子ネコのゴマの大冒険〜もふもふにゃんこ戦隊と共に、2つの世界を救え‼︎〜

第56話〜乙女心？〜

　
　ある日、ボクが近くの空き地に出掛けようとした時の事だ。

　スピカとメルさんが、何やら話をしている。
　——ボクは見つからないように段ボールの陰に隠れて、耳をすませた。


「スピカちゃん、なあに？　相談って。恋の悩み？」

「は、はぁー⁉︎    何でお見通しなん⁉︎」

「スピカちゃん見てたらすぐ分かるわよ。……ね、ゴマの事でしょ？」

「ちょ、メル姐さん！　声がでかいわ！」


　……は？    ボクの事だと？
　ボクが何をしたってんだ。


「当たりねー。で、どうしたの？　ゴマの事ばっかり考えちゃって夜も眠れない、みたいな？」

「んー、なんちゅうか、その、ゴマって、いっつもウチに冷たいというか……。あ、でも昨日は、なんか、ぎゅーってしてくれたし……。ウチな、アイツの気持ちがよう分からへんねん」


　スピカの奴は、何かを誤魔化すように自分の体を舐めながら答えていた。
　ボクの気持ちなんか、知ってどうすんだよ。女って本当、分かんねえや。


「まあーゴマはね。元々冷たいというか口が悪いというか……。でも、スピカちゃんの事は嫌いって訳じゃないと思うわよ」

「ほんまあ……？」


　……全く、そんなバカみてえな事で悩んでやがったのか。別に好きでも嫌いでもねえよ、テメエの事は。
　それより、コ・イ・の悩みだと？

　何なんだ、コ・イ・って。


「あ、珍しい～。メルが恋の相談乗るなんて～」

「じゅじゅ、何よー。悪い？」

「だってメルあんた～、未だに彼氏いないじゃ～ん」

「あんたもでしょ！」

「私はシングルの方が楽でいいんだも～ん」

「……あの、メル姐さん？　続きやねんけどさ……」


　メルさんとじゅじゅさんは、すぐにスピカの話に耳を傾けた。
　女って何で、こういう話は興味津々なんだろう。


「うんうん、続きは？」

「……ウチさあ、ゴマのこと……」


　——と、その時。


「ゴマ、何してんだよ」

「うわあっ‼︎」


　ポコが後ろから声をかけてきたから、うっかりデケエ声出しちまった……！


「なあ、さっきゴマの声せえへんかった？   うわ、聞かれてへんやんな？」


　——まずいっ！
　ボクはダッシュでその場を離れた。ポコも後ろからダッシュでついてくる。……こらポコ、物音を立てるな！


「えー？    気のせいじゃない？    あの子、またどっか遊びに行ってんでしょ」

「ああ良かったあ。ほんで続きやねんけど……」


　はあ、はあ。くそ、いきなり走ったからツメが欠けちまった。
　……何とか、盗み聞きしてた事はバレずに済んだようだ。


「ポコ……てめえ！    びっくりするじゃねえか！　気配消していきなり声かけるな！」

「ごめんごめん。段ボールの陰でじっとあっちの方見てたから、獲物がいるのかなーって思ったからさ」

「獲物くらい自分で獲ってこい」

「僕だけじゃ怖いもん」

「お前、そんなんでユキを守れんのか？　あ、そういやユキは？」

「怖がり屋を直したいとは思ってるんだけどね。ユキは今さっきメルさんたちのとこ行ったよ」


　ボクらは、今度は塀の上からメルさんたちの様子を見てみた。
　ユキも加わって、スピカの悩みを聞いてるようだ。ここじゃ声も聞こえねえから、何話してるかわかりゃしねえ。


「そうだ聞いてくれポコ。スピカの奴が、変なんだ。ボクの気持ちがよく分かんねえとか言い出しやがる」

「それ絶対、ゴマの事好きなんだよ」


　スピカがボクの事を、好き、だと？

　……意味がわかんねえ。何で、そうなるんだよ。


「バカ言うんじゃねえよ。ボクの事が好きなんなら、ほら、例えばボクの好きな食いモンやらいっぱいくれたりとかするはずだろ。それにボクを困らせたりとか絶対しねえだろ」

「……分かってないなあ。恋心ってそんなんじゃないんだよ。好きだから距離置いたり、意地悪したり振り回したり、接し方が分からなくなったりするもんなんだ」

「だからコイゴコロって何だ？    ああもう、スッキリしねえ。おい、ミランダ呼んでネズミんとこでも行くぞ。ポコ、付き合え。ルナも呼んでこい」

「はあー、やれやれ、ゴマったら。おーい、ルナー！」


　女子会が盛り上がってるもんだから、こっちはボク、ルナ、ポコとで、またネズミ族の世界へ行くことにした。


「ミランダ、ワープゲート開いてくれ！」


　ボクが空に向かってそう言うと、目の前に金色の光が集まり、ミランダの姿が現れた。


「やっほ。行くのはゴマ、ルナ、ポコの3匹ね。メルちゃんに知らせなくていいの？」

「いいんだ。だって女子会中邪魔しちゃ悪いだろ」

「女子会、あたしも参加してこようかしら」

「ミランダおい！」

「冗談冗談。それっ」


　ミランダがステッキを振ると、地面に虹色に輝くワープゲートが現れた。 


「よっしゃ、待ってろチップ。行くぞ！」