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第78話〜5つの守護〜
しおりを挟む「ゴマ! スピカちゃん! こっちよ!」
——黄金色の光が飛んで来て、ボクとスピカを包み込む。そのまま再び、ボクらは崖の上に舞い戻る事が出来た。ミランダの魔法だ。間一髪、ボクらは火の海地獄への転落を免れた。
「ミランダ、ナイスだ!」
「はぁ、助かったわあ……」
「あたしだって、力になるから。絶対諦めないでね‼︎」
崖の上ではヴィーナスさんが必死に魔法でバリアを張り、ルナ、メルさん、じゅじゅさん、ユキを守ってくれていた。
ミランダはそこに、黄金色の結界を張り、重ねる。これでルナたちも大丈夫だ。安心して戦いに集中できる。
「ふん、やはりしぶといな。……ゴマ、といったか」
「……はぁ、はぁ……。やっとボクの名前を覚えたな、ライムのこん畜生め!」
ミランダは続いて、倒れているソールさん、ムーンさん、マーズさん、マーキュリーさんに癒しの魔法をかけていった。
「みんな、諦めないで!」
「……ありがとう。そうだ。俺たちは、まだやれるんだ!」
ソールさんたちは再び立ち上がり、態勢を整えていく。
「……ライムには罪を償ってもらい、必ず、家族としてもう一度、迎え入れます」
——ムーンさんのその声がライムに聞こえたのだろうか。ライムの周りを覆う炎のオーラから放たれる魔力が、一瞬小さくなったのを感じた。やはり、何か迷いがある。ライムはまだ完全に〝悪〟に染まってはいない。ボクはそう直感した。
そんな事に気づいていないであろうソールさんは、剣を掲げ叫ぶ。
「五芒星を2つ描け! ペンタルファ・バースト・Ωだ‼︎」
「おう‼︎」
地面に描かれた五芒星の先端に、ソールさん、ムーンさん、マーズさん、マーキュリーさん、ヴィーナスさんが立ち、魔力を溜め始める。
ミランダは、身体を虹色に輝かせながら叫んだ。
「ゴマ、スピカちゃん、フォボスくんも! ……あと、ルナくぅーーーーん‼︎」
「ミランダ! 兄ちゃん‼︎ すぐ行く!」
ミランダに呼ばれたルナは、飛び交う火の粉をかい潜り、ボクらのところに駆けつけた。
——あの時と同じように、地面にもう一つ五芒星が描かれる。
ボク、ルナ、スピカ、フォボスさん、ミランダで、地面に描かれた2つ目の五芒星の先端に立つ。
「これで、決めてやる——!」
2つの五芒星から、凄まじい魔力が溢れ出る——!
「みんな行くぞ!」
「おう‼︎」
「ペンタルファ・バースト・Ω――――‼︎」
虹色に輝く光のカーテンが、ライムに迫る――‼︎
「無駄だぁぁぁ! エクスプロージョン‼︎」
ライムも、全魔力を込めた超必殺技を放った。
虹色の光と赤黒い光がぶつかり、拮抗する‼︎
――凄まじい大爆発。ボクらは全員吹き飛ばされた。ボクは壁に身体を激しく打ち付けられ、地面に落下した。
「うわああああ‼︎」
「ぐわぁあああああああああーーーー‼︎」
黒煙と靄が立ち込め、前が見えない。すぐに凄まじい痛みが全身を襲った。
朦朧とする意識を何とか持たせ、熱い煙の中、目を凝らす。
そこには、――全く無傷のライムが、不気味な笑みを浮かべながらこっちを見ていた。
「そのような技は、今の私には通用しない。ハハハハ」
ライムはそう言って笑いながら、紫色の光線をボクに浴びせてきた。——まずい! この光線は!
「ゴマ、危ない! 避けて!」
「うあ⁉︎ 間に合わね……って、おい! まさか!」
それはデネブが放ってきたのと同じ、転身封じの光線だった。
あっという間に、ボクの転身は解けてしまった。
「ゴマくん!」
「クソ! ……聖なる星の光よ、我に愛の力を!」
——やはり、何の反応も無い。
ミランダは必死に術を解く魔法をかけるが、うんともすんとも言わない。
ボクが転身できないということは、ほとんど負けが確定したようなものだ。だが諦めちゃダメだ。1%でも望みがあるなら、それに賭けるしかねえ……!
「終わりだ。消し炭となれ。エクスプロージョン!」
そんな思いを嘲笑うかのように、再び超高温の衝撃波が眼前に迫り、瞬く間にボクらを飲み込んだ。
「きゃああああ!」
「ぐああ! クソ、ここまでか……!」
——あれ?
……全く熱さも痛みも、感じない。
顔を上げると……白、紫、赤、水色、金色の5つの光が、熱波をかき消しボクらを守ってくれている。
「……守護神たちが! 我々を守って下さったのだ!」
5つの光は、何かを形作り始めた。
「見るんだ! 我らが神がその御姿を見せてくださった!」
——ボクは神様なんか信じてはいなかったが、その光は、それぞれの神様の姿へと変貌していったんだ。
太陽の守護神アポロ、月の守護神アルテミス、火星の守護神アレス、水星の守護神ヘルメス、金星の守護神アフロディーテ。
神様たちは煌びやかな光を放ち、ソールさん、ムーンさん、マーズさん、マーキュリーさん、ヴィーナスさんに、力を与えていく。
「……行くぞみんな!」
「おう‼︎」
「我が守護神の力、解放せよ!」
ボクは祈りながらその様子を見ていたが、さっきから地面が時折、揺れている事に気付いていた。
——ほら、またゴゴゴゴ、と音を立てて——だんだん揺れが激しくなって来ている。一体、何が起きてるというのだ。
「フォボスさん、何なんださっきからこの地震はよ?」
「まずい。これは……、噴火の前兆だ。いつまでも、この場所にはいられないぞ」
「ボクらの戦いのせいじゃねえのか?」
「いや、違う。間違いなく火山性の地震だ。もし噴火すれば……この基地は、崩壊してしまうかもしれない!」
次の瞬間、ソールさんたちは、全守護神の力を込めた超必殺技を放った——‼︎
「「「「「超必殺! ――プラネット・砲‼︎」」」」」
白く眩い閃光がライムに直撃すると、その反動で起きた衝撃波に、ボクらは巻き込まれた。
「うわぁぁああ! フォボスさん‼︎」
「兄ちゃん‼︎」
「ゴマ! 大丈夫か‼︎」
神々の姿は消えていた。視界に入ったのは——攻撃の反動で地面に倒れているソールさんたち5匹と……。
全く無傷の、ライムの姿だった。
「ダメだ……。ダメなのか……!」
「つ、強過ぎる……」
再び、地面が激しく揺れる。溶岩の海が、少しずつ上の方にせり上がって来ている気がする。
——ボクは覚悟を決め、立ち上がった。
「星光団、この程度だったか。……エクスプロージョン‼︎」
「クソ‼︎ 終わりだ――――‼︎」
ライム、ライム……‼︎ 何でテメエはそこまで……!
「ライムてめえやめろーーーー‼︎」
「ゴマくん⁉︎ やめるんだ! 転身してないのに無茶だ‼︎」
ボクは、閃光に包まれたライムに、全力ダッシュで突撃した——‼︎
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