いきなり異世界って理不尽だ!

みーか

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出産

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 嬉しいけど、出産の痛みの恐怖もあってソワソワしながら予定日を迎えた。
 ビビり過ぎたのか、その日には陣痛が来なかった。
 
 予定日から3日過ぎた日の夜、なんだかお腹が痛くて目が覚める。
 1人で起きて、様子をみているとどんどん痛みが強くなってくる。
 流唯君と両親を起こして病院に電話した。
「まだ大丈夫そうですね。」
「えっ?痛いです。」
「そんなに普通に話せるくらいなら大丈夫です。もう少し様子を見て、痛みが強くなったり、痛みの間隔が短くなったら病院に来てください。」

 えっ?もっと痛くなるの??確かにドラマとかでは、かなり苦しそうにしているけど……。
 なんて事を思いながら、お母さんに寝れる時に寝ておきなさいと言われ、もう一度布団に入った。
 1時間ほど寝ていたんだろう、なかなかの痛みに目が覚めた。
 今度は痛みが治まるまで動けない。
 流唯君を起こして、両親を呼びに行ってもらい、病院に電話してから大急ぎで病院まで連れて行ってもらう。

「山田さん、歩けますか?」
 看護士さんが話しかけてくれるけど……首をぶんぶん振って車椅子で運んでもらう。
「ぅううううう~………!!」
「は、陽菜、頑張れ!!」
 流唯君が手を握ってくれる。

 こんなにも痛いのに、先生からはまだもう少しかかりそうですね!と言われた。
 えぇー!!無理ーーー!!!

 辺りが明るくなってきた頃、やっと分娩室へ連れて行ってもらえた。
 流唯君だけが立ち会いで側にいてくれる。お父さんもお母さんも部屋の前で待っていてくれている。

 そこからも、まぁまぁ長かった。

「んぎゃ~、んぎゃ~!!」
「山田さーん、元気な女の子ですよ!おめでとうございます!」

 そう言われて、その子を腕に抱いた時、全てを思い出した。
 それは流唯君も一緒だったようだ。
 お父さんやお母さんが大喜びしながら抱っこしたり、写真を撮りまくったりしている。

 私も部屋に移され、両親は帰って行き、流唯君とあかちゃんと3人の部屋で、流唯君と話し合う。
「ゆきちゃん………。」
「うん、ゆきだな。」
「私達の本当の子だったんだね。」
「うん。」
「…………ゆきちゃんは、あの世界に行かなきゃダメなんだよね。」
「………。」
 涙が溢れてくる。流唯君も静かに泣いている。

 その時、ふっと辺りが明るくなって神様が出てきた。
「陽菜、久しぶりじゃな。」
「神様……、私、ゆきちゃんを抱っこして全部思い出しました。」
「うむ、そのようじゃ。………辛い事だが、ゆきちゃんはあちらの世界に行く事になるだろう。」
「すぐに連れて行くのか?」
「いや、それは大丈夫じゃ。ルイも色々と苦労したのぉ、陽菜と出会えて結婚できて良かった!!」
「あぁ、思い出したら全ての事に感謝したくなった。」
「そうじゃなぁ~。……陽菜、ルイ、ゆきちゃんを1ヶ月育ててくれ、わしはその間に機械をもう一度動かせるようにする。派遣にも頼んで記憶をいじってもらい、陽菜とゆきちゃんが出会ったあの場所に連れて行く。辛いだろうが、あちらの陽菜とルイが大切に育ててくれる。」
「……そうですね。私が育てるんだもんね。ゆきちゃんとは本当の親子だし。」
「そうだな、俺は本当の父親だ。」
「そうじゃのぉ。…その代わり、陽菜とルイがこの世界に帰ったら、本当の親子だった事を全て分かるようにしておく。陽菜の魔力は全部ゆきちゃんが引き継いでおる。あちらで陽菜がいなくなった分は、ゆきちゃんが陽菜と同じように魔力を使ってくれる。」
「あの、ゆきちゃんの今の様子とかを知りたいんだけど、できますか?」
「うむ、今は無理じゃな。じゃが、向こうにゆきちゃんが行ってからは、時々夢に見せるくらいはできるはずじゃ!まだ、ゆきちゃんは向こうの世界にはおらんからな。」
「わかりました。」
「では、1ヶ月後迎えに来る。あぁそうじゃ、ゆきちゃんに関する記憶や物は全て消す事になる。辛いのなら、2人からも記憶が消せる。その事を考えておいてくれ。じゃあの。」

 スッと神様が消えた。
「私は、ゆきちゃんの事忘れたくない!」
「俺も忘れたくない!」
 
 退院して、ゆきちゃんとの生活が始まった。お父さん、お母さんがメロメロ過ぎて、1ヶ月後にこの子が居なくなる事を思うと辛くなる。
 3時間おきの授乳に、オムツ替え、お母さんが来て、泣いていると抱っこして寝かしつけてくれたりと手伝ってくれる。流唯君も夜中に起きて抱っこしてくれたり、オムツを替えたりと助けてくれる。少しでも一緒にいたいからと流唯君は育児休暇を1ヶ月取ってくれた。
 ゆきちゃんは、少しづつ成長していく。それは凄く嬉しい事で、楽しみなのだけど、どんどん近づく1ヶ月の期限に涙が出る事が増えてきた。
 お母さんは、産後は不安定になるから、なんでもないのに涙が出たりするのは普通よ!って励ましてくれる。
 夜が来るたびに流唯君と2人、ゆきちゃんを抱きしめて泣く事が増えてきた。
「なぁ、陽菜。すごく悲しいし、辛いけど、やっぱりゆきには、俺達の笑顔を覚えておいてほしいって思うんだ。」
「……うん、そーだね。泣いた顔より笑顔の方が絶対いいよね!!」
「最後までゆきに沢山笑顔を見せてやろう!」
「うん!!」

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