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本編
過去、そしていま(ヴィルside)❷
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ヴィル・アストロールside
ヒュオオオオ
今日は風が強い。
私はあの方を王都全体が見下ろせるこの場所へと連れて行こうと思っていた。
絶対に、この国が大好きなテオドル様なら喜ぶだろうと。
そして一緒にこの国を守っていこうと、そう彼に誓おうとしていた。
なのに、あの日
私は一緒に守るなどとは言えないほど役立たずで、あの人だけを死なせてしまった。
テオドル様のことを"テオ"という愛称で呼べたのはあの戦場でだけだった。
後悔という言葉だけでは表せないほどの出来事であった。
弟たちに当時のことを聞かれても、正直語れる事はなにもない。
あの人の命日はいつもこの場所へ足を運んでいる。
私は6年経ってもあの人がまだ死んでしまったことを受け入れられていない。
__________________...
そしてテオドル様の命日から数日後、私用で噴水近くにある商業ギルドへと足を運んでいた。
毎日賑わっているそこにはテオドル様の像が建っており、正直あまり見たくないというのが本音だ。
いつまでもズルズルと、と思われるかもしれないが別に誰に言っているわけでもないのでいいだろう。
商業ギルドで用事を済ませ、帰ろうかと思いながら外にでた。
すると、その像の前にいた親子がなぜか目に入った。
そこにいた子供は何故か涙を流していた。
きっと5.6歳くらいの子供だろう、なぜその場所で泣いているのか。
こんなに賑わっている噴水広場なので目立ってはいないものの、何故か気になってしまった。
「、、っ。ぅ、テオドル、様は。幸せですね、こんなに愛されて。」
そう言った子供は一体いくつなのだろうか。
俺らが戦っていた時に産まれていたのかもわからないくらいだ。
だがその子供が掛けていたメガネを外し、涙を拭いた瞬間、6年間感じなかったこの胸の高鳴りを感じた。
赤い…瞳…
父親らしき人物が慌てて、その泣いてる子供になにやら声をかけながら、両手で顔を包んでいる。
まるでその瞳を見せないように…。
確かに、赤い瞳は珍しく、テオドル様以外に見たこともない。それと、驚くほど顔の整った子供だった。
危険だと、その父親もわかっているからこその行動だろう。
その瞳を見た瞬間、金縛りにあったように動けなかった。
全く、見た目も歳も違う子供が赤い瞳だったからと動けないでいる。
あの人を諦めずにどこかで探している自分に呆れる。
もうその親子は見えないにも関わらず、この場所に一体何分居たのだろうか。
ため息を一つつき、今日は飲もうかとその場所を後にするのであった。
___________...
ガチャッ
「すみません、ヘルゲ・マルクスはいますか。」
ヴィルは冒険者ギルドのドアを強めに開け、そう言葉にしながら進んでいく。
「は、はい。ギルド長は2階に…」
受付のギルド員が答える。
「どうもありがとう、…ルイも来てください。」
その近くにいた黒ずくめの冒険者にそう言いながら2階のギルド長室へと向かった。
コンコン
「入れ」
「失礼します、」
「アストロールか、久しいな。どうした、ルイも連れてなんて珍しいじゃねーか。」
それもそうだ。
ヴィルは何もない限りこの冒険者ギルドには行かない。テオドルが亡くなった今、ヘルゲと仲良くする理由もなにもないといった結構冷めた関係であった。
そしてルイとは、現在 Sランクの冒険者で、騎士団長のヴィルと一緒にいるということ自体が珍しい組み合わせだ。
「なんか来いって言われたので、」
と、ルイは不機嫌そうにそう一言。
「少し、お話ししたいことがありまして、それに関係するので連れてきました。」
「へぇ?もしかしてあいつにそっくりなやつを見つけたとか?それともなんだ?幽霊か?ゾンビか?どっちにしろ願ったり叶ったりだけどな、」
ヘルゲはそう笑い話のように言うが、実際はそんなものでもいいから出てきてほしいと思っているはずだ。
実際、ここにいるみんながそう思っている。
「、、赤い瞳の少年を見ました。しかもテオドル様と全く同じような明るい赤色の。」
「「!!!」」
2人は驚いたように目を見開く。
「赤い、瞳」
この国には赤い瞳はテオドル様のみであった。
暗い茶色みたいな赤や桃色に近い赤などは何人もいる。だがテオドル様のような澄んだ綺麗な宝石のような明るい赤色の瞳はどこを探しても彼1人しかいなかったのだ。
だが私は確かにこの目で見た。全く同じ瞳を。
「あいつ、子供作ってたとかか?」
「いや、近くに父親らしき人がいたのでそれはないかと。」
「わかんないだろ、実はいたとか、、。」
「まぁ、完全にないとは言い切れませんが、」
「とにかくそいつを調べてみるか。」
「とりあえず俺が探る」
珍しくルイがそう言葉を発する。
こいつはテオドル様のこととなると人間が変わったようになる。
変なやつに好かれてしまいましたね、まぁあの人の周りはこんなようなやつばかりですけどね、自分も含め。
