いきなり異世界って理不尽だ!

みーか

文字の大きさ
上 下
85 / 185

悪魔の目的

しおりを挟む
 かなり進んだ頃、村らしきものが見えてきた。
 
 バスからオーガ達と一緒に降りて挨拶に行く。
 すんなりとOKしてくれ、他の村にも伝えに行ってくれると言う。
 ただ条件があり、ここらの村には、最近山からエルフやドワーフの女性がふらふらと出てくるらしく、数人づつ匿っている。その人達も一緒に連れて行ってほしいとの事だった。

 それは、もちろんOKだ!ここに居るエルフの女性に会わせてもらう。これでも元気になったんだと教えてくれるが、ボーッとしていてなんとか座っているような状態だ。

 水筒に入れて持ってきている果物のジュースを一口飲ませる。
 少し反応があったので、コップ一杯飲んでもらった。
 すると、夢から覚めたように、辺りを見て不安そうな顔をする。
「あ、あの、ここは?」
「ここはオーガの村ですよ。このオーガがあなたを助けてくれたんです。山からふらふらと出てきたそうです。」
「山から………、あっ!!」
 急にガタガタと震え出して真っ青になる。
「大丈夫?ここは安全ですよ!」

 もぅ一杯ジュースを注いで、落ち着くように飲んでもらう。
 
「山に連れて行かれて、魔物に魔力を吸われて……、その魔物は、何か不気味な黒い塊に食べられて……。そっ、それで魔力が少なかった私は用が済んだから消えろと魔物に追われて山を降りたんです。魔物に魔力を吸われてから、なんだかボーーっとしてて、他にも沢山の人達が……。」

 よく見ると、体のあちこちに虫刺されのような痕がある。

 虫刺されの薬を出して塗ると、少し赤みが引いたように見える。毒虫用の薬だったから効いたのかもしれない。

 ここにいる他の人にもジュースを飲んでもらい、バスに乗ってもらう。他の村にもバスで向かっていて、エルフやドワーフの女性にはジュースを飲ませるようにお願いしてある。

 先にバスで帰る。バスから降りると、畑仕事をしていたリーダーのエルフが走って来た。
「あぁ、無事で良かったぁー!」
 話しを聞いた女性を抱きしめている。
「俺の娘だ。大切な娘を、山の中に置き去りにするなんて……なんて事をしたんだ!!」
 泣きながら謝っていた。かなり洗脳が解けてきているようだ。
 他にも、奥さんや娘と再会でき、泣きながら謝っている人達が沢山いた。
 バスが次々に到着して、順番にシャワーや食事をしてもらう。
 エルフ、ドワーフの女性達もシャワーを浴び綺麗にしてから虫刺されの薬を塗って食事をしてもらった。
 しばらくすると、ボーッとしている人はいなくなり、帰って来れた事を喜んでいた。

 川向こうに住んでいたオーガのリーダーが話しがあると来てくれた。

「こんなに良くしてもらって、本当に嬉しいです。ありがとう。」
 このオーガは、言葉使いも丁寧だし上品な感じだ。綺麗にした事で男前に拍車がかかり、ニコッと微笑むと目がハートになってしまいそうだ。
「代表して私が伝えに来たのですが、聞いていただけますか?」
「はっはい、もちろんです。」
 ダメだダメだ、ポーッとなっていた。ワーガが横でジロリと睨んでいる。
「最近になって、山から女性が出てくる事が増えていたそうです。私の村は山から離れてましたから、気づきませんでしたが、これからも可能性があると心配しています。もしも、出来るようなら今までの村の場所辺りに、一つ村を作っていただけませんか?」
「なるほど。そうですね。わかりました。オーガでなくても、ドワーフやエルフに住んでもらえるといいかもしれません!」
「ありがとうございます。こんなに素敵な場所で生活できるなんて夢のようです。」
「今日は、もぅ遅いので明日の朝、行きましょう。ダンドンさんやライルさんに誰が向こうで暮らすか聞いてもらおう。」
「あっ、申し遅れました。私は村長をしております、オーガのホウガと言います。」
「あっ、ご丁寧にどうも。私は陽菜と言います。」
「陽菜さんですね。これからもよろしくお願いします。」
「こちらこそ。何かありましたら、遠慮せず私に言ってください。」
 緑のホウガが、にこっと微笑む…。イケメンの破壊力…凄まじい!!

 ライルさんとダンドンさんに聞いてもらい、今日のうちに向こうで暮らすメンバーを決めてくれた。

 まだ少し時間があるので、オーガの里まで行き、様子を聞く事にした。
 やはり怯えている人が多く、夜はうなされているようだ。
 子どもは、少し慣れてきて笑顔を見せる子もいるようだ。
 親のいない子も多く、孤児院のような物を作るのはどうかと相談された。
 もちろんOKなので、公民館をもう一つ出して、ダイニングテーブルと椅子を出したり、ベビーベットや子ども用布団、おもちゃなども出しておいた。後は、避難所に行けば子ども用品も置いてあるので、使いやすい物を選んでもらう事にした。
 家も増やしておいた。退院しても家がなかったら困るだろう。

 トンネルを抜けてシェアハウスに帰る。ご飯を食べながら報告を聞いた。
 洗脳はほとんど解けているようだ。奴隷にしていた人達に謝りたいと言う人もいるらしい。
 明日から家を選んで住んでもらう事にした。
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

処理中です...