いきなり異世界って理不尽だ!

みーか

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神様じゃない!

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 アルと奥さんのラルがギャーギャー言ってる間、息子はひたすら食べていた。
 早送りで見ていると、ずっと食べて無くなったら取りに行き、また食べて……。さらにアルもラルも怒ってお腹が空くのか、やけ食いのように食べていた。
 そりゃ食べ物も無くなるわ!1日半で食料空にするって………。
 朝も起きたらすぐに食べていた。夕方になり息子が食料が無いと言うから今、探しに行っている。
 食料庫代わりの穴から声が聞こえてくる。ここはカメラを付けてないけど、入り口辺りのカメラから音声だけは聞けた。
「えっ、もぅほとんど残ってないじゃない!!」
「他の所に隠してるんじゃないか??」
「そーね!これだけなんて事はないはずよ!探しましょう!」
 3人で出てきて、次々に色んな部屋に入ってガサゴソとしている。
 服なんかは、新しいのがあるから持って来なくてもいいし、食料もいらないと言ってあった。大切な物だけ持って引っ越して来てと伝えたけどほとんどが手ぶら。
 服というより、ボロ布を抱えて出て来たが、食べ物はなかったらしい。
 着れるだけ着て暖かくしている。でも、息子のお腹はグーグーと鳴りっぱなしだ。
「だいたいバルが食べすぎたのが悪いんだ!」
「だって、好きなだけ食べていいって言うから……。」
「まさか本当にあれだけしか食料が無いとは………。」
「そっ、そーよ!バルは悪くないわ。きっと里のヤツが皆んな持って行って意地悪したのよ!」
「そーだな。アイツら、許さん!!」
 激怒しているが、どうする事も出来ず、鍋に水と少しの芋を入れて「不味い、不味い!」と言いながら3人で食べていた。

 もぅ少し放置しよう。全く反省してない。食べ物だって全部置いてきてもらったのに、好き放題するから無くなるんだ!
 自分達で畑でもすれば食べていけるだろうけど、それもしようとせずに全部を里の人達の所為にして怒ってる間は、無視しよう。

 はぁー、無駄な時間だった。ファーナさんに電話してアル達の様子を見る限り助ける必要はないから、もうしばらく放置しようと伝えた。ファーナさんも同じ意見で、苦労しないとわからない事もあると自分勝手なアル達に怒っていた。

 とりあえずノーモ達と出会った公民館まで車で行き、公民館で一泊する事にした。
 花火の失敗を教訓にして、東京タワーを出してライトアップしてみた。さらに、花火を数発打ち上げておく。
 公民館から少し離れた場所にログハウスを幾つか出してドアを半分開けたまま暖炉で部屋を暖めて、薪ストーブの上に、ポトフを鍋に入れて置いておく。
 外には露天風呂や暖かい脱衣所に着替えやタオルなども置いてある。
 本当なら、好きに使ってくださいとか書いておきたいけど、字がない世界だから誰も読めない。
 露天風呂の入り方や、ポトフが食べ物だと分かるように写真や絵を描いて貼ってある。

 私達は、公民館でお風呂に入ってご飯を食べて、ぐっすり寝る事にした。

 朝起きて、外を見たらエルフやドワーフ、人間たちが沢山いて玄関の前に並んでいる。
 急いでワーガを起こして一緒に外に出ると用意した着替えを着込んだ人達が皆んな立膝をついて礼をする。
「あっ、あの~……。」
 声をかけると、ハッと顔を上げて怯えるような目で私を見る。
 えぇーー、何かした??怖いんですけど……。

「わ、われわれは、ここここらにすすすす住んで………いる……。ああああああなた様は…………かかかかかかかか神さささささま……ででですね?」
「えっ?違いますけど。」
 ざわざわと騒がしくなる。
「えっと、私は陽菜と言う人間です。船に乗って遠くから来ました。ここの人達が困ってたら助けようと思って来たんです。だから神じゃないですよ。」
「や、やはり!!神様だー!!」
「えっ?いや、だから神様じゃないって……」
「あのような素晴らしい食べ物は神様の食べ物に違いない!!皆の者、神様に貢ぎ物を!!」
「はっ!!神様、どうかこれをお納めください。」
「いや、だーかーらー、神様じゃないって!!」
 ツッコミながら差し出された物を見ると、人間の赤ちゃんだった。
 大慌てで受け取り、戸惑っているとさっきのエルフのお爺さんが頭を下げたまま話す。
「大昔からの伝説なのです。食べ物を持った神様が現れて、私達を助けてくれると。神様には、貢ぎ物が必要で、人間の赤子がいいと言い伝えでありました。」
「いや、だから私は神様じゃないし、貢ぎ物もいらないから!!この子の親は?」
「受け取ってもらえませんのか??………あぁ、何が間違ってしまったんじゃ!!」
 オロオロするお爺さん。もっとオロオロする私………。話しが通じない!!
「いや、聞いて!!受け取るとかの話しじゃなくて、私は神様じゃありません!!」
「おぉ、何という事だ!!神様がお怒りだ!このままではわしらは住む所も食べる物もなく死んでしまうだろう……。」
 もっとざわざわし始めた。全く話しを聞いてくれない。ワーガをみるが、ワーガもどうしたらいいのかわからないようだ。

 ワーガに赤ちゃんを抱っこしてもらって、スピーカーを出して話す。
『私は神様じゃない!怒ってもいない!!あなた達に住む場所と食べ物を用意します。だから話しを聞いてください!!』
「ははーー!!神様、ありがとうございます!!」
 ダメだこりゃ。


    
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