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脳力解放
part 4
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「簡単な話、化け物殲滅すればいいんでしょ?」
僕とアナナキっちの頭の上で、いつもの魔王立ちをしている知里ちゃん。
「よいしょっと」
頭は使っていたが、体は随分休まったようだ。
寝転がっていた体を起こし、知里ちゃんの正面を向いて座り直す。
そこにはウキウキして目を煌めかせたマイハニーが小さな体に似合わない禍々しい気魄を纏っていた。
「界〇拳?」
「それに近い動きは出来るよ」
誰だ魔王にこんな力渡したやつ。
クリーチャーより危ないんじゃないか?
「要するにそのインセクトモンスターを一匹残らず細胞一つすら残さないくらいに殲滅すれば万々歳なんでしょ? なんなら私がそのポータルから向こうの惑星にいって惑星ごと吹き飛ばしてきてあげましょうか?」
なんちゅう魔王的な発想だよ。
ん? なるほど! その手があるじゃないか!
「言いたいことはわかりますよタチバナ様」
ちょくちょく心読むんじゃない!
「え? もう実行したってこと?」
「いいえ。ですが、実行する以前にデメリットが多過ぎるのです」
「なんの話?」
心を読んで会話してくるアナナキっちと僕の会話は第三者からしてみればなにを話しているのかわからなかったのだろう。
知里ちゃんがぽけっとした顔をしている。
「今クリーチャーが拠点にしている惑星ごと消すってのはオーバーだけど、核爆弾を何発でも打ち込めばいいんじゃないかと思ったんだよ」
「なるほどね! 向こうの惑星なら放射能も気にしなくていいしね」
「その作戦は我々も考えたのですが、あまりにも地球とクリーチャーの惑星が近過ぎるという点が問題になってきます。近いといっても何光年も離れているのですが、クリーチャーを全て跡形もなく殲滅しようとすると、クリーチャーの惑星では持ち堪えられません。あの生命力の高いクリーチャーを何億と殲滅する為には核爆弾以上の火力と威力を用いなければなりません。そうすると、彼等の惑星にも甚大な衝撃を与えてしまいビッグバンとともに消滅してしまいます。だからと言って火力や威力を抑えてしまうと中途半端な攻撃になってしまい宣戦布告も同然、クリーチャーの侵攻を早めてしまいます。勿論、クリーチャーが侵攻を始めたならば先手として攻撃する予定ではありますが、その兵器によっての殲滅には残念ながら至りません」
「ほうほう。ていうか、その惑星ってどこにあるの? 近いってことは火星とか?」
「いいえ、太陽系ではありません。むしろ我々アナナキ世界から宇宙に出ると、太陽系とは別の銀河に出てしまいます」
「え!? どゆこと!?」
訳がわからない。
同じ地球なのに、地球外が別?
僕は思考が追いつかなくなり、知里ちゃんをふと見てみると、先程いた場所から既に消えており、飽きもせずずっとノミのように飛び跳ねている熊本くんを追いかけ回していた。
「少しややこしいですが、まず人間の概念による宇宙を根本から覆さなければなりません。我々アナナキにとって宇宙というのは極大なポータルのようなものです。惑星間を埋める余白のようなもので、何光年と距離を位置付けてはいますがそれは我々の概念による距離です。今計測した距離が、従来の発覚しているモノと正確に噛み合うとは限りません。人間は名前を付けて全てを把握しようとしてしまう生き物です。その思考をまず打ち破らないと理解出来ないでしょうが、宇宙と呼ぶソレは無であり有であり、何々の様だとしか表現出来ないモノ。把握しようとすればする程、把握は不可能になります。ですが、惑星間にはやはり距離という我々の概念に沿う存在があります。先程も言ったように地球とクリーチャーの惑星は比較的に近い。クリーチャーの惑星の消滅によって必ず地球にも被害が出てしまう程の近さです。ですが、その事象は距離の近さからの干渉だと我々は認識していますがソレが全てではありません。混乱なさるでしょうが、それが真理です。我々が観測した近さは確実なものですが、それは我々の認識において確実なだけであり、総体的に見れば無駄なモノです。人間が地球外へ出て観測した太陽系は人間が固定して名を付けた宇宙というモノの副産物であり、それは我々アナナキが観測したモノとは須らく異なります」
……は?
いや距離あるって言ったすぐそばから無いって?
2ちゃんでそんなこと言ったら破綻とか言われて袋叩きにあうよ?
