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第120話〜〝Parfait〟〜
しおりを挟む〝パルフェ〟を使う——命を代償に。
匹数が多いほど死ぬリスクは少なくなるというが、それでも誰が死んじまうかも分からねえ。
だが、ここに来て思った事がある。
——みんな一緒なら、怖くない。
もし、ボクが死んじまったら、アイミ姉ちゃんにももう会えなくなるし、きっと悲しませちまう。
だが、——世界のためだ。
願わくは、誰も死なないで欲しい。ボクはただただ、運命を信じる事にした。
「やるんっすね、ソールさん!」
「ああ。行くぞ! ムーン、ヴィーナス、マーキュリー、マーズ。フォボス、ダイモス。デネブ、リゲル、ライム。そして、ゴマくん、スピカさん、ポコくん! 全員の力を、この菊の紋章に!」
ソールさんは、〝菊花の剣〟を大地に突き立てた。
地面に、菊の花の形をした巨大な紋章が現れる。
——さあ後は、〝パルフェ〟を発動するだけだ。
⭐︎
パルフェ——
神を裁く唯一の魔法。巻き込まれた者は即死し、使用者も反動で大ダメージを受ける。使用者の数が多いほど、反動は少なくなる。
⭐︎
「ふん、助けに来てやった」
誰かが、ボクらの前に立ちはだかった。
——あいつは。あの時マーズさんを打ち負かした謎の剣士、レア!
何で、こんな時に現れやがるんだ!
「レア……レアァァァァア‼︎」
マーズさんが叫びながら、レアの方へ駆けて行く。
——ダメだ、マーズさんは完全にレアに気を取られている!
すぐにソールさんは、レアの前に立ち塞がる。
「マーズ! 今はこっちに集中しろ!」
「ソール! 頼む! レアと戦わせてくれ! レアは、俺がここで必ず討つ‼︎ この一瞬でやってやる!」
「マーズ! そんな事してる場合じゃないでしょ!」
まずい、ここにきてボクらのチームワークが乱れ始めたぞ。
マーズさん、ダメだ! 今は全員で〝パルフェ〟を発動するために集中しなきゃいけねえ時なんだ!
「行くぞレア……! 今の俺には新必殺技〝火燕流〟がある。……あの化け物が来る前に決めてやる!」
「愚か者め。……だからお前は我に勝てぬのだ」
レアは剣も抜かずにそうつぶやくと、迫り来る狂獣グレを睨んだ。
「マーズさん! 今は、ボクらの本当の敵を……、悪神ミラを討つんっすよ!」
ボクもマーズさんの元へ駆け寄り、頼み込んだ。
マーズさんはしばらく剣を構えたままじっとしていたが、ため息を一つついて腕を下ろした。
「……そうだな。すまない、みんな。大事な事を忘れていた。……レアよ、力を貸してくれ。頼む。この通りだ」
マーズさんは剣をしまい、レアに向かって頭を下げた。——ボクらの思い、伝わったようだ。
レアは少しだけ間を置き、返事した。
「……元よりそのつもりだ。だが、お前から挑んだこの勝負はお預けだ。忘れるなよ?」
「……ああ! ありがとう!」
——レアも加わり、今度こそ〝パルフェ〟を——‼︎
「間に合った! ライム様! 俺たちも力になります!」
な……⁉︎ 今度は、誰だ⁉︎
「エンケラドス、ディオネ、テティス、ミマス! やれるな?」
「「「「応っ!」」」」
「〝サターン〟! お前たちも来てくれたのか!」
——それだけじゃなく。
「私たちもこの世界を守るため……力になります。イオ、エウロパ、ガニメデ。覚悟はいいですね?」
「「「おうっ!」」」
「〝大魔導士団ジュピター〟!」
——さらに。
ボクの隣にワープゲートが現れ——。
ミランダと、プレアデス、そして何とチップが姿を現した。
「チップ、お前! 何で……⁉︎」
「僕だって、みんなの住む世界の平和を守りたい。ミランダにお願いしてきたんだ」
『あたしだって、仲間外れにしないでね! みんなで世界のために、戦いましょ!』
プレアデスも笑いながら、ボクの肩を叩いて言った。
「絶対、この世界を守るんだ。新しい時代を迎えるために、ね!」
そして何と。
着陸したニャルザル軍の戦闘機から、1匹のネコが駆け寄ってくる。——N・HQ最高司令官、オレオだ。
「我も力になろう。我々は世界を終わらせるために、戦ってきたのではない」
オレオはそう言って、ボクらに向かい敬礼した。
——今までに戦ってきた奴ら——敵味方関係なく、最後の戦いに命をかけてくれている。
時間が無い。ボクは最後に、近くにいるポコに声をかけた。
「ポコ! お前、せっかく生き延びたんだ。ユキに会う前に死ぬなよ」
「ゴマ、お前こそな」
——周りの景色が、歪み始める。
ニャンバラの街は目の前から消えて無くなり、ボクの周りの景色は、青やら黄色やら紫やら、近いやら遠いやら、どっちが上か下か分からないような、〝異空間〟へと変貌してしまった。
同時に狂獣グレも、変貌を始めた——。
巨大な蜘蛛のような脚が何本も生え、何処が頭か胴体が分からねえような歪な体全体に、いくつもの笑った顔、幸せそうな顔、怒った顔、悲しげな顔がムクムクと現れ始めた。
⭐︎
全てを終わらせる者 グレ
Lv.⁇?
混沌の化身
属性……不明
体力 解析不可
魔力 解析不可
攻撃力 解析不可
防御力 解析不可
敏捷性 解析不可
魔法力 解析不可
耐性……不明
弱点……不明
超必殺……
不明
⭐︎
不気味という言葉では表しきれねえほどの化け物を前に、ソールさんは叫ぶ。
「行くぞ! 太陽の神より賜りし、星獣戦隊コスモレンジャー・最終奥義……」
————パ ル フ ェ ————‼︎
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