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本編
国王様は学園試験に行く準備をします
しおりを挟む馬車に乗ると、父様からあるものを渡された。
「えっとー…父様これは??」
「メガネだ」
ああ、それもすっごい分厚ーいレンズな。
「話がある。」
父様は真剣な面持ちでこちらを見つめる。
きっと大切な話なのだろうが、その手に持っている眼鏡は子供のおもちゃのようで不思議だ。
「なんでしょう?父様。」
「ソフィ、お前はもっと自覚しなければならない。その容姿も頭も、そして瞳の色もだ。ずっと家で過ごしていたから特に言うことがなかったが、これからは私の目の届かないところに行かなくてはいけない。兄達もずっと側に居られるわけではないからな。」
なるほど、、門番といい、ルートといい、驚いていたのは瞳の色だけではなかったと言うことか?
前世でも言われたのだが俺は人や自分の"容姿"というものに疎いらしい。
確かにお母様のことを綺麗だと思ったり、お父様やお兄様をかっこいいとも思ったことは何度もあるが、ただそれだけなのだ。
容姿が良くても国には役立たないからな…←
ソフィア(テオドル)は前世では国のことしか考えてこなかったし、現世では冒険者になるためにはということしか考えていなかった。容姿など気にする時間もないし、むしろそれが何の役に立つのか、というレベルで気にすることもなかった。
宝の持ち腐れ、というやつ。
「それでこのレンズの分厚いメガネということですか。」
「ああ、良い案だろう?」
なんとも生活のしにくそうな……おっと、そんなことを言っては父様に失礼か。
「えっと、掛けてみますね。」
そう言ってソフィアはメガネを掛けてみた。
、、、うわー。
なんだこれ。もう世界が世界じゃない。
ぼっやぼや。メガネって視界を良くするために付けるものではないのか?
なんだこれ、父様の顔面がもうボヤボヤじゃないか。そこに顔があるってことだけがわかる。
ただモザイクがかけられているような感覚で別に目に支障は無さそうだが、人の顔を覚えられ無さそうで心配だ。
「どうだ?ソフィア。」
「すごーく、世界がボケボケですね、」
「そうか、でもこちらから見ればごく普通の子供だ。」
え?父様、遠回しに俺のこともともとは普通じゃないって言ってます?
「これで試験に行くのでしょうか?」
「文字は書けそうか?」
まぁ、うん。なんとなくだが。いけないこともないだろうレベルだ。
「あ、はい。なんとなくですが。」
「ソフィは頭が良いからな。多少見えないほうが丁度いいだろう。」
父親って普通はもっとしっかりやれって言うもんじゃないのか?すごいな。俺がしっかりやらなくても大丈夫なのだろうか。
「でも、それではアールステット家が…」
「大丈夫だ。それでソフィが危ない目に合わないのならいくらでも、、成績なんて気にしないよ。だから無事でいてくれ。」
そう言って、俺の隣に座り抱きしめられる。
俺は国王として父親にはしっかりした面を見せなくてはと思っていた。
それはソフィアに生まれ変わっても同じだった。
両親の役に立てるように、そればかり考えていた気がする。
こんなに自分自身のことを見てくれている父様の元に生まれてこれて本当に良かったと思った。
「っ、、ありがとう、ございます。」
なんだか泣きそうになってしまったが、頑張って堪えた。
多分目にはこぼれ落ちてないだけで沢山の涙が溜まっていたけど、上を向いて落とさないようにした。
ちょっと揺れて乾かしてもみた。
そんな俺を優しい目で笑っている父様を見て、またなんか視界がぼやけてしまった。
メガネのせいだよ、きっと。
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