山神様への嫁入り

みーか

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 新しい山神になり、十年ほどが経った。それぞれ、子が産まれて幸せそうにしている。
 成長は、普通の人と同じ成長速度で子育てを楽しんでいるようだ。
 
「ねぇクロモ様。町に買い物に行きたい!」
「そうだな、何年も行ってないし一緒に行くか。」
「うん!やったー!!」

 まだ鳥肌だらけになるけど、吐く事はなくなったので、眠らずにクロモにくっついて町の近くまで連れて行ってもらう。
 ずっと忙しくて来られなかった分の桃の織った布を大量に持って、まずは布を売りに行く。
 初めて町に来た時に行った、反物屋に行くと、お店が全く違う様子になっていた。
 
「しばらく来ないうちに随分変わったな。」
「うん。本当にここ?」
「とりあえず入ってみよう。」

 中に入ると着物ではなく、洋服が沢山掛けてある。
 
「いらっしゃいませ~。何をお探しですか?」
「いや、あのここに布を買い取ってもらいに来たのだが……。」
「え?布ですか?……えーっと。」
「どうかしたの?」
「あの、こちらのお客様が布を買い取ってほしいって言われてて。」
「えっ?………あっ、もしかしてクロウ様ですか?」
「そうだ。」
「こちらにどうぞ。」

 奥に案内されて行くと、反物屋の女将が出てきてくれた。

「まぁまぁ、これはこれはクロウ様。お久しぶりでございます。」
「あぁ、久しぶりです。随分と店の雰囲気が変わりましたね。」
「そうなんですよ。もう反物などは売れませんからね。着物を着る人などほとんどいませんから。」
「そうだったんですね。じゃあ、この布も売れないですね。」
「いえいえ、そんな事はございません!うちは、この布のおかげでこの店を大きくする事ができました。クロウ様と奥様にはとても感謝しております。」
「この布で洋服を作るのですか?」
「そうなのですよ、奥様!随分と前になりますが沢山布を持ってきていただいた分を大切に使わせていただいておりました。以前奥様にも作らせていただきましたがウェディングドレスやベール、ストールなどの小物も作っております。大変人気の品になっております。」
「そうなんですね!」
「今日は、来れなかった分を沢山持って来たので買い取ってほしい。」
「もちろんです。それにしても、クロウ様も奥様も以前と全く変わらず若々しいですね!羨ましいです。」
「い、いえ、そんな事は……。」

 確かに女将さんは、随分と前より歳をとっておばあちゃんに近づいている。村の人達も私達も見た目が変わらないから気にしてなかったけど、今度来る時は気をつけなきゃ。
 クロモ様も、ヤバイって顔してるし、年齢を合わせるの忘れてたっぽい。

「オーナー、お茶をお持ちいたしました。」
「ありがとう。山田さん、あなたも座ってちょうだい。」
「はい。」
「こちら、今の店の店長を任せている山田です。」
「山田香織と申します。よろしくお願いします。クロウ様の事はオーナーより伺っております。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。こちら、布を織っている妻の桃です。」
「桃です。よろしくお願いします。」
「オーナーから聞いてた通りの素敵な旦那様と可愛らしい奥様ですね。」
「そうでしょう??もう本当に素敵なご夫婦なのよ!」
「オーナーが、すごくカッコイイ人がこの布を持ってきてくれるってずっと言ってたんですよ。その奥様も、とても可愛らしいと何度も聞かされました。」
「もぅ~、山田ちゃんったら!バラしちゃダメでしょ!」
「あははは、そんなふうに言っていただいて嬉しいです。あの、今回沢山持ってきたので見ていただけますか?」
「はい、もちろん。」
「これです。」
「……す、素晴らしいわ!!」
「オーナー、これは今までよりもずっと素敵ですね。」
「クロウ様、これくらいでいかがでしょう??」

 見せられた金額は、以前の5倍ほどの金額だった。
 さらに、庭の宝石に変わった小石を沢山持ってきていたので、それも見せると山田さんと女将さんは目をギラギラさせて手を取り合って大喜びしてくれた。
 店から出る時には、大量のお土産と店員全員が1列に並んでお見送りしてくれた。
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