンの姿は人間の時とは想像もつかないほど屈強な体格の狼だ。
「なんだよこいつ、獣化の法則と合わない!?」
喚いたのは、血まみれの仲間がけいれんしている事で我に返った男だ。
しかし。
トリトンはその男を足で踏みつけ、言う。
「二度目はねえって言わせてもらうぜ、うちのスナゴを離せ。本当に全員、喰い殺すぞ」
「おい、このあたりは森狼族だろう!? なんでだなんでだくそっ!」
男たちが獣化して逃げていく。解放されたスナゴがほっとして膝をつくと、トリトンが近寄ってきた。
「……」
何か言いかける物の、血まみれた顔で言うのはよくないと思ったのか。
黙るトリトンに、スナゴは言った。
「ありがとうございます、助かった」
「スナゴはおれの目の届く場所にいなくちゃだめだな」
おちおち栗拾いもさせられないとは思わなかった、とぼやいた彼は少し、後悔しているようだった。
「……村戻るぞ、ちびたちは先に帰らせたんだ」
「……ごめんほっとしたら立てなくて」
「おれの背中に乗ればいい」
スナゴは言われて、何とかトリトン先輩の背中に乗った。
そして気付く。
「トリトン先輩、おでこと背中に白い星があるんですね」
「珍しいだろ。森狼じゃ滅多にいない毛並みだ。……たぶんスナゴの事は、歌垣で広まったんだろうな」
「理由は?」
「そこしかスナゴが外部とかかわってないから」
村長に言わねえとな、と言ったトリトンはやっぱりどう見ても、頼もしかった。
しかし村に戻ると、そんな事も言ってられなくなったのだ。
戻った村はやけに騒がしくて。
怪訝に思った二人に、トリトンの母親が駆け寄ってきた。
「大変だよ、スナゴに求婚者だ!」
「は?」
「んな物好きが!?」
波乱万丈な一日は、まだ終わらないらしかった。
顔を覗き込んだスナゴに、トリトンが顔をそらす。
あ、言いたくない事があるんだ。
五年の経験でそれを感じ取った彼女は、追及をしなかった。
しても意味がないのだ。
こう言う風に、トリトンが黙っているときは彼のプライドがかかわっている。
そして言いたくなるまで蓋をされるのが、こういった行動の典型的な流れだった。
言いたくないなら仕方がない。
スナゴはしばし顔を覗き込んだままだったが、頷いた。
「トリトン先輩が言いたくなったら教えてくれる?」
この子供扱いは、彼にとってやや癪に障るものがあったらしい。
何しろトリトンは、狩りに参加していない子供の中で一番年上で、年上の自覚があるのだ。
そしてもうじき成人で、狩りに参加するのだから、子ども扱いなんてされたくないのである。
スナゴもわかってはいるものの、なんとなく彼らが重んじる狩りという物の、重要性を掴めないで五年である。
それは日本で、成人式が軽い物だからだろう。
成人式を過ぎて、お酒が飲めてタバコが吸えるくらい、としか認識していなかったからだ。
そりゃあ法律上色々な制限が外れたり、逆に制限がかかったりするが。
まだ子供のうちに、こちら側に飛ばされてきたスナゴにとって、その感覚はぬぐい切れない。
「見送ってから言われたんだよ」
ぼそりとふてくされた声で言い始めるトリトン。
いう気になったとは珍しい。
いう事を聞く予定で、スナゴは相手を見つめる。
顔をそらして、らしくなくぼそぼそと言い始めたトリトン。
「歌垣に見送ってから、母ちゃんとかに言われたんだよ。スナゴが嫁に行ったら寂しくなるって。……スナゴがそうなるって考えた事、一回もなかったんだ。スナゴはずっとここに暮らすって思ってた。なんだよその、珍妙な顔」
「いや……それで不機嫌だったの? トリトン先輩、私の事大好きすぎるでしょう」
彼女の素直な感想を聞き、がっと牙を見せて獣の表情で、トリトンが不機嫌を見せた。
