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第122話〜神々の談話・前〜
しおりを挟む「太陽さんの教え?」
『ほら、いらっしゃったようよ』
金色の光が集まっていく。——それは巨大なドラゴンのような姿に変化していった。
『私は古より生きとし生ける者を照らす者……太陽の神である』
その金色の光はドラゴン——といってもノアやニャンバリヴァイアのような姿とはまた違った、和の雰囲気を持つ神々しい、龍の姿になった。
——グレの体からは赤い光が放たれ、その光もまた同じようにドラゴンの姿に変えて行く。
『……我は、何を間違えたというのか……』
——嫉妬と競争の神、ミラ。その姿は、真っ赤な体躯の、コウモリのような巨大な羽を持つドラゴンだった。
次の瞬間、グレは力尽き——その場に倒れ伏せた。
「グレ……‼︎」
みんなグレさんの方に駆け寄る。
そんな、このまま死んじまうのかよ、グレさん——!
そうだ、ガイアちゃんと太陽の神様に頼めば、生き返らせてくれるかもしれねえ!
——振り返ったその時、ライムさんの叫び声が聞こえた。
「マーズ! 危ないっ!」
ガキィィィィン! と剣の音が響く。
「よく止めたな。まだ勝負は終わってはいないぞ」
「……そうだったな……!」
レアが、マーズさんに斬りかかっていた。
レア、テメエ、こんな時にまで……いい加減にしろよ……!
マーズさんとレアは剣を抜き、構え、睨み合った。——神様の前だろうが関係なく、真剣勝負を始めるつもりらしい。
それを見たガイアは、止めに入ろうとする。
『あなたたち、争うのはもう……』
『良い。話を進めるとしよう、ガイアよ』
巨大な龍の姿をした太陽の神様は、心配そうな目でマーズさんとレアを見ているガイアのチビ娘を、ひょいと背中に乗せた。
グレさんを復活させるよう頼もうと思ったが、神様たちの言葉にしがたい威光を前に、その時のボクは何も出来なかった。
『我が父なる太陽神様。地上世界の救済、ありがとうございます』
『我が愛しき娘、ガイアよ。こちらこそ、生命の星の守護、感謝しておるよ……。さあ、聞いておるか、嫉妬と競争の神ミラよ。そなたは、役割を終えた。天界へ帰るのだ』
ミラはその紅い体躯を輝かせながら、言い返す。
『……神は何の為に、我を遣わせたのだ。地底に住みしネコ族は、我が教え……嫉妬と競争を行った。その結果、戦い、争い、自然を蔑ろにした。我自身も、エゴに振り回され、天災を起こし、世界を滅ぼそうとした』
ミラの話を聞き終わったガイアは、ゆっくりと話し始めた。
『この宇宙は生成発展する事が神の意志。嫉妬と競争は、生命ある者の成長を加速させると、神はお考えになったのです』
太陽の神様も、優しい眼差しでミラを見ながら話す。
『そなたは、十分にその役割を果たしたのだ。嫉妬と競争のおかげで、地下文明は地上世界の何倍もの速さで発展したのだよ』
ミラは紅く目を光らせながら、言葉を返す。
『だが、嫉妬と競争はエゴになり、満たされる事はなく何処までも膨れ上がる。それは、災いと悲しみをもたらす。この事が、結果として分かったではないか。我は、どうすれば良かったのだ』
『だから、次は太陽神様の教えの時代なの。調和して共生していく……嫉妬と競争に代わる教えなのよ』
ガイアがそう返すと、ミラの目から光が消えた。
少し俯き、ため息をつくように力なく言った。
『……ならば、我が教えは……。これからは全く意味をなさなくなるというのか……』
太陽の神様は真っ直ぐにミラを見つめ、その問いに答える。
『憂うことはない。我が太陽の教え……調和と共生の心を持てば、嫉妬と競争の心は制御することができる。己の成長のために、その心を活かす事が出来るのだ』
『調和と、共生の心……だと?』
『調和と共生の心を持てば、他の者と競い蹴落とすのではなく、己自身と向き合い、成長する機会にする事が出来るのだ。だからミラ……、そなたの教えにも大切な意味がある。見るが良い。あの2匹の剣士を』
太陽の神様が振り向いた先には、マーズさんと、レア——2匹の誇り高き剣士が——全力の真剣勝負を繰り広げていた。
「はあ、はあ……。クソ、もう限界だ。俺の必殺の一撃、〝火燕流〟に賭けるぜ。……レア‼︎ 必ずお前を倒してみせる‼︎」
「……フン。マーズよ、その前に我が新技〝一閃・絶海〟で、もう一度、貴様を倒してくれる!」
2匹はしばらく睨み合っていたが——ついに、最後の一撃を繰り出した!
「うおおおおああああーーーー‼︎」
「ウォォォオオオオオーーーー‼︎」
ーーーー剣と剣のぶつかり合う音が、遠く遠く、響き渡った。
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