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才能の開花
第14話 ヘンじゃないよね。
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ヘンじゃないよね。
うん、ヘンじゃない。日曜日の朝、わたしは、六時に起きた。
くせっ毛にも念入りにブラシを当てたし、ファッションもちゃんと可愛くまとまっている……と、思う。
Tシャツに薄手のパーカーを羽織ってショート丈のキュロットスカート。そしてそして頑張って黒のニーソックスをはいた。
わたしの足は動かない。
だから、筋肉も少ない。つまりはとてもすらっとしている。要するに美脚だ。わたしはその美脚をショート丈のキュロットスカートとニーソックスでかわいくおめかしをしていた。
そして、念入りにドライヤーをあてた髪には、青いヘアピンを留めている。ちょっとアリアちゃんを意識した。(ピンクはさすがにガラじゃないから、青にしたけど)
でもって、わたしのふとももの上には、紙袋が置いてある。中には、昨日お母さんと一緒に(というかほとんど作ってもらったけど)マカロンを可愛くラッピングして入れてある。ラッピングは自分でやった。
ここだけは絶対に自分でやりたかった。左手の親指でマカロンをつつんだ袋を固定して、右手を使って手芸用のカラフルなゴム紐でつつみをしばる、その上に両面テープで飾りのリボンをつけた。
うん。ヘンじゃない。悪くない。カワイイ。
わたしは時計を見た。今は九時五十分。もう何回見ただろう。わたしは車椅子に座って、リビングにあるインターホンの前で、今日の服と、お土産のマカロンのチェックと、リビングの時計の針を見るのをえんえんと繰り返している。
このマンションに越してきて、もう半年近く。もう、ずいぶんとなれた。段差がないバリアフリーのこの家は、車椅子のわたしでも不自由なく生活できる。
「もう、何回確認すれば気がすむのよ」
お母さんはあきれながら話す。
「だって……」
きんちょうするに決まっている。知らない家、しかも塩顔系イケメンの代田くんの家に行くんだから。
金曜日にデートにさそわれたあの日、わたしと代田くんは、一緒に家に帰った。代田くんも、お母さんの車で家までおくっていった。そして代田くんの家が、わたしの家のマンションからびっくりするほど近所なのを知った。
わたしは、もう一度鏡を確認した。うん。ヘンじゃない。
わたし、結構カワイイ。
代田くんと、学校以外で会うのは初めてだ。私服なんて見せるのは初めてだ。緊張しないわけがない。
ピロリン♪ ピロリン♪ ピロリン♪
来た! インタホンのモニターに、私服の段田くんが映っている。キャップをかぶって、ゆったりとしたトレーナーに、細めのボトムを合わせている。似合っている。カッコいい!
わたしは、ふるえる右手でインタホンのボタンをおした。インタホン越しに、代田くんの声が聞こえてくる。
「代田です。露花さんいらっしゃいますか?」
「わたし。今から下に行くね!」
わたしは、つとめて普通をよそおって返事をすると、メッセンジャーバッグをたすきにかけて、玄関に向かった。
「楽しんでらっしゃい」
お母さんが、笑顔でわたしの背中を押してくれる。陸上の大会があるとき、毎回このことばで背中をおしてくれだ。わたしは、ちょっとだけリラックスできた。お父さんは、結局、起きてこなかった。お母さんに聞いたら、きのうなかなか寝付けなかったらしい。
「いってきます」
わたしは、右手で車椅子のコントローラーをあやつって、マンションのエレベータにむかった。
うん、ヘンじゃない。日曜日の朝、わたしは、六時に起きた。
くせっ毛にも念入りにブラシを当てたし、ファッションもちゃんと可愛くまとまっている……と、思う。
Tシャツに薄手のパーカーを羽織ってショート丈のキュロットスカート。そしてそして頑張って黒のニーソックスをはいた。
わたしの足は動かない。
だから、筋肉も少ない。つまりはとてもすらっとしている。要するに美脚だ。わたしはその美脚をショート丈のキュロットスカートとニーソックスでかわいくおめかしをしていた。
そして、念入りにドライヤーをあてた髪には、青いヘアピンを留めている。ちょっとアリアちゃんを意識した。(ピンクはさすがにガラじゃないから、青にしたけど)
でもって、わたしのふとももの上には、紙袋が置いてある。中には、昨日お母さんと一緒に(というかほとんど作ってもらったけど)マカロンを可愛くラッピングして入れてある。ラッピングは自分でやった。
ここだけは絶対に自分でやりたかった。左手の親指でマカロンをつつんだ袋を固定して、右手を使って手芸用のカラフルなゴム紐でつつみをしばる、その上に両面テープで飾りのリボンをつけた。
うん。ヘンじゃない。悪くない。カワイイ。
わたしは時計を見た。今は九時五十分。もう何回見ただろう。わたしは車椅子に座って、リビングにあるインターホンの前で、今日の服と、お土産のマカロンのチェックと、リビングの時計の針を見るのをえんえんと繰り返している。
このマンションに越してきて、もう半年近く。もう、ずいぶんとなれた。段差がないバリアフリーのこの家は、車椅子のわたしでも不自由なく生活できる。
「もう、何回確認すれば気がすむのよ」
お母さんはあきれながら話す。
「だって……」
きんちょうするに決まっている。知らない家、しかも塩顔系イケメンの代田くんの家に行くんだから。
金曜日にデートにさそわれたあの日、わたしと代田くんは、一緒に家に帰った。代田くんも、お母さんの車で家までおくっていった。そして代田くんの家が、わたしの家のマンションからびっくりするほど近所なのを知った。
わたしは、もう一度鏡を確認した。うん。ヘンじゃない。
わたし、結構カワイイ。
代田くんと、学校以外で会うのは初めてだ。私服なんて見せるのは初めてだ。緊張しないわけがない。
ピロリン♪ ピロリン♪ ピロリン♪
来た! インタホンのモニターに、私服の段田くんが映っている。キャップをかぶって、ゆったりとしたトレーナーに、細めのボトムを合わせている。似合っている。カッコいい!
わたしは、ふるえる右手でインタホンのボタンをおした。インタホン越しに、代田くんの声が聞こえてくる。
「代田です。露花さんいらっしゃいますか?」
「わたし。今から下に行くね!」
わたしは、つとめて普通をよそおって返事をすると、メッセンジャーバッグをたすきにかけて、玄関に向かった。
「楽しんでらっしゃい」
お母さんが、笑顔でわたしの背中を押してくれる。陸上の大会があるとき、毎回このことばで背中をおしてくれだ。わたしは、ちょっとだけリラックスできた。お父さんは、結局、起きてこなかった。お母さんに聞いたら、きのうなかなか寝付けなかったらしい。
「いってきます」
わたしは、右手で車椅子のコントローラーをあやつって、マンションのエレベータにむかった。
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