人類レヴォリューション

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英雄集結

知里千景

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「ごめんなさい」

 私はイザベルについて来てもらい、ディミトリーの元へ謝りに来ていた。

「え!?  いやいやそんな!」

 あぁ、傷付いているんだな。

 私はディミトリーのその表情を見て、さっき判別できなかった彼の傷を見た。

「私、酷い事したと思ってる。だから本当にごめんなさい」

 タローに言われた。
 許してもらおうと思って謝るんじゃない。

 沸々と誰に言われたかを考えると、ハラワタが煮え繰り返りそうになりながらも、でもその通りだなと考えるに至る。

 あの時はその一言で、どれだけ私がディミトリーを傷付けたのかを思い知り、わんわん泣き喚いてしまったが、今考えると泣きたいのはディミトリーなのだと、自分が馬鹿のように思える。

「いえ、大丈夫ですよ。僕も嘘ついてたから」

 何故に彼はそんな嘘をついたのかと考える。

 ムネリンに近寄る為?

 そんな結論に至る考えをしているから、私は馬鹿だと結果が出たのに。

「ディミトリーは男の子なの?」

 言葉が足りないだろうとは思う。
 だけれど、それしか思いつく言葉が無かった。

「はい。僕は男の子だと思っています」

 だけれど、彼は解ってくれた。
 こんな良い子をなんで私はと、自分の馬鹿さ加減に苛立ちさえ覚える。

「わかった!  ならディミトリーは男の子だ!  ごめん!  本当にごめん!!」

 何のために本を読む?
 私は馬鹿だから、人の気持ちを考えられない馬鹿だから、だから本を読む。

「こちらこそ!  すみませんでしたっ!  でもこれからよろしくお願いします!」

 ニコニコと隣で微笑むイザベル。
 イザベルには、今の流れが自分の事じゃないのに解るのだろう。

 凄いなぁ。

 私なら、なんだ仲直りか。良かったね!
 で、それだけになっただろう。

 ディミトリーの悩みや、それに対する決意。
 私の謝罪の意味や、それを深く表さない言葉の選択も。

 イザベルやディミトリー、ムネリン、タロー。
 みんな多分、直ぐに理解できるのだろう。

 凄いなぁ。

 私は単純にみんなが凄い人に見え、そして羨ましくなった。


 ディミトリーとの和解を終え、イザベルに付き添ってもらったことへの感謝もいい終わり、仲良くなったとムネリンに報告しに行こうと思っていたら、アナナキ達からの集合がかかった。

 対クリーチャー戦、戦略会議。
 想像以上にクリーチャー単体の戦力が強そうだ。

 ん?  何で私が第二隊なんだ?
 ムネリンと一緒じゃないのか!?
 しかもなんで第"二"隊の隊長!?
 第一隊が良いのに!

 あ!  でもディミトリーがいるぅ!

 私は編成に少しばかり気にくわない点があったが、これ以上揉め事を起こしてムネリンに迷惑を掛けまいと自制する。

 キョロキョロと周りを見てみると、ムネリンが真剣な顔で話を聞いていた。
 こっち向かないかなーっと思って、だいぶ見ていたが一向にこっちを見ない。

 いつもなら、私が見ていたら目が合うのにな。


 大体こういう時は、ムネリンは何かいつもと違う筈だ。
 私はそう確信していた。

 なんでムネリンはいつもと違うのだろう?
 私の作業はいつもここから始まる。

 戦略会議。
 クリーチャーが強い。
 人間の軍隊も参加する。
 アナナキっちの話が長い。

 んー?
 わからない。

 ムネリンは真剣に話を聞いているようだから、話がめんどくさいなんて気持ちな訳ではないだろう。
 クリーチャーとの戦いが厳しそうだから、不安がっているのか?
 それは心配しなくても私がどうにかするから大丈夫!
 もしそんなことなら終わったらすぐに声をかけて、安心しなさいと言ってやろう。

 私は早く!  と、アナナキっちの話が終わるのを待ちわびた。

 ムネリンの好きな魔王様キャラで、私がドンっと構えていたら、安心してくれるだろうから!


 




「信用ができない」

 アナナキっちとムネリンがなにやら真剣な顔で話し合っていたので、私は声を掛けるタイミングを逃していた。
 別に隠れようとした訳ではないが、二人の視線に私が入ると邪魔かなと思って岩の陰に立っていた。

 話を聞いていると、やっぱりムネリンは不安がっていた。
 でもなんか違う。

 クリーチャーに怯えているようではない。
 むしろアナナキっちに怯えているようだった。

 アナナキっちが何かしたのか?
 そしたら話を聞いてぶっ飛ばす!

 そう考えていると、急にムネリンは背中を向けて走り出してしまった。
 泣きそうだったように見えた。

 私はああいうムネリンに、どうしてあげたら良いのかがいつもわからない。
 だから立ち尽くしていた。

「チサト様」

 不意にこちらを背にしていたアナナキっちから声がかかる。
 ビクッとした。
 まさか気付かれているとは。

「なんだい?」

「タチバナ様をお願いしてもよろしいですか?」

 アナナキっちは振り返らずにそう言った。

「ん?今ムネリンと喧嘩したのはアナナキっちだろ?」

「え?」

 やっと振り向いたアナナキっちは、なにやら驚いた様子だ。

「え?  じゃないでしょ。大体私が行ったってムネリンは何も話さないよ?今はまだ話の途中だから聞かないけど、仲直りしたら話聞かせなさい。事によっちゃぶっ飛ばすよ?」

 いつもにこやかなアナナキっちの顔が、少し困ったようになっていた。

 でもこれは私ではどうしようもない。
 ムネリンは私には多分、なにも話さないと思う。
 泣きそうなムネリンに、私は近寄れない。
 近寄らせてもくれないし、近寄っても何やら一人で考えてその後いつもみたいに戻るだけ。

 でもそこが凄いのだ。
 それがムネリンたる所以なのだ。

 私が原因の事なら、私がなんとかしなくちゃ嫌われてしまう。
 だけれど、今回はそうではないし、アナナキっちと男と男の話なら、私が間に入るのは野暮というものである。

「ふっ。そうですね。チサト様にぶっ飛ばされると死んでしまいますので、自分でなんとかしてきます」

「死ぬまではぶたないよ?  なんだと思ってんの?」

「魔王」

「今ぶつよ?」

 アナナキっちはへへへっと軽い笑いを零しながら、ムネリンの後を急いで追いかけていった。


 あ、タローんとこ行かなきゃ。
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