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ドローンレース大会
第30話 予選会
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九月上旬、ドローンレースの予選会は、埼玉にあるサバゲーフィールドだった。
ビルのワンフロアにあるそのサバゲーフィールドは、千葉の印西市にあるプレハブ施設に比べると、かなりしっかりしたつくりで、テーマパークみたいだった。
わたしは、ステージに使われるサバゲーフィールドを車椅子で見て回る。
そして今更だけど、自分がかなり「特殊」だってことに気づいた。まず年齢。中学生は、わたしだけ。あと、スポンサーの緑色のユニフォームを着た小学生の男の子。
それ以外はみんなわたしより年上だった。つぎに性別。全部で十六人参加するそのレースに、女性はわたしと高専の生徒ひとりだけだった。最初は意外かな? って思ったけど、よくよく考えたら、うちのドローン部も女性はわたしひとりだった。最後に、これは当然かもしれないけど、車椅子に乗っているのはわたしだけ。
だからとにかく目立った。だからわたしは色んな人からジロジロ見られた。
でも〝特殊〟なのは慣れている。そもそも、中学生の棒高跳び選手はめずらしい。前の学校でも選手はわたしひとりだった。とっても〝特殊〟だった。
それに比べれば、今は全然〝特殊〟じゃない。わたしより年下の小学生だっているし、女の子だっている。そしてなにより、ドローン部は部員が三人もいる。棒高跳びをやっているときよりも、だんぜん〝普通〟だ。
一番特殊なのは、わたしのプロポの操作スタイルだと思う。車椅子に乗ってプロポをアルミのテーブルに乗って操作するスタイルと、なによりもっとも〝特殊〟なのは、プロポの操作モードだ。〝モード2〟。左スティックの上下でスロットルを操作する。つまり、左手でドローンの高度を操作するのはわたしだけだった。
わたしは、右手で車椅子のコントローラーをあやつって、フィールドをじっくりと確認する。そして、このコースはわたしにとってけっこう不利なステージなのがわかった。
ステージに高低差がほとんどない。
高度調節をしながらの高速移動が持ち味のわたしの得意技をほとんど活かすことができない。
ステージの下見がおわると、予選が始まった。予選は、ステージを二周するタイムアタック。ひとり三回コースを飛んで、一番いいタイムの上位六人が予選を通過する。わたしのタイムは四十五秒三八の九位、でもわたしは予選を通過した。レースを盛り上げた、敢闘賞に選ばれた。
それはわたしが〝特殊〟なことを意味していた。
女の子の車椅子ドローンレーサーが〝特種〟なことを意味していた。
そしてわたしにはスポンサーがついた。小学生の男の子と同じスポンサーだ。
わたしは、全然いいタイムなんて出していない。なのに、スポンサーがついた。
それはわたしがまだ中学生で、女の子で、そして車椅子の「ハンデキャップがある特種な人」だったからだ。
そしてその事実は、その特別扱いは、わたしの負けず嫌いにこれ以上ないくらい火を付けた。
ビルのワンフロアにあるそのサバゲーフィールドは、千葉の印西市にあるプレハブ施設に比べると、かなりしっかりしたつくりで、テーマパークみたいだった。
わたしは、ステージに使われるサバゲーフィールドを車椅子で見て回る。
そして今更だけど、自分がかなり「特殊」だってことに気づいた。まず年齢。中学生は、わたしだけ。あと、スポンサーの緑色のユニフォームを着た小学生の男の子。
それ以外はみんなわたしより年上だった。つぎに性別。全部で十六人参加するそのレースに、女性はわたしと高専の生徒ひとりだけだった。最初は意外かな? って思ったけど、よくよく考えたら、うちのドローン部も女性はわたしひとりだった。最後に、これは当然かもしれないけど、車椅子に乗っているのはわたしだけ。
だからとにかく目立った。だからわたしは色んな人からジロジロ見られた。
でも〝特殊〟なのは慣れている。そもそも、中学生の棒高跳び選手はめずらしい。前の学校でも選手はわたしひとりだった。とっても〝特殊〟だった。
それに比べれば、今は全然〝特殊〟じゃない。わたしより年下の小学生だっているし、女の子だっている。そしてなにより、ドローン部は部員が三人もいる。棒高跳びをやっているときよりも、だんぜん〝普通〟だ。
一番特殊なのは、わたしのプロポの操作スタイルだと思う。車椅子に乗ってプロポをアルミのテーブルに乗って操作するスタイルと、なによりもっとも〝特殊〟なのは、プロポの操作モードだ。〝モード2〟。左スティックの上下でスロットルを操作する。つまり、左手でドローンの高度を操作するのはわたしだけだった。
わたしは、右手で車椅子のコントローラーをあやつって、フィールドをじっくりと確認する。そして、このコースはわたしにとってけっこう不利なステージなのがわかった。
ステージに高低差がほとんどない。
高度調節をしながらの高速移動が持ち味のわたしの得意技をほとんど活かすことができない。
ステージの下見がおわると、予選が始まった。予選は、ステージを二周するタイムアタック。ひとり三回コースを飛んで、一番いいタイムの上位六人が予選を通過する。わたしのタイムは四十五秒三八の九位、でもわたしは予選を通過した。レースを盛り上げた、敢闘賞に選ばれた。
それはわたしが〝特殊〟なことを意味していた。
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そしてわたしにはスポンサーがついた。小学生の男の子と同じスポンサーだ。
わたしは、全然いいタイムなんて出していない。なのに、スポンサーがついた。
それはわたしがまだ中学生で、女の子で、そして車椅子の「ハンデキャップがある特種な人」だったからだ。
そしてその事実は、その特別扱いは、わたしの負けず嫌いにこれ以上ないくらい火を付けた。
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