17 / 35
才能の開花
第18話 一番の親友
しおりを挟む
わたしがリハビリをおえたころ、ぞろぞろとクラスメイトがやってくる。そして、わたしの一番の親友も、陸上部の朝練からもどってきた。
「おはよう、露花!」
「おはよう、遊梨!」
磐井遊梨はこの学校に転校してきて最初にできた友達。というか、転校する前からの友達だ。彼女は陸上、しかも高跳びの選手。つまり、わたしのライバルだった。数少ない中学生の百六十センチジャンパーだ。
遊梨はめちゃくちゃ背が高い。クラスで、いや、学年の女子のなかで一番背が高い。身長は百七十センチをこえている。
「TikToK観た?」
「え? なにそれ知らない!」
遊梨は、わたしとよく似ている。負けず嫌いで、頑固で、わりと思ったことが顔に出る。でも、だからこそ気が楽だった。遊梨はわたしに同情をしない。障害を同情してはくれない。
「リハビリの調子は?」
「うん、先週から負荷をひとつあげたんだけど、左手は、まだキツいな。右は、結構いい感じ」
「ふむ、ではお手並み拝見といきますか」
そう言うと、遊梨は、わたしの机に右腕のひじをつける。それに合わせて、わたしも右手をついて、遊梨と手を組む。腕相撲だ。
「いつでもこい……」
「のこった!」
わたしは、遊梨のスキをついて思いっきり右手に力をこめた。遊梨の手首が、ぐにゃんと曲がる。
「わ! ずっこい」
でも、ダメだった。遊梨は手首に力をこめて少しずつ体制を立て直すと、わたしの腕を、一気に机の上にたたきつけた。
「だめかー。うーん、そろそろ不意打ちのネタがなくなってきたんだよな」
「フッ。まだまだだね。ま、いい線いっていたけど。だいぶ筋力もどったんじゃない?」
遊梨は、わたしと真剣勝負をしてくれる。どんなことも真剣勝負をしてくれる。
わたしは、それが最高に心地よかった。
同情されても、わたしの身体はもう絶対にもとには戻らない。同情されても、足が動くようになるわけではない。でも、わたしがリハビリを努力すれば、腕の筋力はある程度の所までは戻る。
最初は、お箸をにぎるのもやっとだったのに、今では腕相撲ができるくらいまでに回復した。だから、こうやって腕相撲で真剣勝負をしてくれる遊梨は、本当にありがたい。わたしの、「腕相撲で、絶対に遊梨に勝ってやるんだ!」って目標に、本気になって相手をしてくれる。
本当にありがたい。
「左手の方はどう」
「まだまだ。ハンドグリップ十回が限界。二十回できるようになったら、指相撲で戦おう」
「いいね。ハンデはどれくらいがいい? わたしは目をつぶってやる?」
「それより、カウント数を減らしてほしい。一番知りたいのは、筋力の回復だから。どれくらいついたかを、遊梨にチェックしてほしい」
「了解。いつでも相手になるから、リハビリがんばりな」
「うん。親指を洗ってまっていてよ!」
遊梨はずっとライバルだ。そして最高の親友だ。
「おはよう、露花!」
「おはよう、遊梨!」
磐井遊梨はこの学校に転校してきて最初にできた友達。というか、転校する前からの友達だ。彼女は陸上、しかも高跳びの選手。つまり、わたしのライバルだった。数少ない中学生の百六十センチジャンパーだ。
遊梨はめちゃくちゃ背が高い。クラスで、いや、学年の女子のなかで一番背が高い。身長は百七十センチをこえている。
「TikToK観た?」
「え? なにそれ知らない!」
遊梨は、わたしとよく似ている。負けず嫌いで、頑固で、わりと思ったことが顔に出る。でも、だからこそ気が楽だった。遊梨はわたしに同情をしない。障害を同情してはくれない。
「リハビリの調子は?」
「うん、先週から負荷をひとつあげたんだけど、左手は、まだキツいな。右は、結構いい感じ」
「ふむ、ではお手並み拝見といきますか」
そう言うと、遊梨は、わたしの机に右腕のひじをつける。それに合わせて、わたしも右手をついて、遊梨と手を組む。腕相撲だ。
「いつでもこい……」
「のこった!」
