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第26話〜明かされていく真実〜
しおりを挟む何とボクらにもう1匹、姉ちゃんがいただなんて。メルさんたちは3つ子だったのか。
さっきから、びっくりするような事実ばかりが、ムーンさんの口から飛び出してくる。
「え、ライム⁉︎ まさか。あの日、私とじゅじゅ、ライムの3匹で遊びに出かけた時、ライムが迷子になってそれっきりいなくなって……。どこに行ったのかと思ってたら……」
「まさかぁ、地底にいただなんてねえ~」
メルさんもじゅじゅさんも、驚きの表情を隠せないでいる。
「ライムが迷い込んだのは、ネコだけの国、〝地底国ニャガルタ〟でした。そこでライムが取った行動は、何とニャガルタのネコ族とともに力を合わせ、〝首都ニャンバラ〟を築き上げたのです」
「ムーンさん! 何でそんな事まで知ってんだよ⁉︎」
いても立ってもいられず、ボクは口を挟んだ。
「私が留守にしている間……、私の仲間と共に、地底国ニャガルタへと赴き調査をしていたのです。その際、ライムを連れ戻そうと思ったのですが……」
——ムーンさんがずっと帰らなかった理由が、明かされた。何と、あの地底世界に行っていただなんて。
それにしても、一体どうやって地上と地底を行き来してたんだろうか。まさか、ボクとルナが転げ落ちたあの氷の滑り台を、行ったり来たりしてた訳じゃあるまい。ムーンさん、あんた一体何者なんだ……⁉︎
ムーンさんは俯き、言葉を続けた。
「ライムは、メルやじゅじゅより体が弱く色々な事が出来るようになるのに時間がかかりました。それなのに私は、メルやじゅじゅと同じペースで色々な事を出来るようになる事を求め、ついていけないライムを叱り……、今となっては酷い事をしたと思います。なので、合わせる顔もありませんでした」
「……母さん、そうだったよね。私もライムの事笑ったりしてたし……じゅじゅ、覚えてる?」
「わたしは昔の事なんて、覚えてないなあ~」
ボクが生まれる前に、そんな事があっただなんて——。
少し間を置き、ムーンさんは言葉を続ける。
「……現在地底国ニャガルタは、深刻な資源不足に陥り、戦争状態になっています。特にニャルザルとの戦争が激化しています。ところが、地上へ行く事が出来た首都ニャンバラのネコ族の科学者が、偶然私達の住処の近くの森の中に、今私たちがいるネズミ族の国……資源豊かなネズミ族の世界の存在を確認しました。それを知ったニャンバラのネコ族は、……ネズミ族の世界への侵略を、企て始めたのです」
「ねえ母さん、ライムは今どうしてるの?」
「……ライムは、恐らく今は……」
ムーンさんが言おうとした時、ネズミの末っ子のミライが泣きそうな声で言う。
「ねえ、おかあさん、ねむたいよ……」
「ごめんねミライ。もう遅くなっちゃったわねえ……」
ミライに限らず、ネズミのガキどもはみんな眠そうにしてる。難しい話ばっかりだから無理もねえ。
「長くなり申し訳ありません。せめてご家族の代表の方だけでも、最後まで聞いていただけませんでしょうか」
「わかりました。子供たちは、もうお風呂はいって、寝るかい?」
「そうするー。お父さん、また聞かせて。センソウってなに? シンリャクってなに?」
「……ああ、またネコさんたちに聞くといいよ。じゃあお風呂の支度をしよう」
——戦争。少しだけニャンバラで目の当たりにしたが、それはもう惨いものだった。無数の爆弾の雨、一瞬で破壊される建物、炎に包まれる街、逃げ惑うネコたち——。
ネズミの父ちゃんが風呂の支度をすませて戻って来ると、ムーンさんは再び話の続きを始めた。
「私は仲間たちと共に、ニャンバラのネコ族の狙い……ネズミ族の世界への侵攻を阻止すべく、行動を始めました。なのでネズミ族の方々は、私たちを信用して頂いて大丈夫です。……ゴマ、ルナは、一度ニャンバラに迷い込みましたね」
「お、おう」
「うん」
何とムーンさんは、ボクらがニャンバラに迷い込んだ事までも知っていた。一体どこで調べられていたんだろうか。ボクは背筋が少しゾクッとした。
「その後ゴマ、ルナは、ニャンバラ軍のスパイとしてネズミ族の世界の調査のために利用され、このネズミ族の世界へと遣わされたのです。失敗に終わりましたがね」
——やはり、そうだったのか。プレアデスに、プルートのジジイ。ボクらを騙して利用するつもりでいやがったんだ。ボクはムーンさんの調査能力に恐れをなしつつも、心の内にメラメラとニャンバラの奴らへの怒りの炎が燃え上がり始めた。
「……ニャンバラのアホども、絶対に許さねえ。プレアデスの奴もプルートのジジイも、怪しいと思ってたんだ。ルナ、お前ももっと怒れ!」
「怒れって言われても……。ニャンバラのネコさんたち、ネズミの理想郷に移住するとか言ってたけど、まさか軍隊を連れて占領しようとしてたなんてね。僕、怖いよ」
「そういう事です。私はニャンバラ軍に利用されたゴマ、ルナを止めるために急行しました。優しき風の精霊の導きにより、私はメルたち我が家族と共に、こうしてゴマ、ルナと会う事ができました。……ネズミ族の皆さん、ゴマとルナの行いを、どうかお許しいただけますよう……」
ボクもルナも、ムーンさんと一緒に頭をさげた。
「そういう事だったのか……。物騒なマネして悪かった」
「ネズミのみんな、ごめんなさい」
「……顔をあげとくれ。事情はわかりましたよ。それで、ニャンバラのネコ族は、……ここを狙ってやって来るのかの? ずっと続いてた平和が、終わってしまうのかのう……?」
ネズミのじいちゃんは悲しそうな顔で、ムーンさんに尋ねた。ムーンさんは再び頭を上げ、真剣な表情で答える。
「ニャンバラは、軍隊を率いてネズミ族の世界へとやって来ます。結界を通過するトンネル〝ワームホール〟を通って……。そして、我が子のライムが……」
「ライムが……? そうだ母さん、ライムは今どうしてるの?」
ムーンさんは、声のトーンを低めて言った。
「我が子のライムが、そのネズミ族の世界の侵攻計画を動かしている可能性があります」
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