上 下
46 / 50

第四十六話 未来

しおりを挟む
 やっぱり静かすぎる。夜ってこんなに静かなんだ。しかもめちゃくちゃ暗い。マーシーもどっか行ったきり全然帰ってこないし。よくみんなこんな環境で寝れんなぁ。俺はちょっと起き上がろうとした。
 「いてててててて。」ほぼ床ぐらいのペッタンこの布団で寝ていたせいですっかり背中が凝りきっているようだ。
 その瞬間静かだった夜が一変、けたたましいサイレンの音が鳴り響いた。その瞬間他の寝ていた人たちはまるでパソコンのスリープモードから再起動したように一瞬で起きあがった。
 「なんでこんな時間に・・・」岸本は少し眠たそうだった。その時大きな爆音と共に外が明るくなった。
 部屋の中にいてもその衝撃は凄まじいものだった。建物は小刻みに大きく揺れ、窓ガラスは粉々に割れた。
 「これでもお偉いさんは戦えって言うのか?」俺は皮肉を交えて尋ねた。
 「それは流石に・・・」岸本もほぼ願望のように答えた。
 「とりあえず地下に逃げるぞ。」なんかみんなあたふたしていた。
 「もしかして初めて?」すると岸本もあたふたしながら答えた。
 「基地にいるときに来たことはない。だから多分みんなどうして良いか分かってない。」終わった・・・
 「とりあえず地下に行けば大丈夫だ。」
 「こんな時にお偉いさんは何してんだよ。」俺はそんな悪態をつきながら階段を降りようとした。
 「マーシー。」覚えていなかったわけではない。ただ、その・・・テンパった。
 俺はそのまま外へ向かった。後ろから岸本が俺を呼び止めているのは、うっすら聞こえていた。だが、俺は無視した。マーシーは多分外にいる。見捨てる選択肢はあるわけがなかった。
 外へ一歩出ると外は思った以上に火の海だった。
 「マーシー。どこだ?」俺は大声で叫んだ。空を見ると光る何かが3機ほど空中を迂回していた。これあいつら見えてんのかな?俺はそう思いながら一か八か走って格納庫へと向かってみた。
 しかし、特に何もなく格納庫までたどり着いたが、格納庫にもしマーシーがいたとしたら・・・俺は最悪なことを考えていた。すると何かが俺の手を引いた。
 「おい。何やってんだよ。中に戻らないと・・・」その時上空から何かが落ちてくるのが見えた。
 「伏せろ!」その瞬間さっきまでいた寮が跡形もなく吹っ飛んだ。その勢いで俺と岸本は吹き飛ばされた。軽く意識が飛んだ感じがしたが、どうにか生きてはいたが、体はさっきとは比にならないほど痛かった。
 「岸本!」探す人が増えた。
 「泰斗!お前か?」岸本ではない誰かの声が聞こえた。
 「マーシー?」俺は声のする方へと向かった。そこにはマーシーと横たわった戦闘機の下敷きになっている平越がいた。平越の頭には赤黒い血がベッタリとついており、ほぼ意識が朦朧としているように見えた。
 「泰斗手伝え。」
 「分かった。」俺はマーシーに言われるがまま戦闘機を動かそうと手をかけた。その時下で平越の微かな声が聞こえてきた。
 「おい・・・お前ら・・・忘れたのか・・・こいつには大量の爆薬を積んでるんだぞ・・・おめぇらも逃げねぇと吹っ飛ぶぞ。」しかしマーシーはフルシカトで動かそうとしていた。
 「なぁ・・・未来じゃ・・・治るのかもしれないが・・・俺を・・・ここから出してどうする・・・?」そう言いながら平越は下の方に視線を配った。俺のいる位置からは血しか見えなかったが、マーシーは持っている手を離した。恐らく想像を絶する光景が広がっていたに違いない。
 「コックピットを見ろ・・・」平越がそう言うと俺はコックピットを覗き込んだ。するとボロい布のような小さなバッグがあった。俺はそれを持ち出し中を見ると、明らかにこの時代のものとは思えないどこか見覚えがあるカラーボールみたいなものを見つけた。
 「それはあの男の荷物を調べてたら出てきたんだ。さっき爆発の寸前にあの男が使ってた。お前たちなら使い方がわかるだろ?」俺は分からなかったがマーシーは無言でうなずいていた。
 「それを使ってこんな時代から出ろ・・・」その時後ろから声がした。
 「平越さん・・・?」どうやら岸本も無事だったようだ。
 「行け。」平越は岸本を近付けさせないためのように俺らに言い放った。俺とマーシーはそれを察して、バッグを持つとその場から離れた。
 「ちょっとお前ら、何やってんだよ?平越さんを助けねぇのかよ?」岸本の言葉に応えることなく俺とマーシーは岸本の腕を掴んだ。
 「おい放せよ!」岸本は軍人とは思えないほど力が弱く、俺らでも軽々抑えることができた。何もできない岸本はただ喚くことしかできなかった。すると平越が最後の力を振り絞るような声が聞こえてきた。
 「岸本!お前はこの戦争を生き延びろ!そしてお前は他の仲間の分まで生きろ!」その言葉に岸本は静かになった。
 「岸本、未来は明るいぞ。」微かにその言葉は聞こえたがその先は岸本が再び平越を呼び続けた声で聞こえなかった。
 俺たちは急いで格納庫からでたその瞬間都合が良いように格納庫の中で大きな爆発が起きた。岸本も俺もマーシーも疲れきっていた。上空にはさっきの戦闘機は飛んでいなかった。今日は星が見えないんだな・・・

