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54 2人の嫁
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桃がソワソワと待っていたら、外から声が聞こえてきた。
桃は急いで外に出る。
「ただいま~。」
「おかえり、どうだった??」
「とりあえず中で話そう。」
サクラにお茶を淹れてもらい、話しを聞く。
「その村の山神様は、狸で嫁様も10人もいて村人もとても多かった。」
「じゃあ、結婚相手は見つかったの?」
「それがな……黒蜘蛛の子達が人気過ぎて、大狸様が拗ねてしまってな……。」
「えっ?」
「桃、そのなんと言うか、大狸様の嫁も子も素朴な顔立ちの人が多くて、村人も同じような人達で。そこに夏子が行くと男達は群がるし、女達は嫉妬する。秋男と秋夜は、その逆で人妻までが秋男と秋夜に夢中になってしまって………。」
「……そ、そんなに?」
「うむ。大混乱だった。」
「えぇ!!じゃあ、失敗?」
「いや、大狸様にはなんとか許していただき、村の娘を嫁がせると言う話にはなったんだが、夏子は大狸様の村に嫁いでほしいと言われた。それに、鶴子もあちらの村で暮らす事になった。」
「えーーー!!!」
「母様、私はあちらに嫁ぎます。鶴子も連れて行きます。」
「本当にいいの?」
「はい。私は………その、向こうの村に相手がいると分かってしまって……。鶴子の相手も分かってしまいました。」
「……そぅ。寂しくなるな。」
「桃、夏子も鶴子も里帰り出産をする事を約束してきた。だから、会えなくなるわけじゃない。」
「……良かったぁ。」
「秋男と秋夜は、それぞれ相手が見つかったようだし、1週間後に迎えに行ってくる。」
「桃、大狸様に土産を用意しろ。また、こちらから頼みに行く事があるだろうしな。」
「分かりました。山犬様にもお土産は準備してあるから、持って帰ってくださいね!」
「いつもすまんな。また1週間後、俺も来て一緒に迎えに行く事になった。その時に、夏子と鶴子も連れて行く。」
「わかりました。」
それから1週間、桃は準備に追われた。
こちらに来てくれる、秋男と秋夜の嫁は後からでも準備できるが、向こうに行く夏子と鶴子には色々と持たせてやりたい。
布、鶏や牛や豚、山羊に羊とペアを選んで多めに連れて行く事になるし、クロモは毎日町に買い物に出かけて大量に服や調理器具などを準備した。
夏子にどんな生活だったかを聞いてみると、桃が嫁に来る前の村のような生活らしい。
大狸様の村は周りに何もなく町や村に行く事も出来ず、あるのは広々とした土地と自然だけなんだそうだ。山の中ではあるが、山を切り拓いて村を作ったのではなく、小高い丘のような所に村があるらしい。
小川があちこちに流れ、クロモの畑のある庭のように背の低い草が生え、とてものどかで気持ちの良い場所だったと言っていた。
夏子と鶴子が嫁入りする日、山犬も来てくれて、2人は山犬の背に乗せてもらい、クロモは大量の荷物を持って出かけて行った。
2人がいなくなるのが寂しいけど、夏子達にも蜘蛛がついて行ってくれている。
様子は一方的に見ることができるから少しは安心だ。
外が暗くなる前に、クロモと山犬は秋男と秋夜のお嫁さんを連れて帰ってきた。
2人は綺麗というより可愛らしい女の子で、ニコニコと嬉しそうに挨拶をしてくれる。
今日は、ここに泊まってもらい明日には村に行く事にするそうだ。
山犬にお土産を渡してお礼を言ってから、秋男と秋夜の部屋に案内する。
サクラが張り切ってご馳走を作ってくれて、2人のお嫁さんは、こんなに美味しい料理は初めてだと大喜びしてくれた。
秋男のお嫁さんは、黒髪をおさげにしていて、ニコニコとよく笑い、とても話しやすい子で名前を『ゆず』。
秋夜のお嫁さんは、少し茶色かかった髪の長い恥ずかしがり屋さんだ。秋夜に隠れながらも、洗い物を手伝おうとしてくれたりと気の利く子で、『もみじ』という名前だ。
