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最終話?〜エピローグ・2〜
しおりを挟むようニンゲン。夢オチでガッカリしただと?
それより結局、1番最初に話した事——どうやったら幸せになれるかってのは結局何だったんだよ、早く教えろ……ってか。
先の事が不安だ。昔の事を後悔してる。
ガッコウを辞めたい。恋人とうまく付き合いたい。
嫌な奴から逃げたい。痩せてキレイになりたい。
親と仲直りしたい。バカにした奴を見返したい。
病気を治したい。ラクして生きたい。
どうすりゃこの悩みを解決して、幸せになれるんだと。今までの話だと、何の答えにもなってねえってか、ハハハ。
それは最初にも話した、とある〝異世界〟で教えてもらった、〝3つの心〟がカギなんだ。今までの話に出てきたろ?
あとはそれを、自分のアタマでよく考える事だ。
——って事で、この話はもうオシマイ。
長々と聞いてくれて、ありがとな。
♢
「ふあああー……」
雪も解け、少し春の匂いがする朝だ。ボクはいつも通り、段ボールの中で目を覚ましたんだ。その日も1番の早起きだった。暖かい南風が、ガレージの中に吹き込んくる清々しい朝だ。ボクはまだ段ボールの中で寝っこけている、ルナを起こした。
「おい、起きろルナ。狩りに行くぞ」
「ふわあー……、もう朝なの……?」
——やっぱり、夢だったんだな。
いつも通りの1日が、今日も始まるんだ。
「おはようゴマ」
「……おはようメルさん」
「ゴマ、ちゃんと寝た? 目の下にクマ出来てるわよクマ」
「ほんとだー、あはは!」
ポコが笑う。——いつも通りの、ヘタレの顔をしてやがる。もちろん、3匹のチビたちもいない。
「おはよ、メル、じゅじゅ。ゴマ、ルナ、ユキ、ポコ。みんな元気そうね。さあ、朝ごはんの時間よ」
アイミ姉ちゃんが、ザラーっとカリカリを皿に入れる。
その瞬間、みんな皿に飛びついた。
——みんな元気。それでいいさ。
メシを食い終わったら、またメルさんの目を盗んで、ルナと一緒に冒険に出かけよう——!
♢
「母さん! どしたの? お客さん?」
その日の夜。
珍しく、ムーンさんが帰って来ている。ムーンさんの後ろには、見た事の無いネコが照れ臭そうにして俯いている。
「ただいま。みんな、新しい家族を紹介するわね」
「……はじめまして」
額に星のような模様のあるそのネコが小声で挨拶すると、ポコが大きな声で言った。
「わ! 綺麗なお姉さんだ!」
「バカ! 初対面でしょ!」
ユキがポコをネコパンチしながら叱る。
美女ネコは照れたらしく、ムーンさんの後ろに隠れた。ポコの言う通り、スラッとしてとても綺麗な体だった。
「住む場所もないみたいだから、ウチで一緒に暮らそうって事になったの。仲良くしてあげてね。名前はまだないんだけど……」
ボクはその美女ネコの姿を、ジーーッと見つめた。
恥ずかしそうにする美女ネコ。
よく見ると背中にも、星の形の模様がある。
「ゴマ兄ちゃん、名前付けたげてよ!」
「それいいな! ゴマならいい名前つけられそうだ」
「ああ……」
ルナとポコがそう言ってきたが、——言われるまでもなく、この美女ネコの名前、ボクはもう決めていたんだ。
「スピカ……ってのはどうだ」
——美女ネコは顔を少し赤らめながら、答えた。
「スピカ……。素敵な名前ですね。ありがとうございます」
「ああ、よろしくな……。この先も、ずっと、ずっとな」
「……え?」
「いや、何でもねえ」
温かい春の夜風が、新しい家族〝スピカ〟を迎えたボクらを、優しく包み込んだ——。
(The End?)
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