イカロスのプロペラ

かなたろー

文字の大きさ
上 下
21 / 35
才能の開花

第22話 斑鳩露花という女の子

しおりを挟む
 わたしは、斑鳩いかるが露花ろかという女の子の性格を、あきらめて全部言うことにした。

「えっと、うまく説明できないんだけど、わたしね、昔は、高跳びの選手だったの」
「うん、知ってる」

 遊梨ゆうりがうなずいた。

露花ろか、当時からめっちゃ有名だもん。小学生の時は全国一だし」
「でもね、中一の冬で辞めたの。百六十センチがどうしても飛べなかったから。背が伸びるのがとまっちゃったら、記録も止まっちゃった」

 わたしが言うと、遊梨ゆうりはちょっと気まずそうな顔をした。これから言う言葉は多分、遊梨ゆうりを傷つける。だからわたしは、今まで一回もう言ったことがない。これからもずっと心も奥の奥のずっと向こうの引き出しに、鍵をかけてしまっておくと決めていた。
 
でも、言うことにした。白状することにした。

「わたしは、遊梨ゆうりズルい! って、思っていた。そんなに背が高ければ、百六十センチなんて楽勝じゃん! って、ずっと思っていた。
 だから、わたしは棒高跳びに逃げたの。棒高跳びなら、棒を使えるから、身体のアドバンテージが少ないから……」

 代田だいだくんと、アリアちゃんは、だまって聞いていた。

 そして、「ズルいっ!」って言われた遊梨ゆうりもだまって聞いていた。多分だけど、わたしが何を言いたいのか、わかってくれたんだ。

「スポーツって残酷なんだよ。持って生まれた身体のポテンシャル以上は、絶対に出せない。まあ、努力や才能でカバーできるところはあるけど、身体のサイズだけは絶対に変更できない。だからね、わたしは棒高跳びに逃げたの。わたし、ワガママだから。全国一が大好きなの。『すごいね!』って、チヤホヤされるのが大好きなの」

「知っているよ。露花ろかはチヤホヤされるのが好きって言うか、とにかくすっごい負けず嫌い! 腕相撲だって、ガチでくやしがるもん」

 遊梨ゆうりが笑いながら言った。

「確かに、レースで負けると、本当にくやしがるもんな!」

 代田だいだくんも笑いながら言った。アリアちゃんはウンウンと首をたてに振った。

「でもね、ハンデキャップがあるからって思われるのはすっごいイヤなの。体が不自由だから、代田だいだくんとアリアちゃんよりも、不利だって思われるのはすっごいイヤ!」

 今度は、代田だいだくんがうなずいた。アリアちゃんもうなずいた。真剣な目をしてうなずいた。

「わたしは、この身体を言い訳につかうのは、だいっキライ!
 スッゴイイヤなの。でもね、利用するならOK! ゼンゼンアリ! 
 今わかったの。代田だいだくんが教えてくれて、はっきりわかったの。わたしの身体は、この、親指がほんのちょっとしか動かない左指は、ドローンを操るにはすっごく有利なんだって。
 だからわたしは、この身体を利用するんだ! 遊梨ゆうりが高跳びで背の高さを利用するみたいに、わたしはこの身体を利用して、ドローンをもっと上手に操作したい!
 だれよりもドローンを上手に操作して、だれよりも速く飛んで、みんなから『スゴイね!』ってチヤホヤされたいの!」

 わたしの身もふたもない宣言に、遊梨ゆうりは笑っていた。
 アリアちゃんは。ポカーンとしていた。
 そして代田だいだくんは、

「だったら、日本一を目指そう!」

 って言った。

 え? どういうこと?

 代田だいだくんは、ズボンのポケットからスマホを取り出すと、スイスイと検索をした。そして、

「この大会に、うちのドローン部でエントリーしたいんだ」

 そう言って、スマホをみんなに見せた。

「なにこれ? めっちゃすごい!」

 遊梨ゆうりが驚いた。その大会は、ドローンのことなんて全く知らない遊梨ゆうりでもびっくりするくらいの規模だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

ホントのキモチ!

望月くらげ
児童書・童話
中学二年生の凜の学校には人気者の双子、樹と蒼がいる。 樹は女子に、蒼は男子に大人気。凜も樹に片思いをしていた。 けれど、大人しい凜は樹に挨拶すら自分からはできずにいた。 放課後の教室で一人きりでいる樹と出会った凜は勢いから告白してしまう。 樹からの返事は「俺も好きだった」というものだった。 けれど、凜が樹だと思って告白したのは、蒼だった……! 今さら間違いだったと言えず蒼と付き合うことになるが――。 ホントのキモチを伝えることができないふたり(さんにん?)の ドキドキもだもだ学園ラブストーリー。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?

待鳥園子
児童書・童話
ある日。教室の中で、自分の理想の男の子について語った澪。 けど、その篤実に同じクラスの主役級男子鷹羽日向くんが、自分が希望した理想通りにイメチェンをして来た! ……え? どうして。私の話を聞いていた訳ではなくて、偶然だよね? 何もかも、私の勘違いだよね? 信じられないことに鷹羽くんが私に告白してきたんだけど、私たちはすんなり付き合う……なんてこともなく、なんだか良くわからないことになってきて?! 【第2回きずな児童書大賞】で奨励賞受賞出来ました♡ありがとうございます!

氷鬼司のあやかし退治

桜桃-サクランボ-
児童書・童話
 日々、あやかしに追いかけられてしまう女子中学生、神崎詩織(かんざきしおり)。  氷鬼家の跡取りであり、天才と周りが認めているほどの実力がある男子中学生の氷鬼司(ひょうきつかさ)は、まだ、詩織が小さかった頃、あやかしに追いかけられていた時、顔に狐の面をつけ助けた。  これからは僕が君を守るよと、その時に約束する。  二人は一年くらいで別れることになってしまったが、二人が中学生になり再開。だが、詩織は自身を助けてくれた男の子が司とは知らない。  それでも、司はあやかしに追いかけられ続けている詩織を守る。  そんな時、カラス天狗が現れ、二人は命の危険にさらされてしまった。  狐面を付けた司を見た詩織は、過去の男の子の面影と重なる。  過去の約束は、二人をつなぎ止める素敵な約束。この約束が果たされた時、二人の想いはきっとつながる。  一人ぼっちだった詩織と、他人に興味なく冷たいと言われている司が繰り広げる、和風現代ファンタジーここに開幕!!

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

処理中です...