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第二十四話 カラオケボックス
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俺はこの時代に用事が出来てしまった。
「とりあえず、一旦自分たちの時代に戻って出直さないと・・・」泰斗はそう言いながら、ポケットラジオいじりはじめた。
「ちょっと待て。」俺の咄嗟の言葉に、泰斗は少しむっとした顔をした。今の泰斗に本当のことを言ってしまうと恐らくまた揉める予感しかなかった。しかも、今の泰斗はマジで何をし始めるか分からなかった。
「ちょっとさっきのタイムリープしたときに、変に頭痛がしたからやるならもう少し待って欲しいんだけど。」なんかありがちな嘘をついてみた。すると泰斗の眉間のしわが少し深くなった。
「確かに、なんか俺もさっきから気持ち悪いんだけどそれのせいかなぁ?」いい感じに嘘がはまったようだった。
「何なら、今日はもう遅いしどっか入らない?」
「入るったってどこに?」確かにもう夜中の3時過ぎ、ビジネスホテルとかというわけにもいかなかった。
「カラオケ?」俺がそういうと、泰斗の顔が明らかに変わった。
「行っちゃう?」俺は間違いなく提案した場所を間違えたと確信した。
それからの記憶はとりあえずやつの十八番を永遠と聞くという時間だったことしかんかった。しかも、ずっと同じ曲のバージョンが違うものをお店の閉店時間である朝6時までの3時間近く聞いていた為、嫌でも覚えてしまった。もちろん寝れていない。
寝不足だ・・・・
カラオケボックスから出ると、朝日が容赦なく俺たちに光のやりを降らしていた。俺が半目をつぶりながら歩いている横で泰斗は、とてもすがすがしい表情で歩いていた。
「元気そうだね?」俺は少し引き気味の声で言った。
「最高の気分!」
「誰だよ?」泰斗の究極のどや顔ぶりに俺は返す言葉が無かった。
とりあえず俺たちは元の駐車場まで向かうことにした。すると、突然大きな女性の怒鳴り声が聞こえてきた。
「何今の?」俺がそういうと、泰斗は不思議そうな顔をしていた。
「なんかどこかで聞いたことない?」不思議と俺も全く同じことを考えていた。ちょっと甲高く、少し怒り慣れていない聞き覚えのあるこの怒鳴り声、どこか懐かしい感じがした。
「なぁ、ちょっと・・・」
「ちょっとだけ!ちょっとだけ!」何の念押しか分からないが、お互いその言葉を連呼しながら、同じ場所に自然と足が動いていた。
この道、この景色、全てが懐かしい。あの公園のブランコで良く遊んでた。あの川に流されかけた。あそこのおっさんウザイ。ただ歩いているだけなのに、俺の頭の中は今まで思い出してみなかったことが鎖に繋がっているように、どんどん引き上げられていく感覚だった。
目的地近くになり、俺たちは兵の陰に隠れ、ある場所に視線を向けた。そこには一人の女性と一人の男の子がいた。女性は典型的な怒った表情で男の子を見下ろしていた。俺たちから男の子は、しょぼくれた後ろ姿しか映っていなかった。
その怒っている女性は間違いなく田中先生だ。若い時って意外と綺麗だったんだなぁ。
俺たちはあの擁護施設に来ていた。
「あんた、今何時だと思ってんの?こんな朝っぱらまでどこで何してたの?」時間に関してはお互い様だと思う。ここから一発目の声が聞こえた場所は見えない位置にあるほどの距離だったのに聞こえるってどんな声?
すると男の子は、ヒックヒックした声で一言だけ告げた。
「逃亡。」
俺と泰斗は思わず噴き出した。そういえば、遠い記憶だがなんか脱走して先生たちが必死で探してた事件があった気がした。まぁその気持ちは分からなくもなかった。新しい里親が見つかることはとても良いことだが、当時俺たちはそうは思っていなかった。それくらいあの施設での生活は楽しい時代だった。
「なんでそんなことするの?マーシー?」田中先生からの一言で、俺たちは顔を見合わせた。
「今マーシーって確かに言ったよね?」だが俺には逃亡した記憶はない。それに幼少期は何をするにも俺の横には泰斗がいたはずだ。
「俺が知らないうちに、そんなことしてたんだぁ・・・」泰斗がそうなるのも無理はない。
すると奥からもう一人のおっさんが現れた。
「朝も早いし続きはとりあえず中に入って話したら?」
「誰?」俺と泰斗は全く同じタイミングで、思わず言ってしまった。
「なんか声がする・・・」男の子がそう言いながら俺たちの方を見た。俺たちは慌ててその場から立ち去った。慌てたせいで少ししか見えなかったが間違えなく、あの男の子は幼少時代の俺だった。
「ほら、こんな朝から大騒ぎしてるから・・・・」
「いやぁ、心配からつい大声で・・・・」田中先生とおっさんはどこか仲よさそうに見えた。旦那?いや旦那はいなかったはずだ。子供はいたが旦那は事故で亡くなっているはず。だが、あんなおっさんがいた記憶が俺にはなかった。
とりあえず俺たちは近くの公園へ向かった。というより自然にその公園に立ち寄っていた。
「そっか・・・そういう事だ・・・」泰斗は一人でつぶやいていた。
「どこもかしこも全く一緒だったから全然思いもつかなかったけどここはパラレルワールドの過去なんだよ。」俺はその言葉を聞いて、さっきの田中先生との電話を思い出していた。
この世界には泰斗はいないのか・・・?
