63 / 143
第59話〜恐怖の再来〜
しおりを挟む「これが最後の便です。急いでください」
ネズミでいっぱいになった、あの卵形の乗り物にボクらは乗り込んだ。クソ、狭いぜ。
「みんな、大丈夫だから。きっと今回も何事もなく……? なにあれ⁉︎」
「空だ! 空を見て兄ちゃん……!」
「どうしたルナ? 何だ⁉︎ 空に大きな穴が……!」
ボクは窓の外を見た。
——青く澄んだ空に、白く輝く大きな穴のようなものが見える。
「あれは、間違いねえ。ミランダのワープゲートだ! やはり、ライムの奴、ミランダを……!」
空に現れた巨大な虹色の穴は、みるみるうちに巨大化し、空を覆い尽くしていく。
「着いたらすぐに避難しよう! ニャンバラ軍が、あそこから出てくるかもしれない!」
「分かった、プレアデス兄ちゃん!」
しばらくするとプレアデスの言った通り、巨大化した虹色の穴から、ゴォン……ゴォン……という音と共に、巨大な飛行戦艦や円盤が、次々に現れた。
飛行戦艦の巨大で不気味な影が、地面を走っていく。
「こわいよう……」
「ナッちゃん、大丈夫だ。Chutopia2120に着いたらすぐに森へ向かって、こないだの避難所に行こう!」
悲鳴、泣き声……車内は大混乱だ。
クソ、こんな時にソールさんたちは何してやがんだ……。
♢
卵形の列車はChutopia2120の駅に着いた。ネズミの群れの中、ボクらははぐれないようにしっかり手を繋ぎ、階段を下りた。
駅前のターミナルでも、ネズミたちが大慌てで森の方へ向かって行く。
上空には巨大な虹色のワープゲートが渦巻き、飛行戦艦や円盤が次々に現れる。前みたいに攻撃はせずに飛び回っているだけだが、何をしてくるか分からねえ恐怖が、ネズミたちの混乱に拍車をかけているみてえだ。
「ん? あそこにいるのは、メル姉ちゃんたちじゃない?」
ポコの言葉にボクは耳を疑った。ミランダはさらわれちまったはずだ。
だが目の前の噴水広場には確かに、メルさん、じゅじゅさん、ユキ、そしてスピカの姿があった。しっかり二足歩行で、ちゃんと服も着ている。
一体、どうやってここに来たんだろうか。
とりあえず、声を掛けよう。
「おーい‼︎ メルさんー!」
「あ、ゴマ‼︎ 良かった、いた!」
「ゴマ~! ルナ、ポコも! 無事で良かったよ!」
ボクらはネズミの群れから脱出し、メルさんたちと合流した。
「メルさん! どうやってここに来たんだよ! 今ネズミの世界は大変な事に……」
「ゴマ、聞いて。助けを求めて来たのよ、……ミランダが!」
何だと……⁉︎ ミランダが……⁉︎
「とりあえず、森に急ごう。みんな固まって行こう。ここは危ない」
ネズミの父ちゃんはそう言って、先頭に立って案内してくれた。ボクらははぐれないように、ネズミの群れをかき分けかき分け、街外れの森にある地下避難施設の入り口へと向かう。
ゴォン、ゴォンという重苦しい飛行戦艦のエンジン音が、頭の上からのしかかってくる。
「いざという時は、ウチがみんなを守るさかいに……!」
「スピカ、1匹で背負い込むんじゃねえよ。ボクがいるのを忘れるな」
「せやな! 頼りにしてるで、イケメン!」
「ゴマって呼べ!」
——そして、ソールさんたちもいるんだ。
せっかくここまで復興したこの平和なネズミの街、Chutopia2120。再びボロボロにされちまう事は、絶対に防がなきゃいけねえ。
それが星光団の、任務だ。
♢
ようやく森が見えて来た。
避難施設の入り口には、ネズミが押しかけている。
「で、メルさん! ミランダが助けを求めて来たってのはどういう事だよ」
「突然耳元で、ミランダの声がしたのよ。『助けて、ライムがあたしの魔力を奪って使おうとしてるの!』って……。ゴマを呼ぶつもりだったのかしらね。すぐにワープゲートを開いてくれたわ」
「そう~。その後、ライムの声がしたんだよね~。『余計な事するんじゃねえよ!』って。『キャー!』っていうミランダちゃんの声がしてからは、もうミランダちゃんの声は聞こえなくなったんだ~」
じゅじゅさんがいつになく、深刻な顔してる。いよいよ只事じゃねえな、これは。
「その後、急にゲートが光り出して、ウチらみんな吸い込まれてもうたんや。気がついたらネズミの街におった」
「なるほどな……。ユキも妊娠中なのに一緒に来ちまったのか。無理するなよ、ユキ」
「うん……」
ユキは頷くとポコの隣へ行き、ポコの手をぎゅっと握った。ポコは無言で、ユキを抱きしめる。
——ポコ、お前もいつまでも弱虫の根性無しじゃダメだ。いざという時は、大事な存在はしっかり守ってやらなきゃ。
「ネコさんたち! 早く地下避難施設へ急ぐよ。みんなもう行っちゃったよ」
「ああ、すまねえチップ!」
地下避難施設への入り口はいくつかあるようで、たくさんいた住民も、あっという間に避難を済ませられたらしい。ボクらの場所の入り口も住民たちの避難は完了し、チップが最後尾だった。
ボクらも急いで地下避難施設に入ろうとした、その時——!
「怪しいヤツらだ。動くな! 動くと撃つぞ」
聞き慣れない声がした。
チッ、こんな所にまで敵は来ていたのかよ!
ボクは叫んだ。
「チップ! 先に行け! ここはボクに任せて、出入り口を閉めろ!」
「うん! 信じてるから!」
施設の扉が閉まったのを確かめると、ボクはフゥーと息を吐いて周りを見渡す。メルさん、じゅじゅさん、ユキ、ポコ、ルナ、スピカは避難できずにこの場に残ってしまった。スピカは……戦えるから大丈夫だ!
「何だコイツらは……!」
わらわらと、武装したネコの兵士たちが集まってくる。あっという間に、ボクらは囲まれちまった。
——メルさんたちを、守らなきゃいけない。今こそ、ボクらが戦う時!
「行くぞ、スピカ!」
「うん!」
「「聖なる星の光よ、我に愛の力を!」」
——黒と白の光が煌めき、ボクらは転身した。
「暁闇の勇者……ゴマ!」
「暁光の勇者……スピカ!」
ボクとスピカは、飛びかかって来たネコ兵士たちを、剣の一振りで薙ぎ払った。
「ぐわああああッ‼︎ 」
「こ、こんな奴らがいるなんて、聞いてない!」
何て手応えの無え奴らだ……。そう思って後ろを振り返ると——。
信じられねえ光景が、目に飛び込んできた。
メルさんたちが、捕まっている……!
「やあ。久しぶりだね、おチビさんたち」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる