7 / 47
本編
かわいい弟の話 (アレクside)
しおりを挟むアレクside
アールステット家に五男が産まれた。
その日は、王都で事件があった日でもあった。
S級の魔物が攻めてきて、あのヘルクヴィスト帝国の国王様が死んだと知らされた時は僕はまだ子供であったがことの重大さは充分に感じていた。
僕は一度だけ国王のテオドル様をお見かけしたことがある。
見たと言っても国の建国を祝ったパレードで遠くからという言葉がつくが。
でも遠くからでもわかった。
テオドル様はこの国が愛しくて仕方がないというような笑顔をみんなに向けていた。
そんなテオドル様がこの国をお守りになって死んだというのは田舎のこの領地でもすぐに伝わり、同時に皆が悲しみに暮れたのだ。
そしてその日に弟のソフィアは産まれた。
たまたまその日は僕はお父様と一緒に居たところ、予定よりも早く産まれるとのことで、急いで医者を呼んだ。
王都での災害のことを聞き、また国王様が亡くなったことで不安や悲しみが募っていた時のことだったので、余計心配だった。
弟が産まれてもあまりこの家では関心がないのだが、僕は心配だったためずっとお母様と産まれてくる子を待った。
何時間か経って、お母様の部屋に入った時はもうソフィアは産まれていた。
そしてまるで不安を悟ったかのように僕たちに笑顔を向けてくれた幼いソフィアは両親や兄弟にとって大切な宝物になった。
それから数年後、
一言失礼する。
とにかく可愛い!!、!!!!
なんだこのふわふわの生き物は!!
宝石が埋め込まれたみたいなキラキラした赤の目に白に近い金の髪。母様似ともとれるけど目の色は全く違う。
僕はこんな美しい人間ははじめてみた。と、思った。(もちろん現在進行形だが。)
そしてなにより、
「あれくにぃさま!!」
と、言って一生懸命こちらに向かって走ってくる姿はもう…なんと言えばいいか。言葉にできないくらいだ。
そしてソフィアが3歳の時。
「あれくにぃさま!おそとであそびたいです!」
と、あの天使のような笑顔で言われて僕は浮かれすぎてしまったみたいだ。
喜んで返事をして外で遊んでいたら、ソフィアがふらっと倒れてしまった。
その時は時間が、息が止まったかと思った。
「ソフィっっ!!!!!」
今までにないくらいに大声を上げて、すぐに使用人たちを呼んで医者にみせた。
「はーっ、はーっ、」
辛そうに呼吸をしているソフィアを見て、心配をするとともに自分が許せなかった。なぜ僕は、ソフィアが倒れるまで体調の変化に気づけなかったのか。
もうソフィアと遊ばない方が彼にとっていいことなのではないか。そう思わずにはいられなかった。
そんなことをグルグル考えて数日経ったある日、
"コンコン"
部屋のドアを叩く音が聞こえた。
こんな時間に誰だろう、なんて思って返事をするとドアだけが開いて誰も立っていなかった。
と、思ったら視線を下に向けるとちょこんとそこに小さなソフィアが立っていた。
しかもあの宝石のような目をウルウルとさせ今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「ど、どうしたんだ!?ソフィ」
「あれくにぃさま、ぼくのこときらい?」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でそう聞こえた。
どういうことだ?なぜ僕がソフィアを嫌いなどと…そんなことはなにがあっても絶対にないのに、と考えを巡らせていたら。
「ぼくとあそんでくれなくなった」
とそう言われた時にすぐにソフィアの言いたいことがわかった。
こんなに幼いのに、僕はソフィアの兄なのに、、
情けないという感情とともに嬉しさもあった。
「ううん、ごめんね。ソフィ、違うんだ。大好きだよ。愛してる。」
僕の思いが伝わるように何回も何回も言った。
どさくさに紛れておでこにキスもしておいた。
誰も見てないし、なにより兄だからいいよね。
そうすると、嬉しそうな顔をしたソフィアは
「よかったあ!」と。
ああ…
これはやばいね。
なにこのド天使。
可愛すぎてとりあえず離せない。どこにも行かせたくない。
アレクが本物のブラコンという領域に入った瞬間であった。
そんなのは僕だけじゃない。
他の3人の兄弟ももしソフィアに会ったら絶対こーなる。兄弟だからわかる。会わせたくないな、、。
そしていま1番の問題として両親と頭をかかえていることがある。
それはソフィアの夢は"冒険者"だということだ。
心配で仕方がない…
こんなに可愛くて冒険者なんてできるのか??
かわいい子には旅をさせよなんて誰が言ったんだ。
旅させたらだめだろって正直思うけど、父様や母様はソフィアのしたいことをさせてあげたいと言うだろう、そういう人たちだから。
これはまた家族会議を開かなくてはいけないな。
アレクside end
30
お気に入りに追加
855
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる