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第117話〜神技伝授〜

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「もう一度神殿に行き、ミラに祈るのだ。新たな時代に新たな教えと共に我々が生きる事の、お許しを得られるよう……」

「ライムさん、分かった。もう一度ミラと話せる可能性があるならば、それに賭けよう。行こう、神殿へ!」


 ボクらは再び、あの不気味なネコの神の像のある神殿へ行く事になった。ダメ元でも、話せばミラも分かってくれるかも知れねえ。
 グレさんはあれから、ずっと祈りを捧げているらしい。

 出発準備が整い、ボクはミランダを呼ぼうとした。
 その時——。


「誰だ?    誰か、僕を呼んでる?」


 ソールさんが周りを見渡しながら言った。
 が、他にソールさんを呼んでるネコは誰もいない。
 マーズさんは不審がる。


「ん? 何言ってんだソール、早く行くぞ!」

「いや、ちょっと待ってくれ!」


 ——おい待てよ。ボクにも何か、聞こえる。
 その声は耳にではなく、ミランダと同じように頭の中に響いてくる感じだ。


『ソール……我が子孫よ……』


 ボクは周りを見渡した。が、声の主はどこにもいない。
 声は続く。


『愛する我が子孫、ソールよ……。ようやく我が声、届いたか……。どうか、ミラに伝えてくれ……。そなたの役割は、終わったのだ、と……。天界に帰って来るのだ、と……』

「誰かが……、ミラに伝える事がある、と……」

「何言ってんのソール、頭でも打ったの⁉︎」

「誰もいないじゃないか! 何も聞こえないぜ?」


 どうやら、ソールさんとボク以外、その声は聞こえないようだ。


「ソールさん、ボクにも聞こえやす!」

「ゴマくん!    共に耳を傾けよう!」


 部屋にいるみんな、ボクらを見て頭にハテナマークを浮かばせている。ライムさんは、部屋の片隅に座り、ひたすら黙っていた。
 そんな様子を気にせず、ボクはただただ謎の声に耳を傾けた。


『私は古より生きとし生ける者を照らす者……太陽の神である……。ソール、我が子孫よ。聞いておくれ』

「ぼ、僕が、太陽の神様の子孫……?」

『ミラは我が同志……。我が声を伝えてくれ。そなたの役割は終わったのだ、と……』


 ソールさんはついに、太陽の神様から直々にソールさんが〝太陽神の子孫〟である事を伝えられたようだ。
 ——つっても、どこまでが本当の事かは知らねえが。


『もし、ミラが我が声の聞く耳を持たぬなら……神技〝パルフェ〟を……お主とその仲間たちに授ける。この神技で全員の力を一つにすれば、ミラの力を封じる事が出来る』


 ——パルフェ? 何だそりゃ。
 ミラの力を封じる神技……?


「しかし……太陽神様。あの時、どんな攻撃を当てても、ミラ自身にはダメージは及ばなかった……。依り代のグレだけが、どんどん傷付いていきました……」

「そ、そうだ! そのパルフェとやら、本当に効くのかよ!」


 ボクもソールさんも、太陽の神様に問うてみた。


『〝パルフェ〟は、唯一、神を裁く事の出来る秘技である。しかしそれは、もはや最後の手段。使用すると、技を受けた者には命の終焉が訪れ、使用者もその反動で、命が絶たれるやもしれぬ』

「何だと……⁉︎」


 〝パルフェ〟——。
 これを使うと、ミラの力は封じられるが、グレも、ボクらも死ぬって事か……⁉︎

『我は地上世界の救済に行かねばならぬ。どうか我に代わって、ミラに我が声を伝えて欲しい。出来るなら〝パルフェ〟を使う事なく、この災いを終わらせてもらいたい……。頼んだぞ、我が子孫、ソールよ』

「……分かりました。ありがとうございます」


 ——声が聞こえなくなった。


「おい、ソール! いつまでボーッとしてんだ、神殿に行くぞ!」

「そうよ!」


 ——絶対、〝パルフェ〟は使わせねえ。
 太陽の神様の声をしっかり、ミラに届けてやる!

 プレアデスにはもう一度避難所に残ってもらい、ボクらはワープゲートをくぐり、神殿へと出発した。
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