上 下
154 / 185

水汲みの辛さ

しおりを挟む
 一つの籠を背負い、両手にも籠を持つ。
「くっ………お、重い。」
 少しふらふらしながらもなんとか歩き出す。
 私は何も持たずに歩いているからナダが遅れてしまう。
「おい!こんなに重いのだから手伝え!せめて一つでも持て!!」
「何言ってるの!もっと力のない女の人達や子どもが毎日毎日お腹が空いた状態で、重たい水を運んでいたんだよ!たった一回の往復で弱音なんか吐いてたら叩かれて酷い目に合ってたんだから!!1人で頑張りなさい!!」
 それからは文句も言わなくなり、なんとかオアシスに到着した。もぅ夕方だった。
 ナダ1人で芋を調理する。フルーツの食べ方も教えて、私はオアシス村に帰る。

「何?お前は帰るのか??」
「もちろん!明日の朝に、また来て畑作りの続きをしてそれで私の役目は終わり。じゃあ、また明日ね!」

 トラックでブーンと帰る。

 オアシスでは、タイカさんとナルダさんが監視カメラを見ていた。
 私もお風呂に入ってから映像を見に行くと、慣れない仕事で疲れ果てて爆睡しているナダが映っていた。

 朝になり、約束通りにオアシスに行き、朝ご飯の作り方を教えて、畑作りの続きをする。食料がそれなりに残っていたからわざと数日経たないと収穫出来ないような野菜の苗にしてある。

 今日は5畝耕して、さつま芋や人参など育つのに時間がかかる野菜を植えた。
 穴を掘って果物の苗木も植え、釣り竿で魚を釣る事も教える。全ての野菜の食べ方も教えておく。
 昼もナダが芋を茹でていたので、少し調味料を増やしておいた。

 苗も少し多めに出して、肥料なども出して、薪運びが大変だろうから一輪車も出しておいた。

「じゃあ、私はこれで。畑の水やりを忘れないようにね!」
「………あぁ。」

 軽トラで夕方にはオアシス村に着く。これでしばらく様子を見よう。ナダはしばらく自分の生活に精一杯でこっちにちょっかいをかける暇はないはずだ。

 監視カメラ映像チェックは、ナルダさんに任せて私は、この大陸に他の人達がいないか探しに行く事にした。
 ナダでかなり時間を使ってしまった………。こんなに植物が育ちにくい所だから、食べる物も少なくて困っている人達がいる可能性が高い。急ごう!!

 朝にいつものメンバーで出発する。道路を出しながら進んで行くが、また何もない荒れた土地が続く。
 ゆきちゃんもいるから、ゆっくりペースで途中休憩も増やしながら2日経った。

 少し高い山が見えてきて、山の手前には人間達の暮らす村が見えてきた。

「こんにちは!私は人間の陽菜と言います。ここの代表の方と話しがしたいのですが。」
「俺が村長をしている。」
「そうですか。あの、突然すみません。食料は足りてますか?」
「は??……足りているはずがないだろう。ここは何も育たない。」
「そうですよね。じゃあ私達と一緒に畑作りをしませんか?」
「………どういう事だ?もしかして、お前は鬼達の仲間か?俺達を騙すつもりか?」
「いえ、そんなつもりはないです。鬼がいるんですか?」
「あぁ、俺達を食おうと狙っているに違いない!あの山にいるんだ。」
「へぇ。誰か食べられたんですか?」
「いや、まだだ!だが、食べ物をあげるから家に遊びに来いと言って、近づくと急いで飛び出してくるんだ。絶対に俺達を捕まえようとしている!」
「そうですか………。」
「あぁ、だからお前も気をつけろよ!!」
「ありがとうございます!その鬼は1人だけなんですか?」
「そうだ!他にも鬼は沢山いるが、ここからは見えない山の反対側に住んでいると聞いている。食べ物が無くなって、俺達を食いに1匹だけここに来ているんだ!」
「へ、へぇ~。あの、畑作りしますか?」
「ん?そうだった!畑を作っても何も育たないぞ!」
「じゃあやって見せますね!」
 耕運機を出して肥料を撒き、ルイ君を呼んで耕してもらった。
 なんとなくだけど、鬼はオーガな気がするからワーガ達には遠くに待っていてもらってる。
 実のついたトマトの苗などを植えて、水道も出す。

「ほら、これで大丈夫ですよ。」
「……………すごい!!」
「こんな畑を増やしませんか?」
「是非、お願いしたい!!」

 ルイ君に耕運機の使い方を教えてもらい、村人を集めて肥料を撒いたり、苗を植えたりをする。
 その間に、おにぎりを大量に出したりと食事の準備をした。

 外に大きなテーブルを出して、おにぎりやお茶、卵焼き、漬け物などを並べていく。
 皆んな美味しいと沢山食べてくれた。全員ガリガリでふらふらしている。
 子どもも2人いたが、弱って動ける状態じゃなかった。母親が無理矢理おにぎりを食べさせようとしていたので止めて、お粥やスープを出して少しずつ食べてもらった。
 少しだけど、唇の渇きや目の窪みがマシになったような気がする。
 ジュースも出して、飲めるだけ飲んでもらう。
 今日一日、少しずつ食べ物と水分を摂ったら、かなり楽になるはずだ。
 公民館や家を出して、ゆっくりできる涼しい場所も用意した。

 ルイ君にここを任せて、私は山の鬼の所に行く事にして、ワーガ達と合流する。

 少し遠回りをして、さっきの村から見えないようにして、車を停めてワーガに背負ってもらう。ゆきちゃんはナナガが背負ってくれ、アルは走ってついてくるようだ。

 なんだかワーガに背負ってもらうのも久しぶりだなぁ~と考えているうちに鬼の家に到着した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。 女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。 ※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。 修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。 雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。 更新も不定期になります。 ※小説家になろうと同じ内容を公開してます。 週末にまとめて更新致します。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

処理中です...