「悪いかよ! こちとらずっとそうだったんだからな」
「悪くない、うん、悪くない気分。そっかトリトン先輩、大丈夫だよ、私もトリトン先輩がこの村で一番好きだから」
これまた彼女の素直過ぎる言葉に、トリトンの顔が間抜けな物になる。
そして近くで話を聞いていたサンドラが、言い始めた。
「ひどいスナゴ、女同士の友情はどこに行っちゃったのかしら!」
「だってトリトン先輩、一番頼りになる時あるし。ちびちゃんたちの面倒見てる時とか、ちびちゃんたちが大爆走している時とか。私追いかけられないもの」
真面目に言ったスナゴを見て、サンドラが爆笑した。何故かほかのメンツも笑いだし、トリトンもやや居心地が悪そうに唇を吊り上げた。
「スナゴはそうだった。忘れてた俺がばかだな」
「先輩、それ褒めてませんね」
しかしそんな会話も、サンドラの収穫を聞きたがった村長達が来た事で終わり、彼女たちもまた村の暮らしに戻って行った。
「なあスナゴ、また歌垣に行く気はあるのか」
「ないよ、友達出来ないし、匂いがないって言われるのは地味に悲しいし、気持ち悪いって言われるのは一回で十分」
「……じゃあ」
トリトンが小さな声で言う。
「スナゴが歌垣に行かないなら、おれは歌垣なんかに、いかなくていい」
会話の流れが読めなかったものの、たぶん言いたい事を言ったトリトン先輩はすっきりしたのだろう。
そんな表情で、子供たちを連れて獣化の練習に戻って行った。
子供たちも、また訓練だと大騒ぎしながらその後を追っていく。
スナゴはさてと腕まくりをし、周りに聞いた。
「この辺で栗が熟しているのはどのあたりでしょうね、木を揺すって拾ってきますよ」
「さすがスナゴ。トリトンたちが一段落したら、皆で栗拾いをしに行っておいで」
「じゃあ、籠とか出してきますね!」
栗は米が無くなる時期に、命をつなぐものの一つだ。
木の実の中でも大きなため、見つけるのがたやすくて、身が大きい分食べるところが大きくって良い。
彼女は倉庫の閂を開け、子供たちが栗拾いに使う籠や笊を引っ張り出し始めた。
のどかな村の一日は、こうして何事もなく過ぎるはずだったのだ。
「スナゴ! くそ、くそ!」
「なあさっさと行こうぜ? 早くしないと市場に行けない」
「離しやがれ! 咬み殺すぞ!」
「トリトン先輩、やだ、やめて!」
子供たちと栗拾いをして、歩き回っていた時だ。
スナゴは少し、子供たちから離れていた。
というのも、彼女の方が手慣れている分、栗を拾う範囲が広かったからだ。
「ちょっとあっち見て来るね。トリトン先輩、子供たち頼みましたよ」
「おう任せろ、ちびども、おれが見えなくなる場所に行ったら次はないぞ!」
「はーい!」
そんな子供たちと、トリトン先輩のお約束を聞きつつ、彼女は栗を拾うため、少し沢の方に行った。
やっぱりこのあたりに溜まるんだよな、と栗を拾っていれば、なんだか足元に影が落ち。
顔をあげれば見知らない男たちがいて、彼女は腕を掴まれていたわけだ。
「匂いがしないな、まちがいない」
「異世界族って本当に、高値で取引されるんだろう? これで俺たちの村の女を売りに出さなくっていいわけだ」
「聞けば異世界族は、どんな狗族や猫族、果ては鳥族長虫族、あらゆる奴らの子供を産めるそうだ。跡取りが欲しい奴らはよだれを垂らしてほしがるそうだ」
「異世界族は、病気にもかかりにくいし、お産も俺たちに比べて軽いからな」
とても嫌な単語が並んでいて、スナゴは身をよじって暴れた。
「離して、ねえ離して、いや、いや!」
「離さないしあんたの言う事は聞かないさ。俺たちも必至だからな」