「ごめん全然わかんない」
「無理もありません。しかしこれが事実です」
「わかりやすく言うと?」
「今のが最大限にわかりやすく言ったつもりですが」
駄目だ。この件に関しては全く納得いく説明をもらえそうにない。
「まあ、玄関から出たら一丁目だけど勝手口から出たら三丁目みたいな認識でよい?」
「ぷっ! 十分です」
無表情で吹き出しても、笑ったかどうかわからんわ!
「んで? 話戻すと、結果前もって出来る事は準備くらいだよーってこと?」
「そうです。結論戦う事は避けられないということです。その戦場も此方側でしか出来ません」
「アウェイよりホームの方が勝率良い的な理論?」
「そういう見方もありますか。ですが根本的にはクリーチャーの惑星でアナナキや人間が生存していくことすら難しいという事です」
劣勢過ぎだろ。
仕事しやがれご都合主義。
ホームで戦うってことは少なからず、アナナキ世界に被害が及ぶだろうし、下手したら人間世界にも余波が来るかもしれない。
僕はなんとも甘くないこの状況に、嘆息をつかずにはいられなかった。
「そう言えば他の英雄とはいつ顔合せるの? 一緒に戦うわけだしコミュケーション取っておかないと連携も厳しくなるでしょ? ていうか外国の人ってことは会話するのも大変じゃないか?」
僕達の他に11人しかいない英雄達。
仮に知里ちゃん並みに気魄を使いこなせたとしても、共闘するのならば連携は重要だろう。
英語は少し話せるが、英語圏じゃないならだいぶ厳しい。
「ほかの英雄達とはやがて合流することになってます。言語の問題もご安心ください。脳力の解放とともにあらゆる言語の翻訳が可能になっています。実際に我々と会話しているのも、我々がタチバナ様たちの日本語を翻訳しているので成立しています。それと同じようにタチバナ様も違和感なく使えますよ」
こういうのにはご都合主義現れんのね。
てかもしや、アナナキ達。
人間が結託して報復するのを懸念して、意思の疎通が取れなくなるように言語を分けたんじゃ?
あの有名なバベルの塔みたいに。
「テヘペロ」
可愛くないから。
無表情なテヘペロに何の意味が?
変な日本語まで翻訳できるのか。
お茶目で誤魔化しやがってこの神畜生め。
僕とアナナキっちの頭の上で、いつもの魔王立ちをしている知里ちゃん。
「よいしょっと」
頭は使っていたが、体は随分休まったようだ。
寝転がっていた体を起こし、知里ちゃんの正面を向いて座り直す。
そこにはウキウキして目を煌めかせたマイハニーが小さな体に似合わない禍々しい気魄を纏っていた。
「界〇拳?」
「それに近い動きは出来るよ」
誰だ魔王にこんな力渡したやつ。
クリーチャーより危ないんじゃないか?
「要するにそのインセクトモンスターを一匹残らず細胞一つすら残さないくらいに殲滅すれば万々歳なんでしょ? なんなら私がそのポータルから向こうの惑星にいって惑星ごと吹き飛ばしてきてあげましょうか?」
なんちゅう魔王的な発想だよ。
ん? なるほど! その手があるじゃないか!
「言いたいことはわかりますよタチバナ様」
ちょくちょく心読むんじゃない!
「え? もう実行したってこと?」
「いいえ。ですが、実行する以前にデメリットが多過ぎるのです」
「なんの話?」
心を読んで会話してくるアナナキっちと僕の会話は第三者からしてみればなにを話しているのかわからなかったのだろう。
知里ちゃんがぽけっとした顔をしている。
「今クリーチャーが拠点にしている惑星ごと消すってのはオーバーだけど、核爆弾を何発でも打ち込めばいいんじゃないかと思ったんだよ」
「なるほどね! 向こうの惑星なら放射能も気にしなくていいしね」
「その作戦は我々も考えたのですが、あまりにも地球とクリーチャーの惑星が近過ぎるという点が問題になってきます。近いといっても何光年も離れているのですが、クリーチャーを全て跡形もなく殲滅しようとすると、クリーチャーの惑星では持ち堪えられません。あの生命力の高いクリーチャーを何億と殲滅する為には核爆弾以上の火力と威力を用いなければなりません。そうすると、彼等の惑星にも甚大な衝撃を与えてしまいビッグバンとともに消滅してしまいます。だからと言って火力や威力を抑えてしまうと中途半端な攻撃になってしまい宣戦布告も同然、クリーチャーの侵攻を早めてしまいます。勿論、クリーチャーが侵攻を始めたならば先手として攻撃する予定ではありますが、その兵器によっての殲滅には残念ながら至りません」
「ほうほう。ていうか、その惑星ってどこにあるの? 近いってことは火星とか?」
「いいえ、太陽系ではありません。むしろ我々アナナキ世界から宇宙に出ると、太陽系とは別の銀河に出てしまいます」
「え!? どゆこと!?」
訳がわからない。
同じ地球なのに、地球外が別?