「とりあえず、一旦自分たちの時代に戻って出直さないと・・・」泰斗はそう言いながら、ポケットラジオいじりはじめた。
「ちょっと待て。」俺の咄嗟の言葉に、泰斗は少しむっとした顔をした。今の泰斗に本当のことを言ってしまうと恐らくまた揉める予感しかなかった。しかも、今の泰斗はマジで何をし始めるか分からなかった。
「ちょっとさっきのタイムリープしたときに、変に頭痛がしたからやるならもう少し待って欲しいんだけど。」なんかありがちな嘘をついてみた。すると泰斗の眉間のしわが少し深くなった。
「確かに、なんか俺もさっきから気持ち悪いんだけどそれのせいかなぁ?」いい感じに嘘がはまったようだった。
「何なら、今日はもう遅いしどっか入らない?」
「入るったってどこに?」確かにもう夜中の3時過ぎ、ビジネスホテルとかというわけにもいかなかった。
「カラオケ?」俺がそういうと、泰斗の顔が明らかに変わった。
「行っちゃう?」俺は間違いなく提案した場所を間違えたと確信した。
それからの記憶はとりあえずやつの十八番を永遠と聞くという時間だったことしかんかった。しかも、ずっと同じ曲のバージョンが違うものをお店の閉店時間である朝6時までの3時間近く聞いていた為、嫌でも覚えてしまった。もちろん寝れていない。
寝不足だ・・・・
カラオケボックスから出ると、朝日が容赦なく俺たちに光のやりを降らしていた。俺が半目をつぶりながら歩いている横で泰斗は、とてもすがすがしい表情で歩いていた。
「元気そうだね?」俺は少し引き気味の声で言った。
「最高の気分!」
「誰だよ?」泰斗の究極のどや顔ぶりに俺は返す言葉が無かった。
とりあえず俺たちは元の駐車場まで向かうことにした。すると、突然大きな女性の怒鳴り声が聞こえてきた。
「何今の?」俺がそういうと、泰斗は不思議そうな顔をしていた。
「なんかどこかで聞いたことない?」不思議と俺も全く同じことを考えていた。ちょっと甲高く、少し怒り慣れていない聞き覚えのあるこの怒鳴り声、どこか懐かしい感じがした。
「なぁ、ちょっと・・・」
「ちょっとだけ!ちょっとだけ!」何の念押しか分からないが、お互いその言葉を連呼しながら、同じ場所に自然と足が動いていた。
この道、この景色、全てが懐かしい。あの公園のブランコで良く遊んでた。あの川に流されかけた。あそこのおっさんウザイ。ただ歩いているだけなのに、俺の頭の中は今まで思い出してみなかったことが鎖に繋がっているように、どんどん引き上げられていく感覚だった。
目的地近くになり、俺たちは兵の陰に隠れ、ある場所に視線を向けた。そこには一人の女性と一人の男の子がいた。女性は典型的な怒った表情で男の子を見下ろしていた。俺たちから男の子は、しょぼくれた後ろ姿しか映っていなかった。
その怒っている女性は間違いなく田中先生だ。若い時って意外と綺麗だったんだなぁ。
俺たちはあの擁護施設に来ていた。
「あんた、今何時だと思ってんの?こんな朝っぱらまでどこで何してたの?」時間に関してはお互い様だと思う。ここから一発目の声が聞こえた場所は見えない位置にあるほどの距離だったのに聞こえるってどんな声?
すると男の子は、ヒックヒックした声で一言だけ告げた。
「逃亡。」
俺と泰斗は思わず噴き出した。そういえば、遠い記憶だがなんか脱走して先生たちが必死で探してた事件があった気がした。まぁその気持ちは分からなくもなかった。新しい里親が見つかることはとても良いことだが、当時俺たちはそうは思っていなかった。それくらいあの施設での生活は楽しい時代だった。
「なんでそんなことするの?マーシー?」田中先生からの一言で、俺たちは顔を見合わせた。
「今マーシーって確かに言ったよね?」だが俺には逃亡した記憶はない。それに幼少期は何をするにも俺の横には泰斗がいたはずだ。
「俺が知らないうちに、そんなことしてたんだぁ・・・」泰斗がそうなるのも無理はない。
すると奥からもう一人のおっさんが現れた。
「朝も早いし続きはとりあえず中に入って話したら?」
「誰?」俺と泰斗は全く同じタイミングで、思わず言ってしまった。
「なんか声がする・・・」男の子がそう言いながら俺たちの方を見た。俺たちは慌ててその場から立ち去った。慌てたせいで少ししか見えなかったが間違えなく、あの男の子は幼少時代の俺だった。
「ほら、こんな朝から大騒ぎしてるから・・・・」
「いやぁ、心配からつい大声で・・・・」田中先生とおっさんはどこか仲よさそうに見えた。旦那?いや旦那はいなかったはずだ。子供はいたが旦那は事故で亡くなっているはず。だが、あんなおっさんがいた記憶が俺にはなかった。
とりあえず俺たちは近くの公園へ向かった。というより自然にその公園に立ち寄っていた。
「そっか・・・そういう事だ・・・」泰斗は一人でつぶやいていた。
「どこもかしこも全く一緒だったから全然思いもつかなかったけどここはパラレルワールドの過去なんだよ。」俺はその言葉を聞いて、さっきの田中先生との電話を思い出していた。
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