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第128話〜新時代への出発〜
しおりを挟む——3日後。
ボクらは、ボロボロになったニャンバラの都心部でただ一つ、綺麗に残ったホテルで開かれた、〝3国和平祝賀会〟に参加したんだ。
「Chutopia2120市長チュータ様、ニャガルタ代表プロキオン総理大臣、ニャルザル代表N・HQ最高司令官オレオ様、宜しくお願い致します」
ピシッとスーツを着こなしたグレさんがそう言うと、拍手が巻き起こり、3匹の各国代表が前に出て、マイクが手渡される。
まずはチュータさんからだ。
「私たちは、今後も太陽の教えに従い、私どもの住まう地球と調和し共生する道を歩んでまいります。その教えを胸に、今後はネコ族、ネズミ族……共に平和と発展を願い、悦びに満ちた世界を我々の子孫に残すよう、全力を尽くしてまいります。皆様、今後ともよろしくお願いいたします」
——拍手が巻き起こり、マイクがプロキオン総理大臣に手渡される。
「皆様、お集まり頂きありがとうございます。かつて我々は、利益を優先するあまり、地底の環境を汚染し、罪のない民を巻き込み醜い戦争を繰り返してしまいました。ネズミ族の世界を侵攻した際、ネズミたち、そしてネコ族の戦士たちは、我々の間違いに気付かせ、正しい道を示して下さいました。次なる太陽の時代では……、地球環境を守り、調和と共生し、恒久の平和を次の世代に残していく、そんな世界を皆様と築いて行こうと思っております」
巻き起こる拍手と歓声。
最後は、N・HQのオレオがマイクを手に取る。
「これは、歴史的瞬間だ。強い者のみが勝ち残る時代から、優しい心を持つ者が世界をリードする時代になった。我々は思い知った。いかなる科学技術をもってしても、この地球は支配出来ない事を。いかなる作戦をもってしても、心は支配出来ない事を。その様な事をせずとも、共に生き、力を合わせ、我々は悦びと共に生きていける事に気付かされた。我々は神と、勇敢なるネコの戦士たち、そして我々の罪を許してくれたネズミ族、ネコ族皆に感謝したい」
オレオは帽子を取り、頭を下げた
またも大きな拍手と歓声が起きると、最後にグレさんにマイクが手渡される。
「神様が我々に与えてくださっているように、我々も、与えあえば良いのです。そして、感謝すれば良いのです。それこそが、神様の望む世界です……。では、3者、握手を」
チュータさん、プロキオン総理大臣、オレオの3匹は、それぞれ手を取り合った。
「それでは、ネズミとネコの友好を祝して、乾杯!」
「かんぱーーーい‼︎」
♢
祝賀会が進む中、3国で色々とより良い政策についての話し合いや、取り決めが行われる。
ネズミの世界は——。
・ニャガルタ、ニャルザルのネコたちの受け入れ、ネズミ族と同等の権利の保障。
・軍備の廃絶。
・共通通貨チュールの廃止、感謝の証〝エイコン〟の再導入。
・〝太陽の教え〟〝7つの心〟に基づいた教育の充足。
ニャガルタは——。
・経済最優先の政策から、より自然と共生し、国民の負担も少ない政策へ。
・環境にやさしい製品の開発。
・共通通貨チュールの廃止。
・無職禁止の廃止。国民全員に最低限所得保障定額給付金が毎月支給されるように。
ニャルザルは——。
・個性、自由、平等に加え、〝心〟を大切にする教育の充足。
・ニャークリヤ・ウェポンの永久廃絶。
・科学技術は、環境に配慮し活用する。
・地底世界の復興に尽力する。
♢
「……医療も、より自然治癒力を活かしたものを目指します」
「ハールヤのジジイ! 来てたのか!」
ハールヤのジジイは、いつもの白いダボダボの服と違って、青いスーツをピシッと着ていたから、全然気付かなかった。
マサシと何か話していたらしい。マサシの奴、ハールヤのジジイにビョーキ治してもらえばいいんじゃねえか。腕は確かだぜ。
「マサシ兄ちゃん、ここにいたんだ。せっかくまた会えたんだから、一緒にご飯食べようよ」
「マサシ兄ちゃんーー! こっちこっちー!」
「ああ、チップくんにナッちゃん。じゃあ食べよう。バイキングだから、どれ食べようか迷っちゃうなあ……」
チップたちも、楽しそうにしてやがる。
——なら、ボクもパーティーを目一杯楽しむとするか!
ボクはテーブルに置いてあった、赤い飲み物をグイッと飲んだ。
「……おい何だこの飲み物。マタタビ入ってるじゃねえか」
「ゴマ、大人なら一杯飲もうぜ。おらっグビッ」
マーズさんが隣にあった同じ赤い飲み物を、一気に飲み干す。
「へっ、マーズさん、負けねえっすよ! グビグビグビ……」
「お、やるなゴマ。なら、もう一杯だ……!」
何だこれ。飲めば飲むほど、何だかユカイになる。フワッと体も軽くなった気がする。——ハハハ、最高だぜ‼︎
「ゴマ兄ちゃんってマタタビ水飲めるの?」
「知らんよ。ウチまだ未成年やから飲んだ事あらへん。アイツ、悪酔いしそうやなー」
♢
うぃーー……。飲みすぎた。何だかクラクラする。頭いてえ……。
「うぉえ……何だこれ、飲んでて気分いいと思ったら……。急に気持ち悪くなっちまった……」
——ボクの記憶は、ここで途切れた。
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