明日の朝、クロモに送ってもらい村で生活する。
桃は急いで外に出る。
「ただいま~。」
「おかえり、どうだった??」
「とりあえず中で話そう。」
サクラにお茶を淹れてもらい、話しを聞く。
「その村の山神様は、狸で嫁様も10人もいて村人もとても多かった。」
「じゃあ、結婚相手は見つかったの?」
「それがな……黒蜘蛛の子達が人気過ぎて、大狸様が拗ねてしまってな……。」
「えっ?」
「桃、そのなんと言うか、大狸様の嫁も子も素朴な顔立ちの人が多くて、村人も同じような人達で。そこに夏子が行くと男達は群がるし、女達は嫉妬する。秋男と秋夜は、その逆で人妻までが秋男と秋夜に夢中になってしまって………。」
「……そ、そんなに?」
「うむ。大混乱だった。」
「えぇ!!じゃあ、失敗?」
「いや、大狸様にはなんとか許していただき、村の娘を嫁がせると言う話にはなったんだが、夏子は大狸様の村に嫁いでほしいと言われた。それに、鶴子もあちらの村で暮らす事になった。」
「えーーー!!!」
「母様、私はあちらに嫁ぎます。鶴子も連れて行きます。」
「本当にいいの?」
「はい。私は………その、向こうの村に相手がいると分かってしまって……。鶴子の相手も分かってしまいました。」
「……そぅ。寂しくなるな。」
「桃、夏子も鶴子も里帰り出産をする事を約束してきた。だから、会えなくなるわけじゃない。」
「……良かったぁ。」
「秋男と秋夜は、それぞれ相手が見つかったようだし、1週間後に迎えに行ってくる。」
「桃、大狸様に土産を用意しろ。また、こちらから頼みに行く事があるだろうしな。」
「分かりました。山犬様にもお土産は準備してあるから、持って帰ってくださいね!」
「いつもすまんな。また1週間後、俺も来て一緒に迎えに行く事になった。その時に、夏子と鶴子も連れて行く。」
「わかりました。」
それから1週間、桃は準備に追われた。
こちらに来てくれる、秋男と秋夜の嫁は後からでも準備できるが、向こうに行く夏子と鶴子には色々と持たせてやりたい。
布、鶏や牛や豚、山羊に羊とペアを選んで多めに連れて行く事になるし、クロモは毎日町に買い物に出かけて大量に服や調理器具などを準備した。
夏子にどんな生活だったかを聞いてみると、桃が嫁に来る前の村のような生活らしい。
大狸様の村は周りに何もなく町や村に行く事も出来ず、あるのは広々とした土地と自然だけなんだそうだ。山の中ではあるが、山を切り拓いて村を作ったのではなく、小高い丘のような所に村があるらしい。
小川があちこちに流れ、クロモの畑のある庭のように背の低い草が生え、とてものどかで気持ちの良い場所だったと言っていた。
夏子と鶴子が嫁入りする日、山犬も来てくれて、2人は山犬の背に乗せてもらい、クロモは大量の荷物を持って出かけて行った。
2人がいなくなるのが寂しいけど、夏子達にも蜘蛛がついて行ってくれている。
様子は一方的に見ることができるから少しは安心だ。
外が暗くなる前に、クロモと山犬は秋男と秋夜のお嫁さんを連れて帰ってきた。
2人は綺麗というより可愛らしい女の子で、ニコニコと嬉しそうに挨拶をしてくれる。
今日は、ここに泊まってもらい明日には村に行く事にするそうだ。
山犬にお土産を渡してお礼を言ってから、秋男と秋夜の部屋に案内する。
サクラが張り切ってご馳走を作ってくれて、2人のお嫁さんは、こんなに美味しい料理は初めてだと大喜びしてくれた。
秋男のお嫁さんは、黒髪をおさげにしていて、ニコニコとよく笑い、とても話しやすい子で名前を『ゆず』。
秋夜のお嫁さんは、少し茶色かかった髪の長い恥ずかしがり屋さんだ。秋夜に隠れながらも、洗い物を手伝おうとしてくれたりと気の利く子で、『もみじ』という名前だ。
明日の朝、クロモに送ってもらい村で生活する。
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