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「今日からおれは本店に行かないんだから、しっかりしてよ、副料理長さん。あれ、料理長に格上げだっけ?」
晴美の茶化す声に、電話の向こうの相手が、泣き出しそうになっていそうだな。
この男を追い出したのがいけないのだ。こうなるのくらい、予想できなくてどうする。
依里は頬杖をついて、電話をする幼馴染のやや伏せられた瞼を見ていた。
電話を終えた晴美が、ふっと視線を携帯に向ける。
「あ、そろそろ二号店に行かなくちゃ」
「今日は仕事なのか」
「今日も仕事だよ、土日は稼ぎ時だからね!」
「道に迷ったりしない?」
「やだなあ皆して、おれが道に迷うみたいに言うんだから。何のためにスマホに地図入れてあると思ってるの。大体どこだって、日本だったら迷わないよ」
言いながら彼が立ち上がる。
立ち上がり、依里の皿まで一緒に、さりげなくシンクに入れた男は、そのまままた流れるような作業で食器を洗い始めた。
「私やるよ」
「だめだめ、作ったら後片付けまで終わらせなくちゃ」
「時間間に合わなくなるだろ、ほら、交代」
依里が少し強く言うと、晴美はそれじゃあ、といってスポンジを手渡してきた。
そしてさっと手の泡を流し、素早く身支度を整え始める。
「それじゃあ、行ってきます、ヨリちゃん」
「無事に帰って来いよ」
「うん!」
晴美の茶化す声に、電話の向こうの相手が、泣き出しそうになっていそうだな。
この男を追い出したのがいけないのだ。こうなるのくらい、予想できなくてどうする。
依里は頬杖をついて、電話をする幼馴染のやや伏せられた瞼を見ていた。
電話を終えた晴美が、ふっと視線を携帯に向ける。
「あ、そろそろ二号店に行かなくちゃ」
「今日は仕事なのか」
「今日も仕事だよ、土日は稼ぎ時だからね!」
「道に迷ったりしない?」
「やだなあ皆して、おれが道に迷うみたいに言うんだから。何のためにスマホに地図入れてあると思ってるの。大体どこだって、日本だったら迷わないよ」
言いながら彼が立ち上がる。
立ち上がり、依里の皿まで一緒に、さりげなくシンクに入れた男は、そのまままた流れるような作業で食器を洗い始めた。
「私やるよ」
「だめだめ、作ったら後片付けまで終わらせなくちゃ」
「時間間に合わなくなるだろ、ほら、交代」
依里が少し強く言うと、晴美はそれじゃあ、といってスポンジを手渡してきた。
そしてさっと手の泡を流し、素早く身支度を整え始める。
「それじゃあ、行ってきます、ヨリちゃん」
「無事に帰って来いよ」
「うん!」
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