僕は思考が追いつかなくなり、知里ちゃんをふと見てみると、先程いた場所から既に消えており、飽きもせずずっとノミのように飛び跳ねている熊本くんを追いかけ回していた。
「少しややこしいですが、まず人間の概念による宇宙を根本から覆さなければなりません。我々アナナキにとって宇宙というのは極大なポータルのようなものです。惑星間を埋める余白のようなもので、何光年と距離を位置付けてはいますがそれは我々の概念による距離です。今計測した距離が、従来の発覚しているモノと正確に噛み合うとは限りません。人間は名前を付けて全てを把握しようとしてしまう生き物です。その思考をまず打ち破らないと理解出来ないでしょうが、宇宙と呼ぶソレは無であり有であり、何々の様だとしか表現出来ないモノ。把握しようとすればする程、把握は不可能になります。ですが、惑星間にはやはり距離という我々の概念に沿う存在があります。先程も言ったように地球とクリーチャーの惑星は比較的に近い。クリーチャーの惑星の消滅によって必ず地球にも被害が出てしまう程の近さです。ですが、その事象は距離の近さからの干渉だと我々は認識していますがソレが全てではありません。混乱なさるでしょうが、それが真理です。我々が観測した近さは確実なものですが、それは我々の認識において確実なだけであり、総体的に見れば無駄なモノです。人間が地球外へ出て観測した太陽系は人間が固定して名を付けた宇宙というモノの副産物であり、それは我々アナナキが観測したモノとは須らく異なります」
……は?
いや距離あるって言ったすぐそばから無いって?
2ちゃんでそんなこと言ったら破綻とか言われて袋叩きにあうよ?
「ごめん全然わかんない」
「無理もありません。しかしこれが事実です」
「わかりやすく言うと?」
「今のが最大限にわかりやすく言ったつもりですが」
駄目だ。この件に関しては全く納得いく説明をもらえそうにない。
「まあ、玄関から出たら一丁目だけど勝手口から出たら三丁目みたいな認識でよい?」
「ぷっ! 十分です」
無表情で吹き出しても、笑ったかどうかわからんわ!
「んで? 話戻すと、結果前もって出来る事は準備くらいだよーってこと?」
「そうです。結論戦う事は避けられないということです。その戦場も此方側でしか出来ません」
「アウェイよりホームの方が勝率良い的な理論?」
「そういう見方もありますか。ですが根本的にはクリーチャーの惑星でアナナキや人間が生存していくことすら難しいという事です」
劣勢過ぎだろ。
仕事しやがれご都合主義。
ホームで戦うってことは少なからず、アナナキ世界に被害が及ぶだろうし、下手したら人間世界にも余波が来るかもしれない。
僕はなんとも甘くないこの状況に、嘆息をつかずにはいられなかった。
「そう言えば他の英雄とはいつ顔合せるの? 一緒に戦うわけだしコミュケーション取っておかないと連携も厳しくなるでしょ? ていうか外国の人ってことは会話するのも大変じゃないか?」
僕達の他に11人しかいない英雄達。
仮に知里ちゃん並みに気魄を使いこなせたとしても、共闘するのならば連携は重要だろう。
英語は少し話せるが、英語圏じゃないならだいぶ厳しい。
「ほかの英雄達とはやがて合流することになってます。言語の問題もご安心ください。脳力の解放とともにあらゆる言語の翻訳が可能になっています。実際に我々と会話しているのも、我々がタチバナ様たちの日本語を翻訳しているので成立しています。それと同じようにタチバナ様も違和感なく使えますよ」
こういうのにはご都合主義現れんのね。
てかもしや、アナナキ達。
人間が結託して報復するのを懸念して、意思の疎通が取れなくなるように言語を分けたんじゃ?
あの有名なバベルの塔みたいに。
「テヘペロ」
可愛くないから。
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