さて、あの赤い瞳の人間はどんな子なのでしょうか。楽しませてくれるといいですが、、。
ヒュオオオオ
今日は風が強い。
私はあの方を王都全体が見下ろせるこの場所へと連れて行こうと思っていた。
絶対に、この国が大好きなテオドル様なら喜ぶだろうと。
そして一緒にこの国を守っていこうと、そう彼に誓おうとしていた。
なのに、あの日
私は一緒に守るなどとは言えないほど役立たずで、あの人だけを死なせてしまった。
テオドル様のことを"テオ"という愛称で呼べたのはあの戦場でだけだった。
後悔という言葉だけでは表せないほどの出来事であった。
弟たちに当時のことを聞かれても、正直語れる事はなにもない。
あの人の命日はいつもこの場所へ足を運んでいる。
私は6年経ってもあの人がまだ死んでしまったことを受け入れられていない。
__________________...
そしてテオドル様の命日から数日後、私用で噴水近くにある商業ギルドへと足を運んでいた。
毎日賑わっているそこにはテオドル様の像が建っており、正直あまり見たくないというのが本音だ。
いつまでもズルズルと、と思われるかもしれないが別に誰に言っているわけでもないのでいいだろう。
商業ギルドで用事を済ませ、帰ろうかと思いながら外にでた。
すると、その像の前にいた親子がなぜか目に入った。
そこにいた子供は何故か涙を流していた。
きっと5.6歳くらいの子供だろう、なぜその場所で泣いているのか。
こんなに賑わっている噴水広場なので目立ってはいないものの、何故か気になってしまった。
「、、っ。ぅ、テオドル、様は。幸せですね、こんなに愛されて。」
そう言った子供は一体いくつなのだろうか。
俺らが戦っていた時に産まれていたのかもわからないくらいだ。
だがその子供が掛けていたメガネを外し、涙を拭いた瞬間、6年間感じなかったこの胸の高鳴りを感じた。
赤い…瞳…
父親らしき人物が慌てて、その泣いてる子供になにやら声をかけながら、両手で顔を包んでいる。
まるでその瞳を見せないように…。
確かに、赤い瞳は珍しく、テオドル様以外に見たこともない。それと、驚くほど顔の整った子供だった。
危険だと、その父親もわかっているからこその行動だろう。
その瞳を見た瞬間、金縛りにあったように動けなかった。
全く、見た目も歳も違う子供が赤い瞳だったからと動けないでいる。
あの人を諦めずにどこかで探している自分に呆れる。
もうその親子は見えないにも関わらず、この場所に一体何分居たのだろうか。
ため息を一つつき、今日は飲もうかとその場所を後にするのであった。
___________...
ガチャッ
「すみません、ヘルゲ・マルクスはいますか。」
ヴィルは冒険者ギルドのドアを強めに開け、そう言葉にしながら進んでいく。
「は、はい。ギルド長は2階に…」
受付のギルド員が答える。
「どうもありがとう、…ルイも来てください。」
その近くにいた黒ずくめの冒険者にそう言いながら2階のギルド長室へと向かった。
コンコン
「入れ」
「失礼します、」
「アストロールか、久しいな。どうした、ルイも連れてなんて珍しいじゃねーか。」
それもそうだ。
ヴィルは何もない限りこの冒険者ギルドには行かない。テオドルが亡くなった今、ヘルゲと仲良くする理由もなにもないといった結構冷めた関係であった。
そしてルイとは、現在 Sランクの冒険者で、騎士団長のヴィルと一緒にいるということ自体が珍しい組み合わせだ。
「なんか来いって言われたので、」
と、ルイは不機嫌そうにそう一言。
「少し、お話ししたいことがありまして、それに関係するので連れてきました。」
「へぇ?もしかしてあいつにそっくりなやつを見つけたとか?それともなんだ?幽霊か?ゾンビか?どっちにしろ願ったり叶ったりだけどな、」
ヘルゲはそう笑い話のように言うが、実際はそんなものでもいいから出てきてほしいと思っているはずだ。
実際、ここにいるみんながそう思っている。
「、、赤い瞳の少年を見ました。しかもテオドル様と全く同じような明るい赤色の。」
「「!!!」」
2人は驚いたように目を見開く。
「赤い、瞳」
この国には赤い瞳はテオドル様のみであった。
暗い茶色みたいな赤や桃色に近い赤などは何人もいる。だがテオドル様のような澄んだ綺麗な宝石のような明るい赤色の瞳はどこを探しても彼1人しかいなかったのだ。
だが私は確かにこの目で見た。全く同じ瞳を。
「あいつ、子供作ってたとかか?」
「いや、近くに父親らしき人がいたのでそれはないかと。」
「わかんないだろ、実はいたとか、、。」
「まぁ、完全にないとは言い切れませんが、」
「とにかくそいつを調べてみるか。」
「とりあえず俺が探る」
珍しくルイがそう言葉を発する。
こいつはテオドル様のこととなると人間が変わったようになる。
変なやつに好かれてしまいましたね、まぁあの人の周りはこんなようなやつばかりですけどね、自分も含め。
さて、あの赤い瞳の人間はどんな子なのでしょうか。楽しませてくれるといいですが、、。
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