11 / 51
本編
俺の弟(ユージンside)
しおりを挟むユージンside
アールステット家は貴族だ。
確かに田舎の領主ではあるがそんなに金がないというわけでもない。…つまりある訳でもないが。
長男のヘルド兄様はもともとこの家を継ぐ予定だったが、世界を見たいだとかで今は家にいない。
むしろ今どこにいるのかも正直わからない。
そのせいで俺がこのアールステット家を継ぐこととなった。
長男のヘルド兄様が今年17だったか。
俺が16、三男のアレクが12で四男のカルムが10、そして五男、、名前はなんだったか。ソルィ?が確か今年5歳。
五男との年齢が離れているというのもあるが、俺は長男の代わりに貴族としての色々な、いわば雑用をやっているため五男には一回も会っていない。
特に興味があるわけでもないが挨拶くらいはしないとなとは思っていた。
うちの領地は広く、今日はさらに端の南にあるところの視察を終えてやっと家に帰れた日だった。
「久しぶりにあそこに行くか」
そうして向かったのが書庫だった。
ここは忙しい時間も忘れられる、しかも人気があまりない、俺しかいない場所。その中でゆっくり本を読んでいると、
ガチャ
と音を立ててドアが開いた。
その時は珍しいものだな、使用人が入ってきたのか?と思って視線だけを動かすが、見えたのは脳天だけだった。
脳天、、??、、、子供か?
音を立てずに近づくと、頑張って本を取る姿が見えた。
「誰だ」
そう話しかけると、その子供は相当びっくりしたらしく、脚立から落ちそうになる。
流石にそれには俺も驚き、急いで近づいて抱く。
小さいだけあって軽い。むしろ俺の力で潰してしまわないか心配だ。
「もう一度聞くがお前は誰だ。」
そうもう一回話しかけた時、見えなかった顔がこっちを向いた。
、、、この世のものなのか?
それがこの子供を見た最初の感想だった。
綺麗だ。
子供を見て可愛いなどと思うものもいるだろうが、純粋に、ただその言葉が出た。
しばらく反応できずにいると、その子供が俺の鼻を摘んできた。
それにも驚きを隠せなかった。俺は別に怒っているわけでもないのに、不機嫌に見られるというか、誤解を与えやすい見たいだ。
子供や女には避けられることも度々。
だがこいつは俺の鼻を摘んできたのだ。それは驚かない方がおかしい。
ソフィア、と紹介をされなんだかぴったりな名前だと思った。
その後も、この俺のことを「ゆーじんお兄様」と呼んできたり、なんだか距離が近かったりした。
甘えたい年頃なのだろうと思ったが、子供の扱いに慣れてない俺はどうしたらいいかわからず、ついそっけない態度をとってしまう。
だがソフィアは全然そんなことを気にしてないように、「おとなりで本読んでいいですか?」と笑顔で聞いてくる。
「問題ない。」と答えるとさらに嬉しそうに笑うのだ。なんだか抱きしめたくなった。
「今日の夜ご飯はどこで食べるのですか?」
「その、喋り方はやめろ」
「喋り方?」
「もっと……普通でいい」
俺は何を言っているんだ。
だが、その畏まった話し方に少し寂しさを覚えてしまったのだから仕方ない。
ソフィアもそれを分かったかのようで、少し微笑んで
「ゆーじん兄様。一緒にご飯食べたい。」
と言った。
これではどっちが兄か分からなくなるなと自笑し、ソフィアを抱いて席を立った。
「ああ、一緒に食べよう」
これは視察なんかもういけないかもな、全部父に任せるか、なんて考えているユージンであった。
ユージンside end
40
お気に入りに追加
895
あなたにおすすめの小説

転生したが壁になりたい。
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

BLゲームの脇役に転生した筈なのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろはある日、コンビニに寄った際に不慮の事故で命を落としてしまう。
その朝、目を覚ますとなんと彼が生前ハマっていた学園物BLゲームの脇役に転生!?
脇役なのになんで攻略者達に口説かれてんの!?
なんで主人公攻略対象者じゃなくて俺を攻略してこうとすんの!?
彼の運命や如何に。
脇役くんの総受け作品になっております。
地雷の方は回れ右、お願い致します(* . .)’’
随時更新中。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。

俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない
迷路を跳ぶ狐
BL
自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。
恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。
しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる