上 下
127 / 143

第120話〜〝Parfait〟〜

しおりを挟む
 
 〝パルフェ〟を使う——命を代償に。
 匹数が多いほど死ぬリスクは少なくなるというが、それでも誰が死んじまうかも分からねえ。

 だが、ここに来て思った事がある。

 ——みんな一緒なら、怖くない。

 もし、ボクが死んじまったら、アイミ姉ちゃんにももう会えなくなるし、きっと悲しませちまう。
 だが、——世界のためだ。
 願わくは、誰も死なないで欲しい。ボクはただただ、運命を信じる事にした。


「やるんっすね、ソールさん!」

「ああ。行くぞ! ムーン、ヴィーナス、マーキュリー、マーズ。フォボス、ダイモス。デネブ、リゲル、ライム。そして、ゴマくん、スピカさん、ポコくん! 全員の力を、この菊の紋章に!」


 ソールさんは、〝菊花の剣〟を大地に突き立てた。
 地面に、菊の花の形をした巨大な紋章が現れる。


 ——さあ後は、〝パルフェ〟を発動するだけだ。


 ⭐︎

 パルフェ——
 神を裁く唯一の魔法。巻き込まれた者は即死し、使用者も反動で大ダメージを受ける。使用者の数が多いほど、反動は少なくなる。

 ⭐︎


「ふん、助けに来てやった」


 誰かが、ボクらの前に立ちはだかった。
 ——あいつは。あの時マーズさんを打ち負かした謎の剣士、レア!
 何で、こんな時に現れやがるんだ!


「レア……レアァァァァア‼︎」


 マーズさんが叫びながら、レアの方へ駆けて行く。
 ——ダメだ、マーズさんは完全にレアに気を取られている!
 すぐにソールさんは、レアの前に立ち塞がる。


「マーズ! 今はこっちに集中しろ!」

「ソール! 頼む! レアと戦わせてくれ!   レアは、俺がここで必ず討つ‼︎    この一瞬でやってやる!」

「マーズ!    そんな事してる場合じゃないでしょ!」


 まずい、ここにきてボクらのチームワークが乱れ始めたぞ。
 マーズさん、ダメだ! 今は全員で〝パルフェ〟を発動するために集中しなきゃいけねえ時なんだ!


「行くぞレア……!    今の俺には新必殺技〝火燕流かえんりゅう〟がある。……あの化け物が来る前に決めてやる!」

「愚か者め。……だからお前は我に勝てぬのだ」


 レアは剣も抜かずにそうつぶやくと、迫り来る狂獣グレを睨んだ。


「マーズさん!    今は、ボクらの本当の敵を……、悪神ミラを討つんっすよ!」


 ボクもマーズさんの元へ駆け寄り、頼み込んだ。
 マーズさんはしばらく剣を構えたままじっとしていたが、ため息を一つついて腕を下ろした。


「……そうだな。すまない、みんな。大事な事を忘れていた。……レアよ、力を貸してくれ。頼む。この通りだ」


 マーズさんは剣をしまい、レアに向かって頭を下げた。——ボクらの思い、伝わったようだ。
 レアは少しだけ間を置き、返事した。


「……元よりそのつもりだ。だが、お前から挑んだだ。忘れるなよ?」

「……ああ! ありがとう!」


 ——レアも加わり、今度こそ〝パルフェ〟を——‼︎


「間に合った! ライム様! 俺たちも力になります!」


 な……⁉︎    今度は、誰だ⁉︎


「エンケラドス、ディオネ、テティス、ミマス! やれるな?」

「「「「応っ!」」」」

「〝サターン〟! お前たちも来てくれたのか!」


 ——それだけじゃなく。


「私たちもこの世界を守るため……力になります。イオ、エウロパ、ガニメデ。覚悟はいいですね?」

「「「おうっ!」」」

「〝大魔導士団ジュピター〟!」


 ——さらに。
 ボクの隣にワープゲートが現れ——。

 ミランダと、プレアデス、そして何とチップが姿を現した。


「チップ、お前! 何で……⁉︎」

「僕だって、みんなの住む世界の平和を守りたい。ミランダにお願いしてきたんだ」

『あたしだって、仲間外れにしないでね! みんなで世界のために、戦いましょ!』


 プレアデスも笑いながら、ボクの肩を叩いて言った。


「絶対、この世界を守るんだ。新しい時代を迎えるために、ね!」


 そして何と。
 着陸したニャルザル軍の戦闘機から、1匹のネコが駆け寄ってくる。——N・ニャルザルヘッドHQクォーターズ最高司令官、オレオだ。


「我も力になろう。我々は世界を終わらせるために、戦ってきたのではない」


 オレオはそう言って、ボクらに向かい敬礼した。

 ——今までに戦ってきた奴ら——敵味方関係なく、最後の戦いに命をかけてくれている。
 時間が無い。ボクは最後に、近くにいるポコに声をかけた。


「ポコ! お前、せっかく生き延びたんだ。ユキに会う前に死ぬなよ」

「ゴマ、お前こそな」


 ——周りの景色が、歪み始める。

 ニャンバラの街は目の前から消えて無くなり、ボクの周りの景色は、青やら黄色やら紫やら、近いやら遠いやら、どっちが上か下か分からないような、〝異空間〟へと変貌してしまった。

 同時に狂獣グレも、変貌を始めた——。

 巨大な蜘蛛のような脚が何本も生え、何処が頭か胴体が分からねえようないびつな体全体に、いくつもの笑った顔、幸せそうな顔、怒った顔、悲しげな顔がムクムクと現れ始めた。


 ⭐︎

 全てを終わらせる者 グレ

  Lv.⁇?
 混沌の化身

 属性……不明

 体力  解析不可
 魔力  解析不可
 攻撃力  解析不可
 防御力  解析不可
 敏捷性 解析不可
 魔法力 解析不可

 耐性……不明
 弱点……不明

 超必殺……
 不明

 ⭐︎


 不気味という言葉では表しきれねえほどの化け物を前に、ソールさんは叫ぶ。


「行くぞ!    太陽の神より賜りし、星獣戦隊コスモレンジャー・最終奥義……」


 ————パ  ル  フ  ェ ————‼︎
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...