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第47話〜決戦! 悪のネコ族の野望を砕け・後〜
しおりを挟む「ソールさん! 何やってんだ! 早く、ペンタルファ・バーストを……!」
「ダメだゴマくん! ペンタルファ・バーストの威力では、ライムは倒せないかも知れないんだ!」
「何だって⁉︎」
ペンタルファ・バーストを使うと、全員戦闘不能になる。もし倒せなければ、そこでゲームオーバー。ボクらの負けだ。
……だったら! ボクが直接仕留めた方が早いぜ‼︎
ステータスは、ライムと比べると体力以外は、ボクが圧倒している。大丈夫だ。
ボクはライムのもとへダッシュし、真っ直ぐに剣を突き付けた。
「ライム、テメエはここで終わりだぜ」
「ふん、口だけは達者なクソガキだ」
ボクは素早くライムの後ろに回り込み、一瞬の隙をついて、ヤツの背中に一斬りを浴びせてやった。
「グ……!」
よし……! 効いてる。が、次の瞬間、ライムの姿は消え、すぐにボクの後ろに現れた。ワープを使いやがったみてえだな。
だが、無駄だぜ。喰らえ!
「グハァ……。貴様……舐め腐りやがってぇええええ……‼︎」
――次元斬撃。ボクが剣を一振りすれば、離れた場所にいる敵でも、狙い通りぶった斬ってやれるのさ。
このまま、ガンガン攻めてやるぜ‼︎
「おい、ゴマ……、凄えぜ!」
「……力を、制御出来るようになったみたいですね」
ソールさんたちが、ボクを褒めてくれてる。
みんな、見ててくれよ! ボクがここで、ライムの悪巧みを、ニャンバラの馬鹿どもの野望を……!
――終わらせてやるぜ‼︎
「斯くなる上は……‼︎」
——ライムが再び、真っ赤なオーラを纏う。
地面が大きく揺れ、建物を崩しながら、灼熱の衝撃波がボクらのところへ吹き込んで来る!
「うああ、クソ! 熱ちぃ、眩しい……!」
「グォオオオアアアアアア……‼︎」
思わず目を瞑ると、ヤツのステータスが再び瞼の裏に映った。
体力 1823/4949→ 4219/5364
魔力 160/365→ 420/420
攻撃力 666→ 999
防御力 384→ 999
敏捷性 190→ 999
信じられねえ……。まだ強くなりやがんのか、この化けネコめ!
「ハァ、ハァ……、 貴様のような餓鬼1匹如きに、ここまでやらせるとはナァァアアア‼︎」
ライムが叫んだ瞬間、真っ赤なオーラが弾け飛んだ。
ライムを中心に凄まじい爆風が起き、ネズミたちの街を一瞬で、紅蓮の海に変えた……!
「ぐああああ!」
「きゃあーーーー‼︎」
「マーキュリー! 何とかしてくれ!」
「ダメ、今度こそもうダメーー! もうおしまいよーー‼︎」
ネズミたちの大切な街が、焼き尽くされていく。……止めなければ。ボクは、まだいける。絶対に、ライムを止めてみせる!
ボクは天に向かい、魔剣ニャインライヴを突き上げた。
「ゴマ、がんばれ! 負けたらあかんで‼︎」
「私たちは、あなたを信じています!」
みんなの応援の声が、耳に入る。
次の瞬間、夜空に輝く月から、魔剣ニャインライヴを通してエネルギーが流れ込み、ボクの周りで輝くオーラとなる。
体中に、力が漲ってくる——!
暁闇の勇者 ゴマ 白黒♂ Lv.101
体力 740/999→ 1002/1002
魔力 45/320→ 452/452
攻撃力 999→ 3714
防御力 999→ 2960
敏捷性 740→ 1192
——限界、突破。
ボクはどこまでだって、強くなれる。
紫色に輝くオーラを纏ったボクは、そのまま一直線に、燃え盛るライムの巨体へとぶつかっていった。
「喰らえええ! ライムゥゥゥーーーー‼︎」
ライムの真紅のオーラと、ボクの紫色のオーラがぶつかり合い、拮抗する! 凄まじい衝撃波が発生し、炎を巻き上げながら、周りの建物を抉り、吹き飛ばしていく――――‼︎
「うおおおおあああああーーーー‼︎」
「グアアアアァァァァーーーー‼︎」
ライムの真紅のオーラは、凄まじい大爆発と共に弾け飛び――!