 それから俺たちは別の基地へ移動になった。そして軍は今回の件の報復を行う決定を下した。もちろん俺たちも出陣命令がくだっている。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

❤️レムールアーナ人の遺産❤️

apusuking
SF
 アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。  神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。  時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。  レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。  宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。  3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

美少女アンドロイドが空から落ちてきたので家族になりました。

きのせ
SF
通学の途中で、空から落ちて来た美少女。彼女は、宇宙人に作られたアンドロイドだった。そんな彼女と一つ屋根の下で暮らすことになったから、さあ大変。様々な事件に巻き込まれていく事に。最悪のアンドロイド・バトルが開幕する

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

わが友ヒトラー

名無ナナシ
歴史・時代
史上最悪の独裁者として名高いアドルフ・ヒトラー そんな彼にも青春を共にする者がいた 一九〇〇年代のドイツ 二人の青春物語 youtube : https://www.youtube.com/channel/UC6CwMDVM6o7OygoFC3RdKng 参考・引用 彡(゜)(゜)「ワイはアドルフ・ヒトラー。将来の大芸術家や」(5ch) アドルフ・ヒトラーの青春(三交社)

関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。

虎柄トラ
SF
あるところに誰もがうらやむ才能を持った科学者がいた。 科学者は天賦の才を得た代償なのか、天涯孤独の身で愛する家族も頼れる友人もいなかった。 愛情に飢えた科学者は存在しないのであれば、創造すればいいじゃないかという発想に至る。 そして試行錯誤の末、科学者はありとあらゆる癖を詰め込んだ最高傑作を完成させた。 科学者は人工生命体にリアムと名付け、それはもうドン引きするぐらい溺愛した。 そして月日は経ち、可憐な少女に成長したリアムは二度目の誕生日を迎えようとしていた。 誕生日プレゼントを手に入れるため科学者は、リアムに留守番をお願いすると家を出て行った。 それからいくつも季節が通り過ぎたが、科学者が家に帰ってくることはなかった。 科学者が帰宅しないのは迷子になっているからだと、推察をしたリアムはある行動を起こした。 「お母さん待っててな、リアムがいま迎えに行くから!」 一度も外に出たことがない関西訛りな箱入り娘による壮大な母親探しの旅がいまはじまる。

能力が基本となった世界0

SF
これは、ある場所に向かう道すがら、とある男が子供の頃から組織に入るまでのことを仲間に話す。物語 能力が基本となった世界では語りきれなかった物語

処理中です...