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87 村の未来
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桃の所に戻って、山犬様を呼んだ。
「呼んだか?」
「はい。山犬様、困った事になりました。俺が町に行ったりしたから、数人の男達がこの村を探そうとウロウロしています。」
「そうか……。いつかはこんな日が来るとは思っていた。黒蜘蛛が悪いのではない。昔は、こんな山奥まで人が来ることは無かったからな。それに、知られたとて、特に問題もなかった。今は、町と村とで差があり、時代に取り残された場所となってしまった。神様もそろそろ山神の村を無くす事を考えねばと言われてな。」
「………そうですか。」
「でも、村の人達はどうなっちゃうの?」
「それが問題だ。山神の家族、嫁や結婚しておらん子どもは神界に住む事ができるが、村人までとなるとな…。」
「そんな……。」
「とにかく、一度神界に戻り会議をしてくる。答えが出るまでそれぞれの山神は村を守るよう伝えてくれ。」
「わかりました。」
「ねぇ、クロモ様。私は嫌だよ。小梅とも離れたくないし、ゆきや春太とだって一緒にいたい。」
「俺も桃と同じ気持ちだ。だが、どうなるか……。」
「クロちゃんやサクラちゃん達はどうなるの?」
「それも……わからない。桃の里も今は誰も来ないような場所だが、桃も町に行ってビックリしただろ?凄いスピードで町は変わっていく。どんどん人が増えてきて、山も削られて家が沢山建っていた。桃の里だって、いつ人が来るかわからない。」
「………うん。そうだよね。」
桃も、不安なのだろう。暗い表情のまま部屋に閉じこもってしまった。
モヤモヤしながら2日が過ぎた。あの男達が、また山に入ってきた。
村に外に出ないよう伝えて、様子を見ていると、諦めきれないようで今回もあちこち歩き回っている。
しかも、今回は2人づつグループになって行動しているし、人数も増えている。
どうしよう。追い払ってもすぐに来るし、村人に何かあったら許せない。
「待たせたな。」
「山犬様!今、またあの男達が来ています。」
「うむ、知っている。神様が教えてくれてな。それで急ぎ来たのだ。」
「どうすればいいですか?」
「あの男達は危険だ。村に入れたら村の全てを奪おうとするだろう。ここが見つかれば、宝石に目が眩んで独り占めしようと争いが起こるかもしれん。欲深い人間のようだ。」
「はい、俺もそう思います。」
「とりあえず、緊急避難として桃の里に村人も村も、この家も山も全てを移す。」
「そんな事できるのですか?」
「俺1人では無理だが、この国を全て守っておられる神様が力を貸してくださる。」
「どうすればいいですか?」
「何もしなくてもいい。ほら、外に出てみろ。」
「……あっ、桃の里だ。村の跡はどうなっているのですか?」
「ただの山になっている。ほら、すぐそこが村だ。」
「本当だ……。他の山神達の村はどうなってますか?」
「他の村は、黒蜘蛛の村より田舎にあるから、すぐにどうこうということはない。」
「なるほど。」
「さて、神様の決定を伝えるぞ。皆を集めてくれ。」
「わかりました。」
桃に声をかけてサクラ達も一緒に話しを聞く事になった。
「さて、話しをしよう。まず、この村だが、元の場所に戻す事はできない。かと言って、ここで暮らす事もできない。」
「………はい。」
「選択肢は、幾つかある。一つは、村人は町に出て町の人間として暮らす。その場合、寿命も他の人間と同じになるし、見た目も年齢にあった状態に戻る。黒蜘蛛達は神界で暮らす事になり、もぅ二度と町に行く事も、村人に会うこともできなくなる。神界から一方的に見ることはできるが、干渉する事はできない。」
「…………っ。て、手紙も無理ですか?」
「そうだ。桃も小梅を見ることはできても、手紙も言葉を交わす事もしてはならない。」
「そんな………。じゃあ、サクラちゃん達は?」