「これ以上村の女をとられたら、村が亡びるからな」
何か深い事情のある村の住人らしい。しかしだから売られる事に同意できるわけがない。
散々暴れたスナゴに、やや手を焼いたらしい。
がつんとスナゴの頭に衝撃が加わり、殴られたのだとわかる。
しかし構わず暴れれば、今度は頬をぶたれた。
口の中が切れるほどの拳だったので、ぶたれたというよりも殴られたのだろう。
「助けて、助けて! トリトン先輩!」
本当に大変な目に合う、と心底怖くなったスナゴは、トリトンが遠吠えを使って村の人を集めてくれないかと叫んだ。
だが彼女の思ったように進まず、藪をかき分けて息を切らし、現れたのはトリトン一人。
目を見開いた彼は、次に信じられないほど目を吊り上げて怒鳴る。
「うちのに何手を出してんだ! 離せ!」
「成人前の子狼が何を言うんだ。俺たち成人狼に勝てるわけもない」
「だがこれ以上騒がれたら不味いぞ」
「俺が黙らせる」
スナゴを取り返そうと一気に距離を詰めたトリトンを、思い切り引き倒す男。体格差は歴然としていた。
彼はそのままトリトンを押しつぶしかねないほど、体重をかける。
「トリトン先輩! 誰か、誰か!」
スナゴは思い切り叫んだものの、村の人たちはこの方角に来ていないらしい。
そして先ほどに戻るのだ。
咬み殺す、と脅された男はせせら笑った。出来っこないという顔をしている。
「体格も違えば種も違うのに何を言うんだか。俺を噛みころ」
「ヴァアアアアアアアア!」
せせら笑いながらの言葉は途中で途切れた。
トリトンが、とても喉から発する音ではない物を上げたからだ。
その音は、一番近かった男をひるませ、そして。
大口をあけたトリトンの歯が、牙に変貌したのが分かったと思えば思い切り噛みつかれていた。
変貌は一瞬で、トリトンの姿は人間の時とは想像もつかないほど屈強な体格の狼だ。
「なんだよこいつ、獣化の法則と合わない!?」
喚いたのは、血まみれの仲間がけいれんしている事で我に返った男だ。
しかし。
トリトンはその男を足で踏みつけ、言う。
「二度目はねえって言わせてもらうぜ、うちのスナゴを離せ。本当に全員、喰い殺すぞ」
「おい、このあたりは森狼族だろう!? なんでだなんでだくそっ!」
男たちが獣化して逃げていく。解放されたスナゴがほっとして膝をつくと、トリトンが近寄ってきた。
「……」
何か言いかける物の、血まみれた顔で言うのはよくないと思ったのか。
黙るトリトンに、スナゴは言った。
「ありがとうございます、助かった」
「スナゴはおれの目の届く場所にいなくちゃだめだな」
おちおち栗拾いもさせられないとは思わなかった、とぼやいた彼は少し、後悔しているようだった。
「……村戻るぞ、ちびたちは先に帰らせたんだ」
「……ごめんほっとしたら立てなくて」
「おれの背中に乗ればいい」
スナゴは言われて、何とかトリトン先輩の背中に乗った。
そして気付く。
「トリトン先輩、おでこと背中に白い星があるんですね」
「珍しいだろ。森狼じゃ滅多にいない毛並みだ。……たぶんスナゴの事は、歌垣で広まったんだろうな」
「理由は?」
「そこしかスナゴが外部とかかわってないから」
村長に言わねえとな、と言ったトリトンはやっぱりどう見ても、頼もしかった。
しかし村に戻ると、そんな事も言ってられなくなったのだ。
戻った村はやけに騒がしくて。
怪訝に思った二人に、トリトンの母親が駆け寄ってきた。
「大変だよ、スナゴに求婚者だ!」
「は?」
「んな物好きが!?」
波乱万丈な一日は、まだ終わらないらしかった。
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