「喰らえ‼︎ 必殺の一撃! ギガ・ダークブレイクーーーー‼︎」
水飛沫を上げる魔剣ニャインライヴを、ボクはライムの頭上から振り下ろし、ヤツの白金の鎧を真っ二つにぶった斬った。
——大ダメージを受けたライムは、血汐のような火焔を撒き散らしながら、後方へ吹き飛ばされ……! 地響きを立てながら土煙を巻き上げ、倒れ込んだ。
「はあ、はあ……やったか!」
轟音の中、ソールさんたちの声援が微かに聞こえる。
「ゴマー! さすがだぜ! よくやった!」
「凄いやん! とうとう勝ったんやな‼︎」
……違う。まだだ。
ライムの奴、地面に倒れながら、燃え盛る炎を……食ってやがる‼︎
「ガァァァアアアアアアーーーー‼︎」
ライムは、再び真紅のオーラを纏い、立ち上がった。
体力 32/5364→ 5364/5364
バカな……全回復だと⁉︎
炎を食って回復できるってことは、今は辺り一面火の海だから、どんだけブチ込んでもすぐ復活しやがるってことか……。
「信じられねえ! どうすれば良いんだ、ソール⁉︎」
「ペンタルファ・バーストを2倍の威力で放つ事が出来れば……。それも一撃で決めなくてはいけない」
「そんなの、どうやってやれと言うのよ‼︎ バカ‼︎」
「……怒ってばっかいないで、少しは自分で考えたらどうなんだ!」
まずいな、ソールさんたちがケンカし始めたぞ。
今ライムを倒せるのは、ボクだけだ。何度回復されようが、何回だって、何回だって!
テメエにこの魔剣を、ぶち込んでやる――‼︎
「ギガ・ダークブレイクーーーー‼︎」
「グガァアアアアーーーー‼︎」
ダメだ、やっぱりすぐに回復されちまう!
……ソールさんが言う、ペンタルファ・バーストの2倍の威力って、どれくらいなんだ! 確か……。
ペンタルファ・バースト
無属性 威力……100 消費魔力……全て
特殊効果……術者の体力と魔力が全て消費され、使用後は戦闘不能になる
ダメだ。威力100の2倍……200程度で、ヤツが完全回復した状態から一撃で倒れるとは、とても思えねえ。
だがボクも、ギガ・ダークブレイクを放ちすぎて、魔力は無くなっていく一方だ。クソ……、まずいぞ。
「落ち着けソール! と、とにかく、5つの魔力を星型のエネルギーフィールドに集めさえすれば、我々星光団ではなくともペンタルファ・バーストは使えるんだっただろ⁉︎」
「……そうだったな、マーズ! ならば、さらにあと5つの魔力を集めればいいのか! 魔法が使えるのは、ゴマくん、スピカさん、フォボス、ダイモス……」
「ダメです、フォボスさんとダイモスさんは、魔力を保有してません……。それに、要員もあと1枠、足りません……」
「やはりダメか……!」
ソールさんたちも、必死に策を練っている。頼む! 何かいい手を、見つけてくれ!
……もう魔力が無え……、だがここで終わってたまるかよ……‼︎
「ウグアアアアアァァァァーーーー‼︎」
まずい、ライムが……!
覚醒している今の状態で必殺技〝イラプション〟を使われたら、間違いなくこのネズミたちの街は……。
Chutopia2120は――終わる。
ボクは剣を構えながら必死で策を考えた。時間が無え——!
と、その時!