「サクラ達、元動物は人間として暮らす事は出来ず元に戻ってしまう。山神の力が完全に切られてしまうからな。神界でなら今のままの姿で暮らす事ができる。」
「呼んだか?」
「はい。山犬様、困った事になりました。俺が町に行ったりしたから、数人の男達がこの村を探そうとウロウロしています。」
「そうか……。いつかはこんな日が来るとは思っていた。黒蜘蛛が悪いのではない。昔は、こんな山奥まで人が来ることは無かったからな。それに、知られたとて、特に問題もなかった。今は、町と村とで差があり、時代に取り残された場所となってしまった。神様もそろそろ山神の村を無くす事を考えねばと言われてな。」
「………そうですか。」
「でも、村の人達はどうなっちゃうの?」
「それが問題だ。山神の家族、嫁や結婚しておらん子どもは神界に住む事ができるが、村人までとなるとな…。」
「そんな……。」
「とにかく、一度神界に戻り会議をしてくる。答えが出るまでそれぞれの山神は村を守るよう伝えてくれ。」
「わかりました。」
「ねぇ、クロモ様。私は嫌だよ。小梅とも離れたくないし、ゆきや春太とだって一緒にいたい。」
「俺も桃と同じ気持ちだ。だが、どうなるか……。」
「クロちゃんやサクラちゃん達はどうなるの?」
「それも……わからない。桃の里も今は誰も来ないような場所だが、桃も町に行ってビックリしただろ?凄いスピードで町は変わっていく。どんどん人が増えてきて、山も削られて家が沢山建っていた。桃の里だって、いつ人が来るかわからない。」
「………うん。そうだよね。」
桃も、不安なのだろう。暗い表情のまま部屋に閉じこもってしまった。
モヤモヤしながら2日が過ぎた。あの男達が、また山に入ってきた。
村に外に出ないよう伝えて、様子を見ていると、諦めきれないようで今回もあちこち歩き回っている。
しかも、今回は2人づつグループになって行動しているし、人数も増えている。
どうしよう。追い払ってもすぐに来るし、村人に何かあったら許せない。
「待たせたな。」
「山犬様!今、またあの男達が来ています。」
「うむ、知っている。神様が教えてくれてな。それで急ぎ来たのだ。」
「どうすればいいですか?」
「あの男達は危険だ。村に入れたら村の全てを奪おうとするだろう。ここが見つかれば、宝石に目が眩んで独り占めしようと争いが起こるかもしれん。欲深い人間のようだ。」
「はい、俺もそう思います。」
「とりあえず、緊急避難として桃の里に村人も村も、この家も山も全てを移す。」
「そんな事できるのですか?」
「俺1人では無理だが、この国を全て守っておられる神様が力を貸してくださる。」
「どうすればいいですか?」
「何もしなくてもいい。ほら、外に出てみろ。」
「……あっ、桃の里だ。村の跡はどうなっているのですか?」
「ただの山になっている。ほら、すぐそこが村だ。」
「本当だ……。他の山神達の村はどうなってますか?」
「他の村は、黒蜘蛛の村より田舎にあるから、すぐにどうこうということはない。」
「なるほど。」
「さて、神様の決定を伝えるぞ。皆を集めてくれ。」
「わかりました。」
桃に声をかけてサクラ達も一緒に話しを聞く事になった。
「さて、話しをしよう。まず、この村だが、元の場所に戻す事はできない。かと言って、ここで暮らす事もできない。」
「………はい。」
「選択肢は、幾つかある。一つは、村人は町に出て町の人間として暮らす。その場合、寿命も他の人間と同じになるし、見た目も年齢にあった状態に戻る。黒蜘蛛達は神界で暮らす事になり、もぅ二度と町に行く事も、村人に会うこともできなくなる。神界から一方的に見ることはできるが、干渉する事はできない。」
「…………っ。て、手紙も無理ですか?」
「そうだ。桃も小梅を見ることはできても、手紙も言葉を交わす事もしてはならない。」
「そんな………。じゃあ、サクラちゃん達は?」
「サクラ達、元動物は人間として暮らす事は出来ず元に戻ってしまう。山神の力が完全に切られてしまうからな。神界でなら今のままの姿で暮らす事ができる。」
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