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第119話〜決断の時〜

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 ニャルザル軍の戦闘機から、白く光る球が発射された。
 ——恐るべき兵器、〝ニャークリヤ・ボム〟だ。

 もしこれが爆発すると、ここら一帯は一瞬で焼け野原になってしまう。
 それだけじゃねえ。何年も何十年も、放射能とやらが残留し、ボクらの住むチキューが汚染され続ける事になるんだ——!


「ヤメヨ、愚カナル民ヨ」


 ——ガイアドラゴンの声が聞こえたと思ったら、突如、超星機神グランガイアは分解を始め、スター・マジンガ・改はガイアドラゴンの背中から降ろされてしまった。
 レオパルムキャノンも、ガイアドラゴンから切り離された。


「ガイアドラゴン‼︎」


 その後ガイアドラゴンは単身、ニャークリヤ・ボムに突っ込んで行った——!

 ——辺りが白い閃光に包まれる——。


「ガイアドラゴンーーーーッ‼︎」

「みんな、目を瞑れ! 耳を塞げ‼︎    ……マジンガ! 俺たちを守ってくれぇぇぇー‼︎」


 ニャークリヤ・ボムが炸裂する——‼︎
 コクピットにいる13匹全員、丸くなって床に伏せた。


「火ヲ以ッテ、火ヲ制シテハナラヌ。愚カ者……!」


 ガイアドラゴンの声。助かった——のか?
 ボクは恐る恐る体を起こし、前方を見た。


「……おいみんな! ノアが、助けてくれたみてえだ!」


 何と、最初に戦った厄災竜カラミティドラゴン——蒼天竜ノアが飛来して虹色のバリアを展開し、スター・マジンガ・改、レオパルムキャノン、ガイアドラゴン、そして狂獣グレを守ってくれたようだ。
 周りを見ても、以前のままの景色だ。恐らくニャークリヤ・ボムのエネルギーも、ノアの虹色のバリアがかき消してくれたのだろう。


「感謝スル、我ガ同胞ヨ……! サア太陽ノ子タチヨ。モウ一度我ト合体シ、ミラニ憑カレシ者ヲ止メルノダ」


 蒼天竜ノアは去って行き、ニャルザル軍の戦闘機たちも撤退して行った。


「よし! 超星合体‼︎    今度こそ、グレを止めるぞ!」


 ——再び、スター・マジンガ・改はガイアドラゴンの背中に入っていき、レオパルムキャノンも胸部に装着される。
 合体が完了すると、再び街へ向かおうとする狂獣グレに狙いを定めた。
 全員で再び、最大最強の技を叫ぶ。


「グランガイア・メテオスウォーム‼︎」


 無数のレーザー、ミサイルの砲撃が、狂獣グレを襲う——!
 凄まじい閃光と白煙に包まれたグレは、地面に倒れ伏せ、動きを止めた。


「……やはり、グレだけがダメージを受けている。ミラ本体は全く効いてないようだ……」


 ライムさんは悲しげな顔をしてそう言った。
 狂獣グレは倒れながら悶え苦しみながらも、顔だけが笑っている……。その姿は、とても不気味だった。


「太陽ノ子孫タチヨ。太陽神ヨリ賜リシ秘技……〝パルフェ〟ヲ使ウノダ。……今シカナイゾ」


 〝パルフェ〟——それは、最後の手段だ。
 使うと、グレさんは死んでしまう。
 ボクらも、誰かが死ぬかも知れねえんだ。

 ——だが、ミラは太陽の神の話に聞く耳を持たなかった。もう、完全に狂ってしまっている。
 グランガイア・メテオスウォームも効かない。
 もはや〝パルフェ〟を使うしかなくなったんだ。


「な、何? パルフェって」

「聞いてないぞ! そんな技」


 そうだ。この事を知ってるのはソールさんと、ボクだけなんだ。——時間も無い。みんな焦りと混乱で、コクピットはカオス状態だ。
 ソールさんは何とかみんなを落ち着け、〝パルフェ〟について説明した。


「……な! 使うと俺たちも死ぬってのか⁉︎」

「まだ大丈夫でしょ⁉︎    話して分かるなら、説得しましょうよ!」


 〝パルフェ〟を使うと、グレさんは死ぬ——。
 勝利の代償に、親友を失う。その事を知ったライムさんは、床に手をついて考え込んでしまった。
 狂獣グレは、泡を吹き白目を剥きながら笑い続けている。
 ダメ元でソールさんは、もう一度説得を試みた。


「ミラ様! 世界のためにならぬ事はおやめ下さい! 天界へお帰りになって下さい……!」


 しかし、変わらずに不気味な笑いを浮かべ続けるだけだった。
 狂獣グレは、少しずつ黒いオーラを纏っていく——。

 ボクはライムさんに言った。


「ライムさん、世界を救うには、パルフェを使うしかないんっすよ……」


 ——ライムさんから返事は無い。床に手をついたまま、目を瞑り、俯くライムさん。


 何を考えているのだろうか。思い出しているのだろうか、グレさんとの事を。
 ボクには親友ってのはいねえし、ライムさんの気持ちも全部は分からねえ。
 だが、身近な大切な存在を失うってのは——一生その悲しみを背負うって事なのは分かる。

 親友を失い——ボクらも死ぬリスクを取って平和を取り戻すか、このまま親友は狂った神に弄ばれ、世界が滅びるのをただ見ているのか。

 ——死ぬって、どんな感じなんだろうな。
 もしボクらが〝パルフェ〟を使った結果、誰かが死んじまえば、それを悲しむ者は、必ずいるんだ。

 この瞬間に命をかけるほど、ボクは、みんなは、悔いなく生きてきただろうか? まだまだやりてえ事、やり残した事、たくさんあるんじゃねえのか。
 自分が精一杯生きる姿、見せてえと思える存在の事を思うと——。
 簡単には、踏み切れねえ。あのライムさんだって、踏み切れねえんだ。

 クソ、ボクもそんな覚悟、全然出来てねえ。ほかのみんなだってそうかも知れねえ。こんな思いのまま死んだとして、後に残る世界は本当に幸せな世界なのかよ——!

 ——狂獣グレが目覚めてしまう。時間が無い……!


「グレは、私の夢の為なら、命を捨ててもいいと言った……」


 ライムさんは目を見開き、そう言って立ち上がった。

 ——時を同じくして、再び狂獣グレが起き上がる。
 黒いオーラを纏い雄叫びをあげ、笑いながらゆっくりとこっちに向かってきた。
 クソ……時間切れか‼︎


「パルフェヲ使エ‼︎」


 ガイアドラゴンの声が聞こえると同時に、ボクらは瞬時にコクピットから外の広場へと、ワープさせられてしまった。

 覚悟をしなきゃならねえ時が、来たようだ。
 ボクは頭の中の考えを必死で振り払った。
 考えるな。運命を信じろ——!


「すまなかった。この悪神から我々の故郷、ニャンバラを守ってくれ……! パルフェを使え‼︎」


 ライムさんも覚悟を決めたらしく、そう言った。
 ソールさんは、最後にライムさんに確かめる。


「本当に、いいのか?」

「グレの奴も、覚悟はしてる。ならば私もその覚悟を持ち、応えるんだ。世界のため」


 ライムさんの目に迷いはなかった。
 他のみんなも、迫り来るグレの姿を、しっかりと見ていた。
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