わたしは、遊梨のスキをついて思いっきり右手に力をこめた。遊梨の手首が、ぐにゃんと曲がる。
「わ! ずっこい」
でも、ダメだった。遊梨は手首に力をこめて少しずつ体制を立て直すと、わたしの腕を、一気に机の上にたたきつけた。
「だめかー。うーん、そろそろ不意打ちのネタがなくなってきたんだよな」
「フッ。まだまだだね。ま、いい線いっていたけど。だいぶ筋力もどったんじゃない?」
遊梨は、わたしと真剣勝負をしてくれる。どんなことも真剣勝負をしてくれる。
わたしは、それが最高に心地よかった。
同情されても、わたしの身体はもう絶対にもとには戻らない。同情されても、足が動くようになるわけではない。でも、わたしがリハビリを努力すれば、腕の筋力はある程度の所までは戻る。
最初は、お箸をにぎるのもやっとだったのに、今では腕相撲ができるくらいまでに回復した。だから、こうやって腕相撲で真剣勝負をしてくれる遊梨は、本当にありがたい。わたしの、「腕相撲で、絶対に遊梨に勝ってやるんだ!」って目標に、本気になって相手をしてくれる。
本当にありがたい。
「左手の方はどう」
「まだまだ。ハンドグリップ十回が限界。二十回できるようになったら、指相撲で戦おう」
「いいね。ハンデはどれくらいがいい? わたしは目をつぶってやる?」
「それより、カウント数を減らしてほしい。一番知りたいのは、筋力の回復だから。どれくらいついたかを、遊梨にチェックしてほしい」
「了解。いつでも相手になるから、リハビリがんばりな」
「うん。親指を洗ってまっていてよ!」
遊梨はずっとライバルだ。そして最高の親友だ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
私達、怪奇研究部!!
たけまる
キャラ文芸
京都にある緑沢中学校に交換留学生と転校生が同時にやってきた!
怪奇研究部に新たな仲間が参戦!!
だけど何やら不穏な空気……
平安時代に起きた殺人事件、呪い……不老不死の仙薬……って人間の魂なんですか?!
転校生はなぜ交換留学生と同時期に来たのか。主人公美玲の知られざる秘密とは。
個性豊かな怪奇研究部員たちは各々が抱える秘密があって……?!
「お前を救うためなら何度でも転生する」
平安時代の先祖の因縁を今、私たち怪奇研究部員が解き明かす!
これは切ない転生と呪いの物語……
10万文字以内の作品です。日々の応援励みになります
なぜか犬になりました 〜犬でもヒトでも私はあなたに恋をする〜
今宵恋世
児童書・童話
中学1年桃瀬ふれあはクラスメイトの土屋雨音くんに密かに恋をしている。しかし引っ込み思案のふれあはなかなか話し掛けられず、いつも遠くから目で追うだけの日々を送っていた。
そんなある日。ふれあが帰宅すると、愛犬・チャルルが倒れていて大ピンチ。そんな時にたまたま通りかかった雨音くん。雨音くんのお父さんは動物病院を経営しているらしく、助けてくれる。そのままチャルルは雨音くんちで1晩入院することになるのだが、なぜかその日眠りにつくとふれあはチャルルになっていて…?
***
私は突然チャルルになるし……
入れ替わってる間のチャルルは私の身体でめちゃくちゃやるし………
もうっ、誰かこれ何とかしてぇえーーーっ!
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
【全話まとめ】意味が分かると怖い話【解説付き】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で楽しめる短めの意味が分かると怖い話をたくさん作って投稿しているよ。
ヒントや補足的な役割として解説も用意しているけど、自分で想像しながら読むのがおすすめだよ。
中にはホラー寄りのものとクイズ寄りのものがあるから、お好みのお話を探してね。
【1章完】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる