山神様への嫁入り

みーか

文字の大きさ
上 下
50 / 90

50 つゆ子の嫁入り

しおりを挟む
 朝、クロモの糸で荷物を大熊の体にしっかりと結びつけ、つゆ子も糸で落ちないようにした。

 大きな熊が凄いスピードで走り去って行った。

 つゆ子には、蜘蛛を10匹ほど連れて行ってもらい様子が見られるようにした。

 村に着いたつゆ子は、村の男に合わせて15歳くらいまで成長していて、その男もつゆ子を見て、一目で結婚相手だと分かったようで仲良く家に入って行った。
 蜘蛛達は、家の中や畑などつゆ子が行動するであろう場所を探して蜘蛛の巣を張り、クロモにつゆ子の様子を知らせた。


 ゆきや春太が帰ってきて、賑やかになり小梅も一緒に住めて大喜びの桃は、ご機嫌で歌いながら機織りを頑張った。
 その歌に合わせて、ゆき、春太、小梅、夏子、秋男、秋夜、鶴子、クロ、サクラ、鶏達が歌い出し、我慢出来ずクロモも加わる。
 
 鶏達は卵をポンポン産み、ヒヨコはグングン成長し鶏になり、布の輝きが増していき、林檎の木が大きくなり、その横から新しい林檎の木が生えてきた。他の果物も次々に増えていきどんどん成長してクロモの家のある山の半分が果物の木になってしまった。畑の野菜も増えているし、今まではクロモの家の周りだけだったが、山全体の木が花を咲かせた。

 外に出て、あまりの光景にクロモは絶対に一緒に歌うのはやめようと思った。

 やはり桃にも影響があり、すぐ出産。女の子が産まれ『花』と名付けた。
 
 ゆきや小梅にも影響があったようで、ゆきは、春になる前に産まれそうだし、小梅もお腹が目立つくらい大きくなった。

 花に乳を飲ませながら、桃はクロモに頼んでつゆ子の様子を見ていた。

 つゆ子は、夫となった太一と雪を掻き分けて苗木を植えたり、畑を作ったりしていた。
 つゆ子が嫁に行く事で、村に大熊の事が正しく伝わり、大熊も村まで来て畑仕事などを手伝ってくれている。
 クロモから教わった植物に少し神力を分ける事で、雪深い村でも果物の木が育ち実をつけていた。
 つゆ子は、桃譲りの綺麗な歌声で毎日歌い、連れて行った鶏達も一緒に歌った。大熊も低い綺麗な歌声でつゆ子の声に合わせて畑仕事をしながら歌い続けた。

 ちょうど桃がつゆ子の様子を見ていた時に、子に恵まれなかった夫婦が大熊の元に走ってきた。

「山神様!!ありがとうございます。私達に子が授かりました!!もうお腹が少し膨らんで、動いているのがわかるんです!!」
「良かったな!本当に良かった!!」
「はい!!これも山神様とつゆ子様のおかげです!!」

「おーい、太一、つゆ子ちゃん!!大変だ!!」
「父さんどうしたの?」
「か、母さんの腹が膨らんで来て、どうやら子ができたようなんだ。」
「うちもなんだ!もぅ子どもは諦めていたのに……。山神様とつゆ子様のおかげだ!」
「そうだな。つゆ子ちゃんの歌を聞いていると力が湧いてくるんだ。それに、若返ったような気がする。太一、本当に素晴らしい嫁をもらったな!!」
「うん。つゆちゃんは凄い。可愛いし歌が上手いし、畑の事もよく知ってて、山神様と僕達との架け橋になってくれた。僕には勿体ないよ!」
「そんな事はないです。太一さんが優しく私を迎え入れてくれたから。私は、ここに来られて太一さんと一緒になれて幸せなんです。大熊様、連れて来てくださってありがとうございます。」
「いや、つゆ子殿が来てくれたから村が変わっていった。つゆ子殿にも、黒蜘蛛殿、桃殿にも感謝しても足りない。ありがとう!!」

 幸せそうで良かったぁ~。つゆ子も笑顔だし、村の人達も幸せそう。

 桃はホッとしながら、花をサクラに預けて機織りをした。


 雪が降る日が減り、梅の花が咲き出した頃、ゆきに陣痛がきた。

 サクラが慣れた様子で、準備をして、桃もゆきの手を握る。
「少し痛いけど、料理で指を切った時の方が痛いわ。」
「ゆき様、そろそろ頭が出て来そうです。お腹に力を入れてください。」
「わかった。……んんんーーーー!!」
「そぅ、もう少しですよ!」
「んんんんんーーーー!!!」
「おぎゃーんぎゃー!」
「可愛い女の子です!………あれ?ゆき様、もぅ1度お腹に力を入れてください!!」
「えっ?わかった……んんんんーー!!」
「んぎゃーんぎゃー!!」
「双子ですよ!!ゆき様!!2人とも女の子です。」
「えぇ!!ゆき、凄いわ!!よく頑張ったね!」
「母様、双子なんてビックリね!あっ、母様もこれでおばあちゃんね!」
「………あ……そうか。じゃあ、外で待ってるおじいちゃんに報告してくるね!」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

処理中です...