国王様は生まれ変わったら冒険者になりたい。

いに。

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本編

過去、そしていま(ヴィルside)

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ヴィル・アストロールside






「じゃあヴィーだな!」

そう嬉しそうに笑いながら私の名を呼ぶあの人はもうここにはいない。




______________....





「団長!!お疲れ様です!!!」
年若いきっと新人であろう騎士がそう声をかけてくる。相変わらず騎士団は暑苦しい者ばかりだ。

まあ、私もその1人だったがな。


私の父親は騎士団に所属していた。その中でも今の私と同じ騎士団長という位だ。
その影響で必然と私も将来、騎士を目指そうと考えていたのが13の頃だ。

王への忠誠心とやらが全く分かっていない子供だったと自分でも思う。
むしろあの出来事がなかったらきっと今でもその心は持っていなかったと言ってしまえるくらいには自分に影響力のあるものだった。


私が14の時、父に連れられて騎士団の練習場に見学に行ったことがあった。
将来、私もここに所属するであろうと考えていたので柄にもなく、少し楽しみだった。


カンッカンッ


と、お互いの木刀を打ち合い練習に励んでいる騎士たちはまだ若い自分とは比べ物にならないほど大きな体格で筋肉も別次元だった。

必然と、私も頑張らなくてはなと思った。


「ヴィル、少しここで見学していてくれ。」

と、父様に言われ練習場の隅の椅子に座っていた。



カンッ

カンッ

この日の太陽の日差しはすごく強かったが練習場にいる騎士は活気があった。


カンッッッ


「っっ!!!!」


そう考えていたらいつの間にか上から木刀が降ってきたのだ。
打ち合っていた際に負けた方の騎士の手に力が入っていなく、飛んでいってしまったようだった。

咄嗟のことすぎて動きもできず、受ける体制を取ることもできなかった。

ただ、飛んでいるその木刀がなぜかゆっくり見えていた。


ッッバチッ

雷の線が見えたかと思ったら木刀はそのままめの前で焦げて落ちていった


「いやぁ、危なかった危なかった」


そう笑いながらこちらに向かってくるのはここにいる騎士の誰よりもしっかりとした筋肉のある大柄の金髪の男だった。


それがテオドル様で、
この時はもうすでに国王になられている時だった。


どうして?そんな方がここに??


もう意味が分からず混乱していた。


「ヴィル!大丈夫か!?」

すると父様が駆けつけてくれた。遠くから見ていたがこちらに間に合わなかったらしい。

「申し訳ありません、テオドル様。そして息子を助けてくださり、本当にありがとうございます。」

「いいんだいいんだ、気にするな。」

これがテオドル様か、はじめてこんな近くでお見かけした。

とてもお強そうな方だし、なんだか思った感じと違うな。などと子供の頃の私はそんなことを考えていた。

「ほう」

と言いながら私の顔を隅々まで見てくる。
一体…?、、もしかして失礼なことをしたか?

は!
そういえば、自分から名を名乗っていなかった。


「も、申し遅れてすみません。私はヴィル・アストロールと申します。アストロール家の長男でございます。どうぞよろしくお願い致します。」


そうするとテオドル様は一瞬ぽかーんとした顔をしてから理解したかのように笑顔になる。



「ヴィルか。じゃあヴィーだな!よろしく。」



こんなガタイのいい男に向けて言う言葉ではないかもしれないがその笑顔がすごくかわいかったのを覚えている。

一目惚れというやつかもしれない。
本当に柄にもなく、心臓がどきどきした。


まだまだ子供ながらに"この人を守らなくては"と心に誓った。




それから私は時を経て22歳になった。

そしてテオドル様は36歳。しかもテオドル様はあの見た目で人間族だと言う。

純血の人間族はわりと希少で寿命も短い。
このことは王宮の者たちしか知らないらしい。

別に人間族だからなんだってわけではないが、一応のため伏せているのだと言う。

そして私はこの歳で騎士団の団長になっていた。

あの時よりもテオドル様に近づくことができる役職につき、さらに沢山話せる(主に仕事のことで)。


「ヴィー、ほんとすまない!これ頼めるか??」


「またギリギリに持ってきて…あなたと言う人は。」


こう冷静を装ってはいるが内心は心臓が破裂しそうなんだ。
なんかいい匂いがするし、ガチムチの部類だがなんだか色気がある。

「、、仕方がありませんね。貸し1ですよ。今度また何か返してもらいますからね。」

そう言って資料を受け取る。

もはや最初の方に述べた王への忠誠というよりは、自分自身の心までこの男に持ってかれた感じがする。


「ありがとうなぁ。本当にヴィーがいて良かった!」

そうキラキラ笑うテオドル様で何回抜いたことか。

おっと、、口が滑りましたね。
下品な話を申し訳ありません。


「次は何で返せばいいんだ??」


そう、こういったテオドル様からのお願いは結構ある。それに答えると私からしたをもらえる。

この前は一緒にディナーに行った。
美味しいと目を大きく開けて言っているテオドル様は本当に可愛かった。

「そうですね、、今度は行きたいところがあるので予定を空けておいてほしいです。」

国王に休みなんてほぼないが、たまには息抜きもいいだろう。
むしろこう言わないとこの人は休まないですから。

「おお、なるほど。わかった、また予定が決まったら連絡するな。」

「はい、よろしくお願いしますね。」

そして、また来るな!といって一回ドアを閉めたが、再びそのドアが空いた。
騎士団の誰かが来たのかと思ったがそれは先程のテオドル様だった

「どうかされました??」

「楽しみにしてるなっ」

そう照れ臭そうに笑いまたドアを閉めて消えていった。


ん"っ///


なんだあの生物は!?
わざわざ楽しみなこと言い忘れたからもう一回来るとか可愛すぎはしないか??
鼻血がでるかと思った。

それからというもののしばらくは当たり前だが仕事が手につかなかった。



そしてその約束が果たされることはなかった。












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