「みんな! お待たせ‼︎」
――この声は。
「みんな! 地面にもう一つ、五芒星を描くのよ! そしてフォボスとダイモス! あたしの魔力を分けたげるから、使って! そしてスピカちゃん、早くゴマを呼んで‼︎」
不思議な声が聞こえると同時に、ホタルのような光が夜空を駆け抜け、ソールさんたちのいる場所へ高速で飛んで行った。
「何だ! 妖精⁉︎」
「風の精、シルフね! と、とにかく、彼女に従うしかないわ!」
「ああ! 早く地面に五芒星を描くのだ! フォボス、ダイモス! お前たちも早く五芒星を!」
駆けつけてくれたのは——ヒミツキチの奥で世話になった風の精霊、ミランダだった。
ありがとよ。お前の作戦に、賭けるぜ。
「ゴマーーーー‼︎ 早よこっちおいで!」
「スピカ! すぐに行くぜ‼︎」
赤紫色の炎に包まれながら、後方からライムが迫る。
ボクは全力でダッシュした。みんなの元へ——!
「フォボスくん、ダイモスくん! あたしの魔力を使って!」
「……体に不思議な力が! ダイモス! 地面に五芒星を描くぞ!」
「すげえ! すげえぜ! ありがとよミランダ!」
地面に五芒星が、2つ――?
ソールさん、ムーンさん、マーキュリーさん、マーズさん、ヴィーナスさんは既に配置につき、〝ペンタルファ・バースト〟の準備が出来ているようだ。
「ゴマーー‼︎ スピカーー‼︎ お前たちは、こっちの五芒星だ! 早く配置につけ‼︎」
ダイモスさんの叫び声。見ると、もう一つの五芒星には、フォボスさん、ダイモスさん、そしてスピカが。
……そうか! これでペンタルファ・バーストを2倍のチカラで……!
「ミランダ‼︎ 助かったぜ‼︎ ……だが、こっちはボク入れて4匹しかいねえじゃねえか! あと1匹分は誰がやるんだ! それに、2倍の威力だとしても奴を倒すのはキツいぞ!」
ミランダはキラキラと光を撒き散らし、ウインクしながら答えた。
「あたしに決まってるじゃない! ……それに、あたしは、ペンタルファ・バーストの威力を5倍に増幅出来るから!」
「……ミランダ、ズルいぜ。美味しいとこばっか持って行きやがって! ……お前を信じるぞ!」
全員、配置についた。
行くぜ、必ず一撃で決めてみせる――!
「私達に」
「聖なる」
「星の」
「力と加護を」
「無限なる」
「光と共に」
「宇宙の愛」
「勇気と希望」
「そして正義を」
……あ。ここボクのセリフか。
「こ、ここに示さん!」
2つの五芒星が、白く輝き出す————!
「ペンタルファ・バースト・Ω――‼︎」
「……小癪な」
……眩く輝く虹色の光が、黒い煙と紅い炎を、優しく包み込んで行く……。天の川のように無数の黄金の星の光を振りまきながら、ゆっくりとライムを覆い、包んだ。
凄まじい光と音で、ボクは何も聞こえなくなってしまった。
——段々と、光が薄くなっていく……。
♢
気がつくと、目に映ったのは――。
真っ白になり、動かなくなったライムの姿と、淡く青白い明け方の空。
そして、寂しく泣いているかのように白煙を上げながら、崩れ去った街があった。
「……やったか⁉︎」
「……ライム! ライムーーーー‼︎」
ムーンさんが、ライムの元へ駆けていく。
ボクらは、後を追った。
「マーズ、どうだ?」
「……死んではいない。気を失っているだけだ。ソール、捕らえるか?」
「よし! ライムを捕らえて基地に連れて行こう。ヴィーナス、麻酔銃をライムに!」
「うん!」
終わった。勝ったんだ。
星光団の、勝利だ——!
「良かった、良かった……! ライム、ライム……。ううう……」
ライムを抱きしめながら泣き咽ぶムーンさんを、ボクはただただ見ていた。
「早く、ライムを基地に連れて行かねば!」
「そうね! 急ぎましょ!」
「ヴィーナスさん! 待ってくれ!」
ボクは、麻酔銃を撃とうとするヴィーナスさん手元を押さえ、ライムを抱きしめながらじっと動かないムーンさんを見て、言ったんだ。
「……みんな。もう少しだけ、ライムを連れてくのは、待ってやってくれねえか?」
みんなもボクの思いは、すぐに分かってくれたようだ。
「……ああ。そうだなゴマくん、君は優しいな」
朝陽の光に照らされる、ムーンさんとライム。
いつかまた分かり合えるように、ボクは祈る事にした。
――こうして、ボクたちの戦いは、終わったんだ。
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