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ドワーフの約束

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 麦茶を容器ごとと、煎餅を出してお茶請けにする。
「お待たせしました。どうぞ。」
 麦茶を注いで、お煎餅も勧める。お茶を一口飲んで、ポツリポツリと話してくれた。
「昔に、人間の男がわしらの里にやってきたんだ。その男に、食べる物が無くなり住む場所も無いから、わしらの里においてくれと頼まれた。」
「頼まれたんですか??」
「そうだ。食べ物を分けてもらう代わりに出来る事はなんでもすると頼まれた。その男の他にも人間の仲間がいて、ちょうどこの丘の下辺りに住んでいるから、助けてほしいと言われた。」
「でも、ここの人達は、ドワーフやエルフが人間を奴隷にする為に寝ている間に拐っていくと言ってましたよ。」
 ダンドンさんは、ビックリした顔をしていた。
「この辺りで食べられている芋があるだろう?あれも、わしらドワーフがここの土地でも育ちそうな芋の苗を持って来て植えたんだ。それに、人間は弱い。武器も無い。わしらドワーフは、鍛治仕事が得意で少しだけ取れる鉄を加工して武器を作り狩りもする。武器があるから、魔物が多い山の中でも生きていける。山の中は植物も沢山あるし、木もあるから家を建てる事も出来る。この辺りにある家は昔、わしらが木を運び建てたんだ。今はもっと家らしい家に暮らしているが、人間はわしらを怖がるから家も新しく出来なかった。」
「じゃあ、なんで奴隷なんて扱いをするんですか?」
「それは、その男の話しが人間に伝わっていた時は良かったんだ。だんだんとドワーフとの約束を忘れ、逃げ出す者や、手伝いを頼んでも断る者が出てきた。男との約束は、家を建てたり、食べ物を都合してもらう代わりに、ドワーフの仕事を手伝うと言うもの。里の周りは魔物が沢山いるから、人間が逃げ出し1人でウロウロしていたら死んでしまう。仕方なく逃げられないように閉じ込めるしかなかった。」
「……それでも奴隷にしなくても……。それに、勝手に連れ去られたら怖いですよ。」
「それも、その男との約束だ。人間は弱く、すぐに死ぬ。人間が滅びてしまう事を心配して、ドワーフやエルフに人間の繁殖も頼んだんだ。ドワーフや、エルフが養える人間の数にも限りがある。人間は、短い寿命だからこそ子どもを沢山産む。下で暮す人間が生きていくのは難しいから、わしらの里で増やして、下の人間も数が減らないようにしてきた。」
 衝撃的だった。人間を繁殖させるなんて………。
「だが、こんな綺麗な家に住み、食べ物も沢山あるなら心配はいらないな。もぅ、あの男との約束も必要ないだろう。エルフにも伝えて奴隷をここに返そう。」
「……ありがとうございます。奴隷にして鎖に繋いだり、鞭で叩いたりした事は許せませんが、私から皆んなに説明して理解してもらいます。」
「……その、奴隷にしたと何度も悪い事のように言っているが、人間が望んだ事じゃないのか?」
「えっ?それは、違うと思います。誰もそんな事望まないはずです。」
 特殊な性癖持ちなら喜ぶかもしれないが、そんな変態滅多にいないだろう。それとも、そんなにヤバイ人がいたの??怖すぎる~!
「人間が約束を忘れてしまった頃、わしらの夢に神様が出てきて、人間を守る為には奴隷にする事が1番良い。逃げ出さないよう鎖で繋ぎ、仕事を早く覚える為にも鞭で叩いて教える事が人間の為になる。時々人間を拐いに行く事も夢のお告げだった。それを望んでいると。神様は、人間の姿だったから、わしは人間が本当に望んでいるのだと思ったんだ。わしが人間担当だった事もあって、夢のお告げ通りにしたんだ。他にもお告げの夢を見た仲間がお告げを守るように言ってきた。」
「………。その、神様って、髪の毛も髭も白い、おじいさんだった?」
「いや、人間の年寄りではなかった。髪の毛も黒かったぞ。エルフの人間担当も同じようなお告げがあったと言っていた。だから、同じように奴隷として扱っていた。人間に優しくすると天罰が降る、人間に知恵を与えると反乱を起こしてドワーフもエルフも絶滅するだろうとも言われた。」
 じゃあ、私の知ってる神様じゃない。神様は1人じゃないのかなぁ?この前の電話でも誰かに呼ばれたって言ってた。それに、奴隷の始まりも知らないようだった。じゃないと奴隷を助けてやれ、なんて言わないはずだし……。ダンドンさんが嘘を言ってるようには思えない。人間が不利になるような内容のお告げも気になる。
 ぶつぶつ言いながら考え込んでいたら、
「おい、そろそろ帰る。あと2回ほど夜が明けたら奴隷を連れてここに来られるだろう。エルフの里にも行って、一緒に連れてくる。」
「あっ、ごめんなさい。考え込んでしまって……。わざわざ連れて来てもらうんだし、今までの事もあるし何かお礼がしたいです。ドワーフさん達が好きな物ってありますか?」
「わしらにお礼??お告げとはいえ、人間に酷い事をしてきたのに………。」
「でも、知らなかったんですよね?それに、最初は人間が頼んだ事だったんですよね?……誤解があったんです。仕方ないですよ。私は被害者じゃないですし。」
「そーか……。わしらドワーフは酒が大好きだ!森の木の実で酒を作って時々酒盛りをするのが楽しみなんだ。」
「分かりました。」
 荷物になるけど、大きなリュックと日本酒とワインを5本づつ、食べなかった煎餅も包んで、後は西瓜を美味しいと言ってくれたので1個リュックに詰めた。よく考えたら嫌がらせのように重たいお土産になってしまった……。ごめんね、ダンドンさん……。
 私から皆んなに説明をしておくと約束して、ダンドンさんは帰って行った。
 リュックは、ムッキムキのダンドンさんには苦にならないようだった……良かったぁ~。
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