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演技

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「もぅ一回!!」
 子ども達のリクエストにお応えして、弾きながら歌う。子ども達はあっという間に覚えて一緒に歌ってくれる。

 確か手遊びみたいなのもあった気がする……。検索すると、出てきたから子ども達と一緒に動画を見ながら手でチューリップを作って歌いながらフリもする。

 他にも沢山の手遊びや歌があるから、CDデッキを出して子ども向けの歌のCDを流したり、楽器の基礎を教えるDVDを出したりして、興味のある事を楽しめるように工夫してみた。
 1人の女の人がピアノを弾いてみたいと言うので、動画を見せてみると、すぐに弾けるようになった………天才だ!!
 
 バイオリンのDVDを食い入るように見ている人もいるし、有名な絵画を見て衝撃を受けている人、ダンスのDVDやアイドルのDVDに夢中になる人など、様々だ。
 それぞれ建物を出して、必要な物を出して揃えていった。自由に使っていいからどうぞ!と言うと、仕事の休憩時間に練習したりと、皆んなイキイキしている。
 皆んな楽しみができて良かった!

 そんなふうに、皆んなが仕事をしたり勉強したり、趣味を見つけたりしていたらチールがやってきた。

「水を止めたぞ!!」
「へぇー。」
「……なっ!!困るだろう!!もぅ水が無くなるぞ!!」
「それがどうした!!」

 湧き水から川になって流れてきている水が茶色になっている。

 ワーガに見て来てもらうように頼んだ。
 チールは、皆んなが慌てて見に行くと思っていたのに、誰も動かない事に慌てている。
 私達にはスマホのビデオ通話があるから行かなくても1人が行けば確認できる。写真に撮って後から見る事もできる事を知らない。

 ワーガから連絡が来た。チールは池に砂をどんどん入れて水が止められたように見えるようにしただけだった。多分、もぅ少ししたら綺麗な水に戻るだろう。自分の飲水が汚くなるのに何考えてんだか!!

 ワーガに監視カメラを渡して、バレないようにあちこちにつけてもらった。
 チールはしばらくギャーギャー叫んでいたが、誰も相手にしないので帰って行った。

 ワーガが帰って来たので、監視カメラ映像を見てみる。 

 水を汚したので飲む事もできず、悔しそうにしていた。
 もともと畑仕事などはしていのだろう、それなりに知識はあるようで他のエルフが作っていた畑に水やりをしたり、収穫してきた物を調理したりしていた。
 
 1人でぶつぶつ言っていたが、急にニヤリと笑う。何か良くない事を思い付いたみたいだ。

 外に出ると畑を自分で荒らし、他のエルフが住んでた家を壊したりを続け、自分の服を自分で引き裂いたり汚したりしている。さらに、顔や腕などを泥に塗ったり赤い実を潰して擦り傷のようにしたりと、いかにも何かに襲われました!と言うような格好の出来上がりだ。

 嫌な予感がして、外で待っていたら、ふらふらと走りながらチールがやってきた。

「た、大変だーーー!!お、鬼が……鬼が来たぞー!!助けてくれー!!」
 何も知らないエルフ達はビックリして、チールに駆け寄る。
「大丈夫か?」
「はぁ、はぁ、急に、やって来て村で大暴れしたんだ!!」
「何??」
「ここにも来るかもしれない!!何とか村を守ろうとしたが………くっ!!」
「傷だらけじゃないか!」
「大切な皆んなの村を守る為だ。傷くらい何でもないが………守り切れず…………うっ………申し訳ない!!畑も荒らされてしまった…………。悔しいが、ここに逃げる事しか出来なかった!!」
「そうか……、チール悪かった。そんなに村の事を考えてくれていたんだな。」
「当たり前の事だ!!」
「………よし、俺が陽菜さんに頼んでやるよ。ここに匿ってもらえるように!」
「そーだ、俺も一緒に頼みに行くよ!ここで一緒に暮らそう!」
「………いや、だが俺は………あの場所を守らなくては………。」
「こんなに傷だらけで1人で戻っても仕方ないだろう。私達も陽菜さんに頼んでみる。」
「………いや、しかし。失礼な態度をとってしまったし……。」
「陽菜さんは、優しい人だから話せばわかってくれるさ!」
「おーい、陽菜さん!!お願いがあるんだ!!」

 さーて、どうしようかなぁ。このまま本当の事を皆んなに見せて追い返す事も出来る。でも、なんだかこれで終わらない気がするし、一度受け入れてみて、様子を見てみよう。

 ワーガやアルが本当の事を言いそうになったが、そっと止めてメールで様子を見るから従ってほしいと頼む。

「チール。いいですよ。大変でしたね。」
「……も、申し訳ない……うぅっ……グスッ……、失礼な態度をとったのに………。」
 泣きながら謝る。演技ならたいしたもんだ!

 少し離れた所にチールだけの小さな家を出して、中は監視カメラだらけにしておいた。
 
 さらに、温泉に連れて行きアルに体を洗ってもらうと、傷は綺麗に無くなった。
 
 その姿を見てエルフ達も、不思議そうにしていたが、様子を見る為にわざと受け入れたと知ったワーガやナナガが傷薬を塗ったからと誤魔化してくれる。

 新しい服に着替え、今日はもぅ夜になるし休んだ方がいいと家に案内して、トイレの使い方や、冷蔵庫の使い方などを教えて、外から鍵をかけた。
 ウロウロされると困るから、朝一に鍵は開けに来るが、しばらく閉じ込めておこう。


 

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