30 / 143
第28話〜いざ出撃‼︎ ネコ軍隊を迎え討てッ!〜
しおりを挟む「たぁーだいまあー! あ、いい匂い」
「おかえり。今日は秋野菜のカレーよ。ゴマくん、ルナくんもおかえり」
「ああ、ただいま、ネズミの母ちゃん。久々にすっげえ楽しかったぜ……ん?」
——あれ⁉︎
ボクは、机の上を二度見した。
何と、机に置いてあったボクとルナのニャイフォンが、粉々にブッ壊されている。
画面もバキバキに割られ、2つとも電源ボタンを押しても全く反応しなくなっていた。
「おい誰だ! こんな事した奴は!」
ボクが大声で怒鳴ると、後ろからムーンさんの声が聞こえた。
「ごめんなさい、私です」
「え、ムーンさん⁉︎」
「やったのは私です。あなたたちの居場所を、〝彼ら〟に知られてはいけませんから」
そうだった。元々ボクらは、ニャンバラの奴らのスパイだったんだ。
ネズミ族と一緒にいる事をニャンバラの奴らに知られると、奴らに何をされるか分からねえ。そうすると、ネズミ族の奴らも、ボクらの家族も巻き込まれる……。
「そうだムーンさん。昨日の事……ネズミのガキどもにも伝えなきゃいけねえよな」
ボクがそう言い終わろうとしたその時、ムーンさんの胸元からピピピ……ピピピ……と、音がした。
——ムーンさんの表情が引き締まる。
「……こちらムーン。そう、わかりました。すぐに向かいます」
「な……! どうしたんだ、ムーンさん!」
「ゴマ! ネズミの皆さんを集めてください!」
ムーンさんが、いつになく緊迫した顔を見せている。ボクは大慌てで9匹のネズミたちを、広間に集めた。きっとただ事じゃねえぞ、これは。
「皆さん、聞いてください。ニャンバラ軍の偵察部隊が、すでにネズミ族の街〝Chutopia2120〟に、到着しているとの事です。今から私は街に向かいます。私たちの仲間と合流し、彼らの唯一のこの世界への入り口である、結界通過トンネル〝ワームホール〟を封鎖します」
「何だって⁉︎ ムーンさん! ボクらも……」
「ゴマたちは、ここで待ってて下さい。では行って参ります」
ムーンさんはすぐに、玄関のドアも開けっ放しで、飛び出して行っちまった。
大人のネズミたちはムーンさんの話を辛うじて理解したようだが、ネズミのガキ共は何が起きているのか全く分かってねえ様子だ。
「え、何⁉︎ 何があったの⁉︎」
「お父さん、私怖い……」
「大丈夫、大丈夫だよ。みんな落ち着くんだ」
とうとう来やがったか、ニャンバラ軍……。
一体どんな奴らなんだろうか。ネズミの街は無事で済むのだろうか。ムーンさんの仲間って、一体何者なのだろうか。まさか、ニャンバラ軍と戦ってくれるのか——?
「夕ごはんできたわよ……あら、ムーンさんは?」
「……街にニャンバラの軍隊が来ているから、それを止めに出かけたそうじゃ。とりあえず、明かりを暗くして、わしらは、とりあえずごはんにしよう」
ネズミのじいちゃんは、ガキどもに聞こえないように声をひそめ、ネズミの母ちゃんにそう伝えた。
♢
いつもと違う、何となく落ち着かねえ雰囲気の夕飯時だ。
「いただきまーす!」
「しーっ! みんな、今は外に出ないでね」
ネズミの父ちゃんは声をひそめて、ガキ共にそう言った。
「え、何で?」
「詳しくは、ごはんの後で話すから」
「何か、嫌な予感がするよぅ……」
……やっぱり、ちゃんと話した方がいいんじゃねえか? ガキどもは勘が鋭いんだからよ。
そう思いながら飯を食ったが、あれだけ美味かったネズミたちの料理の味が——全くしねえ。
「……ごはんの途中だけど、私たちも街まで行くわ。母さんが心配」
メルさんはそう言うと、飯を半分以上残したまま、すっくと立ち上がって玄関へと向かった。
「ゴマたちはいい子に待っててね~」
「ちょ、メルさん、じゅじゅさん! 危ねえぞ!」
メルさんに続いてじゅじゅさんも、ムーンさんを追って、家を出て行ってしまった。……じゅじゅさんは飯を皿ごと持ち出して行ったようだ。
そんな慌ただしい様子を見せてしまうと、ネズミのガキ共を余計に不安にさせてしまう。思った通り、泣き虫のナナは涙を浮かべながらネズミのじいちゃんに問いかけた。
「ねえ、どうしたの? おじいちゃん、何か知ってる?」
「……言わなければいけないようじゃな」
——辛い瞬間だ。
戦い、争いを知らねえ純粋無垢な子供が、とうとう現実を知らなきゃいけねえ時が来てしまった。
じいちゃんは間を置いて、ひと呼吸した後ゆっくりと言った。
「地底世界のネコ族ニャンバリアンが、わしらが住むこの世界を乗っ取るために、攻めてくるんじゃ」
——一瞬の沈黙。
トムが首を傾げながら聞き返す。
「……え、乗っ取るって? 僕らが住む家も、街も、横取りされるということ?」
「そうじゃ……地底に棲む悪魔のネコたちが、当たると痛い弾や斬られると痛い刃を持って、わしらの住む街を横取りしに、やって来るんじゃ」
じいちゃんがあからさまに怖い顔をして言うもんだから、ガキ共は完全にビビっちまっている。お伽話じゃなくて、マジの話なんだから。そこはもう少しマイルドに言ってやろうぜ、じいちゃんよ。
「こわい、こわいよう……お父さーん!」
「大丈夫、ここまでは襲っては来ないさ」
「ああ、ムーンさんとその仲間が、上手くやってくれるはずじゃ。信じよう」
——さあ、この状況だ。
ボクがどういう決断をするか。決まってるよな。
「ルナ‼︎ ボクらも行くぞ‼︎」
例の如くボクはルナを無理やり引っ張って、玄関に向かった。
「ちょっと、ダメだよ! 待ってなさいってムーンさん言ってたじゃ……ああもう引っ張んないでよ!」
「うるせえ! 黙ってついて来い!」
案の定ユキとポコが、止めようとしてくる。
「ゴマ! ルナ! 待って、危ないよ!」
「ダメだよゴマー! うう、何が起きてるの? 怖いよ……!」
だがボクはその声を無視し、ルナを連れて家を飛び出した。
ムーンさん、メルさん、じゅじゅさん。
ボクも戦う。
待ってやがれ、ニャンバラの馬鹿野郎ども——!
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!
SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、
帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。
性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、
お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。
(こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる