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19 ニーン国

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 次の日から、農業研修が始まった。米の時期は過ぎていたから田んぼの場所を川の近くに決めて、水を引いて耕したりと来年の春に向けて準備を進めた。
 後は、ひたすら広い土地を皆んなで畑にしていく。
 草を抜いて、土を耕し畝を作って、川から水も引いてきた。
 
 すごくよく働いてくれて、1か月ほどで畑にすることができた。
 畝を作った所から、野菜を植えていった。

「こんなに沢山作って大丈夫なのか?」
「国王様が余った分は全部買い取ると言っていたぞ。」
「そうなのか?でも、毎日野菜を城に送っているから充分なんじゃないか?」
「まぁ、城には沢山働いている人がいるし、特に城の兵士達は食べ盛りだからな、いくらでも食べられる。」
「そっか、なら安心だ。」
「シオン、ここは何を植えるんだ?」
「そこは、あのサクランボの木を植えようと思ってる。」
「畑を囲うように木を植えるのか?」
「うん。果物の木は孤児院の裏側に沢山植えたけど、畑の周りにも色々と植えようと思ってるんだ。どうせなら果物の方がいいかなと思うけど、どう?」
「いいじゃなか!どーせなら食べられる物がいい!柿なんかも植えてくれ!」
「ツキノさん、柿好きなんだ?」
「おぉ、柿は好物なんだ。」
「そっかー。柿はあまり植えてなかったから沢山植えるよ!」
「やりー!!柿食べ放題だな!」
「まだ苗木だから食べられるようになるには何年もかかるぞ。」
「そ、そうなのか??」
「うん。もっと木が大きくならないとダメなんだ。」
「そうか……。それまで俺はここで暮らせるかなぁ。」
「ツキノ、今朝城の国王様からの使いの者が来てな、この町でずっと暮らしていいそうだ。戻りたければ5年で城の兵士に戻れるが希望すれば、ここにいていいそうだ。晩飯の時に伝えようと思っていたんだ。」
「そうなのか!!じゃあ、ここに残りたいな。こうやって体を動かしている方が性に合ってる。」
「そうだな!俺もだ。なんなら、この町で可愛いお嫁さんもらって家を建てたいな~なんて思ってたんだ。」
「そうだな。田舎から両親を呼んで一緒に暮らしたい。もう少し農業に慣れて生活が落ち着いたらと考えていたんだ。」
「俺も、みんなと一緒がいい!」
「シオン、嬉しい事言ってくれるじゃねーか!よし、もうひと頑張りするぞ!」
「「「「「「おう!!」」」」」」

 毎日、野菜作りを頑張っていたある日、兵士が馬車で町中、鐘を鳴らしながら走り回った。

「何?」
「あぁ、シオンは知らないか。あの鐘はな、ニーン国が攻めてきたと知らせる合図だ。」
「え?ニーン国はアニマ国を攻めてきてるのか?」
「あぁそうだ。話しは後だ、早く孤児院の中に入ろう。俺達は、他の兵士と合流するぞ!!」

 急いで孤児院まで戻り、城の兵士もコインさん達も着替えて武器を持って出ていった。メイトさんが俺に説明してくれた。

「ニーン国は1番領土が狭いんだ。アニマ国とアーク国に囲まれるようになっていて、昔から度々土地を奪おうとしてくる。山があるからすぐには攻めて来れないが、この山に近い町は何度か犠牲になった事もあるんだ。ニーナやクーン、ケーンもそれが理由でここにいる。」
「……人間にやられたのか?」
「そうだ。」
「そんな………。」
「おい、シオンが落ち込む事ないぞ!お前が優しい人間なのは皆んな知ってるさ。運が悪かったんだ。」
「でも………。」
「シオン、わし達はシオンに会えて幸せだ。だからあの子達もシオンに懐いているだろ?シオンのおかげで美味い飯が食える。」
「……うん。」
「それにな、アニマ国もアーク国も戦争がしたいわけじゃない。土地だってニーン国に分ける事だって提案してるんだ。ただ、ニーン国の国王と言葉が通じず、何度話し合おうとかけ合っても応じない。」
「アーク国ってどんな所なんだ?」
「あぁ、アーク国は隣の国だが、魔族が暮らしている。なぜか魔族と聞くと怖がるやつがいるらしいが、見た目は人間とも獣人とも全く違うが、とても穏やかで優しい種族だ。」
「そうなんだ。」
「それに言葉も同じだしな!」
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