36 / 143
第34話〜もう1匹の姉〜
しおりを挟む耳が貫かれるほどの轟音と共に、5色の光線が炸裂し、デネブたちを襲う――‼︎
衝撃で吹き飛ばされたボクは、すぐに態勢を立て直そうとした。が、あまりの熱気と眩しさに、全身の感覚が失われていく……。
目を瞑ると、また文字が浮かんできた。
ペンタルファ・バースト
無属性 威力……100 消費魔力……全て
特殊効果……術者の体力と魔力が全て消費され、使用後は戦闘不能になる
5匹全員の全ての力をエネルギーにして解き放つ、最後の必殺技ってとこだろう。
ボクまで巻き添えを喰らい、眩しさと熱さで何も見えない、何も感じない。ソールさんに言われた通り、〝ワームホール〟をぶっ壊さなきゃいけねえのに。
……奴らは、倒す事は出来たのだろうか。
「……やったか⁉︎」
「ダメ! 逃げられた!」
……逃げられちまったか。多分、あの3匹は〝ワームホール〟から逃げちまったんだ。クソ、ボクがもっと素早く動けていれば……。
……って、あれ? ……何だ? 身動きが取れねえ!
「ゴマ! ゴマが!」
「なにっ⁉︎」
「あっはは! ゴマ君を解放して欲しかったら、武器を捨てるんやで!」
ようやく視界が晴れ、感覚が戻ってきた。
……気付くとボクは、何者かにガッチリとホールドされて、こめかみに小型の銃を当てられていた。
「この、離しやがれ!」
「動くんやないで! この電撃銃があんたの脳天貫くでえ」
ボクに銃を突きつけてやがったのは、あの訛りのキツい女、スピカだった。コイツ、逃げてなかったのか。
一体どうやってあの必殺技をかわし、ボクを捕まえやがったんだ。
「チィ‼︎ 離しやがれ!」
「この子はネコ質にして、ウチも逃げるさかいにな。大人しくしてるんやで。……にしても、イケメンやなあこの子は」
必殺技は空振りに終わり、ボクは捕まり、星光団も、もう動けない。——万事休すか。
「……うああ……兄ちゃん……」
「シッ! ルナ、動いちゃダメよ……!」
メルさんたち、無事だったんだ。木陰から不安そうな目でこっちを見ている。
——ボクは諦めねえぞ。これ以上メルさんたちを心配させる訳にはいかねえんだ。
「ほな元気でなあー、あっはっは」
そのままスピカはボクを捕らえたまま、〝ワームホール〟の方へ去ろうとする。
——が、そうはさせねえ。ボクを舐めるなよ!
「あ! やべえ! 屁が出る‼︎」
ボクはそう叫んで、尻をスピカの膝に押し付けてやった。
「……はぁ⁉︎ ちょ、何してんの⁉︎ やめえ汚い! 向こう行ってしてきいや‼︎」
——作戦成功。スピカが手をパッと離した隙に、ボクは受け身を取ると、すぐに奴の後ろに回り込んだ。
「はっ、しもうた!」
「へへっ、バーカ! アカンベー‼︎ 喰らえ、クソアマ!」
ズシャアアアア‼︎
ボクは力いっぱい、足を使って土を掘り、スピカの顔面めがけて大量の土を浴びせてやった。
「うわ! 全然前見えへん!」
「兄ちゃんナイス!」
その時再び、星光団が動いた——!
「今だ、行け! スピカを捕らえるんだ!」
「おうっ!」
「や、やめて! いやあっ!」
星光団の5匹はあっという間にスピカを捕らえ、ロープでグルグル巻きにしてしまった。さっきの必殺技は放ってから数分経てば、5匹は動けるようになるらしい。
「はあー、ウチがこんなヘマやらかすなんて……」
「デネブとリゲルはどうした?」
「逃げたよ。あの結界通過トンネルからな。残念やったな、ウチだけ捕まえてもどうしようもないで」
デネブとリゲルはやはり、〝ワームホール〟を通って逃げてしまったらしい。
いいさ、いつかあいつらも絶対潰してやる。
♢
街に、静けさが訪れた。
恐らくニャンバラの野郎どもは、捕らえたタイタンとスピカ以外は〝ワームホール〟を通って帰って行ったのだろう。
後は、タイタンとスピカを、どこかにある星光団の基地の牢屋にぶっ込んで、ボクらも〝ワームホール〟を抜けた後に、ぶっ壊しちまえばいいんだっけ——いや、そうするとチップたちにはもう会えなくなる。そうだ、その作戦をボクは反対してたんだ。ソールさんたちに、何とか〝ワームホール〟を壊さずに済むやり方を考えてもらわねば。
そう考えていた時、後ろの茂みから殺気を感じた。全身に寒気が走る。
「……ずっと見ていたぞ」
ドスの効いた声が、茂みから聞こえた。
「誰だ⁉︎」
「……今の星光団では、私には勝つことは出来ない。〝ペンタルファ・バースト〟で、力は使い果たしただろう?」
声の主が、茂みから姿を現した。
縦にも横にも、大人のネコより2回り、いや3回りほどもデケえ体格。顔の上半分を斜めに走る傷跡。全身を包む棘だらけの装備。
その三毛ネコの体格は、捕らえた〝サターン〟のデブ剣士タイタンよりもさらにデッカく、歩くたびに地響きが起こる。
「……ライム……‼︎」
ムーンさんが、口を開いた。
まさか。コイツが、ムーンさんの3匹目の娘の——ライム。
「ライム! あんた!」
「ライムぅ……久しぶりだねぇ~!」
姉妹であるメルさん、じゅじゅさんがライムに呼びかけた瞬間。
「気安く私の名を呼ぶんじゃねえ‼︎」
地面を揺るがすほどの大声で、ライムは怒鳴った。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説


異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜
カイ
ファンタジー
主人公の沖 紫惠琉(おき しえる)は会社からの帰り道、不思議な店を訪れる。
その店でいくつかの品を持たされ、自宅への帰り道、異世界への穴に落ちる。
落ちた先で紫惠琉はいろいろな仲間と穏やかながらも時々刺激的な旅へと旅立つのだった。

迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中

悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?
ぽんぽこ狸
恋愛
仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。
彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。
その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。
混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!
原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!
ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。
完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。

アサノっち的戦隊シリーズ・大阪戦隊ナニワレンジャー
アサノっち
ファンタジー
地底から、突如現れたワニ軍団。御堂筋たちは、天王寺長官に集められ、ナニワレンジャーとなって、大阪の街を守ることを決める。果たして、ナニワレンジャーは、ワニ軍団を倒すことが出来るのか?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる