異世界では人間以外が日本語でした

みーか

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58 ニーン国へ

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 一度孤児院に戻る事にした俺とトーマスさん、ポンタさん、コインさんと馬車に揺られて帰った。

「おぉ、お帰り!!」
「えぇ??王様??」
「ははははっ、土いじりが楽しくてな。」

 完璧な農家のおじさんの格好をした王様がニコニコと出迎えてくれた。
 周りの城の兵士の人達も苦笑いだ。

「ずっと畑仕事手伝ってくれてたんですか?」
「ああ。体を動かして汗を流すと気持ち良い。しかも、ご飯がますます美味しく感じる。自分の手で収穫した野菜なら尚のこと!!城で畑を作ろうと考えている。シオン、落ち着いたら城に来て農業を教えてくれるか?」
「勿論です。」

 俺の家で状況説明する事になり、リーナさんにお茶と軽い食事を用意してもらった。

「今は、落ち着いてきてます。でも、ニーン国の兵士が来て働いてくれる人を連れて行こうとしてました。それに、城で働いていた人達に聞いてみたら、王が自分の魔力で1番最初にトーマスさんが作った機械で食料を出しているようです。」
「あれは、初めて作った物で効率が悪い物です。なのでかなりの魔力を使って、ほんの少ししか食料が出てきません。」
「しかも、城に残っているのも侍女2人と、料理長1人、あの兵士1人らしいです。だから、食料もなんとかなっているのかもしれません。」
「ふむ。使者を出すと戻って来られないだろう。……よし、透明になって手紙だけニーン国に届けてもらおう。トーマス、手紙を書いてくれないか?」
「勿論です。」
「手紙を読んでも反応が無ければ、諦めよう。」

 トーマスさんが城の兵士が持ってきた上等そうな便箋で王様が言う通りに手紙を書き、蝋で封をした。

「王様、俺が手紙持って行ってもいいですか?」
「シオンが?危険ではないか?」
「透明になれるなら大丈夫だろうし実際に見てきたい。」
「……………わかった。しかし、1人で行かせる訳にはいかない。誰か一緒に行ってくれる者はいかないか?」
「俺が行きます。」
「コインさん、いいのか?」
「シオン1人くらい守ってやる。」
「ありがとう!!」

 リーナさんに弁当を作ってもらい野宿の準備をしてコインさんと出発した。
 山の中に入ってニーン国に出た辺りで今夜は休む事にした。

 次の日の朝、トーマスさんが作った透明になれる帽子を被り、さらに透明になった者同士を見る事ができるメガネをかけて出発する。
 本当は、王様にマントを借りる予定だったけど、トーマスさんがもしもの時にとマントを改良して作ってくれた帽子とメガネに俺の魔力を込めて使ってみる事になった。
 お互いが見えるのがとても便利だし、動きやすい。さすがトーマスさんだ。でも、魔力を使わないとただの帽子とメガネになってしまうから、3日しか持たない。

 俺が住んでた貧民が暮らしていた辺りまで行くと、元からボロボロだった家がほとんど潰れていた。畑も雑草だらけで野菜も枯れているし、誰もいない。
 もう少し進むと、平民が住んでいた場所だ。
 家も崩れている所が多いけど、自然にではなく、誰かが壊したような家が多かった。コインさんが貴族達が人を探すのに無茶苦茶していたと教えてくれた。ここにも誰もいない。

 城に近づくと貴族達の家があるけど、人の気配はない。昼ご飯を食べるのに鍵のない物置き小屋でも借りようと大きな家に入ってみると、普通に玄関の鍵が壊され開いている。コインさんと中に入ってみると、荒らされてはいない。調理場が1番荒らされていて、食べ物を探し回ったんだろうなと思った。
 テーブルと椅子を借りて朝作った簡単なサンドイッチを食べ、2階にも上がってみた。部屋はそのままだった。
 きっと何も持たずに、そのまま家族でアニマ国まで来たんだろうな。高そうな指輪やネックレスもそのまま机の上に置いてある。
 テーブルを拭いて綺麗にしてから城に向かった。

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