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第95話〜新たなる守護神〜
しおりを挟む愛と優しさを示す、〝慈愛〟の試練。
そうか——襲い来る敵と精一杯戦うスピカに、今度はボクは力を貸した。そして自分自身の闇と打ち勝とうとするスピカの勝利を願い、見守ってやった。その結果、スピカは試練をクリアできたんだ。
愛だとか優しさだなんて言われちまうと、くすぐったくてしょうがねえ。ボクは、ボクの良心に従ったまでだ。
ひとまず、ボクらは試練をクリアする事が出来たんだ。
気になるのは、〝守護神〟とやらだ。
「我ら守護神は、いつでもそなたと共にある……」
ボクは、金色の光に尋ねてみた。
「おい、守護神さんよ。なら、ボクらもソールさんたちと同じように、守護神マシンを呼び出せるってのか⁉︎」
「えー! 凄い、凄いやんウチら! やったやん!」
……ところが、守護神イーリスと守護神アストライオスが出した答えは。
「いいえ、まだ終わりではありません。最後の試練があります……」
「3匹で力を合わせて、悪しき幻影を浄化するのだ」
声が聞こえた直後、奥の祭壇の扉が開いた。
——そこは、あの時の戦いのステージ……。
「ゴマ、よそ見したらあかん! 来るで!」
祭壇の扉をくぐった先は、ライムさんと戦った時と全く同じ光景——洞窟の中の火山基地、燃え滾る溶岩の上の岩場だった。
——ライムさんの幻影が、崖の上に姿を現す。
「ライムさん……! 今、ボクらがあんたの邪心を! 完全に解き放ってやる!」
「行こか、ゴマ! 今のウチらになら、勝てるはずや!」
ボクは目を瞑り、ライムさんの幻影に気を集中した。
ライム幻影(悔恨の念) Lv.410
幻影
属性……火、陰
体力 9999
魔力 9999
攻撃力 9999
防御力 9999
敏捷性 9999
耐性……全属性
弱点……無し
必殺……
コピー
イラプション
超必殺……
エクスプロージョン
「あの面倒な転身封印光線は、撃って来ねえらしい。が、こっちの技をコピーしやがるのはあの時と同じだ。気をつけろよ!」
「うん!」
ボクとスピカは、ライムさんの幻影の熾烈な攻撃——数倍に増幅されたボクらの必殺技の数々——をかわしながら、少しずつボクらの攻撃も当てていく。
が、奴のHPは、なかなか減っていかねえ。
「クソ……タフな野郎だ。負けはしねえが、勝つ事もできねえ。もどかしいぜ!」
「ゴマの技でもあかんか! どっちかというと戦っててイライラしてまうやつやな」
必死に攻撃を繰り出していると——突然どこからか真っ黒な影が現れ、ライムさんの幻影に凄まじい斬撃を浴びせた。突然の不意打ちに、ひるむライムさんの幻影。直後、黒い影はすぐに姿を消した。
「何だ、今のは⁉︎」
ひるんだ隙に、ボクらはライムさんの幻影を攻撃した。すると合いの手を打つように、再び黒い影が現れライムさんの幻影に斬撃を浴びせ、素早くまたどこかへ身を隠す。
「おい……! さっきから誰だ! 姿見せやがれ!」
「あかん、動きが速すぎて姿がよお見えへん!」
「だがあの黒い奴、めちゃくちゃ強えぞ。HPがゴリゴリ削れてやがる。これなら、やれるかも知れねえ!」
ボクらが再び攻撃した直後、黒い影はライムさんの幻影に超高速の斬撃を浴びせ、ひるませた。
直後黒い影は、今だ、やれ! と言わんばかりに、持っている剣を素早くブンと振り、また姿を消す。
「チャンスだ! 行くぞスピカ!」
「うん! 一気にやってまうで!」
ボクとスピカは、ヨタついているライムさんの幻影に狙いを定めた。
「ギガ・ダークブレイク‼︎」
「ニャリバー・スラッシュ‼︎」
ボクらの必殺技が炸裂し、ライムさんの幻影を貫いた。
紫色の光をキラキラと散らしながら、ライムさんの幻影はその姿を消していく。
——気付くと、溶岩のステージは消え、ボクとスピカは冷たい煉瓦の床の上に寝転がっていた。
どこからか、声が聞こえる。
「見事だ。3匹の勇者よ。アストライオス、イーリス、タナトス……この時より我々は正式に、そなたらの守護神となろう。力を必要とせし時は、いつでも我々の名を呼ぶが良い」
真っ暗な天井から金色の光が現れ、3つに分かれたかと思うと、1つはボクに向かって飛来し、ボクは光に包まれた。
1つはスピカの元に。1つは、離れた岩陰の方へ飛んでいった。
「……なあ、やっぱりもう1匹おるみたいやで」
「恥ずかしがってねえで、出てくりゃいいのにな。……んじゃま、守護神さん、アストライオスだっけ。ありがとな!」
「イーリスさん、おおきに! これからよろしく頼みますぅ!」
こうしてボクとスピカは、試練を突破し、守護神の加護を得る事が出来たんだ。
結局、真っ黒い影の正体は分からねえまま、ボクとスピカは来た道を引き返した。
セーブポイントの泉で傷を癒し、静まり返った洞窟を、出口の方へと戻って行く。
「守護神もゲットした事だし。洞窟から出てさっさと住処に帰ってひと眠りしようぜ。さ、そろそろ出口だ」
「ゲットってあんたなあ。……ん? 何や凄い音してへん? 外から」
「あ?」
洞窟の出口に近づくにつれ、外からゴーゴーと音が聴こえる。何だ、何が起きてるんだ?
出口に辿り着き、ボクは外の様子を見るべく出口から顔を出した。——が。
「ぐわあ‼︎ 何だよこれは‼︎」
外は、猛烈な嵐が吹き荒れていた。いや、嵐どころじゃねえ。
根っこから折れた木が、飛んでる。ニンゲンの作った看板やら、何かの屋根やらガラクタやらが、猛烈な風にあおられ飛び回っている。
横殴りの雨粒が、ボクの頬を激しく叩きつけた。ボクはすぐに顔を引っ込めた。
「ダメだ、帰れねえぞこれ」
「えげつない嵐やな……地上ではこんな風吹く事あんねんな」
「いや、こんな嵐初めてだ。とりあえずミランダ呼ぶぞ。ワープして住処に帰ろう。メルさんたちが心配だ」
「そやな!」
心の中で念じるとすぐに、宙に現れた虹色の光からミランダが姿を現した。
「おいミランダ、この嵐……。どういう事だよ」
「お疲れ様! すごい嵐よね……。何でこんな嵐が起きたかは、あたしも分からないの。とりあえず帰る?」
「ああ。アイミ姉ちゃんとこのガレージまで頼むぜ。こんな雨風の中じゃ帰れねえ」
ボクらはワープゲートをくぐり、住処のガレージへと無事帰る事が出来た。
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