山神様への嫁入り

みーか

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 これから、つゆ子達も住む事になるからと毎晩出かけて行き、家を増やしていった。

 源と春太と爺様は、山神様への御礼が必要だと雪が降り始めた山道を歩き、祠まで行き小梅が織った布を供えた。

 途中、爺様が足を滑らせ怪我をしてしまい、春太が背負って村まで歩きゆきが林檎を食べさせてと、大騒動になった。

 
「ねぇ、クロモ様。祠ってなんで村から遠いの?近くにしたらダメなの?」
「うーん、そうだなぁ。俺が山神になった時には、すでにあの山に祠があった。移動させるとか考えた事もなかったな。」
「うーーん、でもさ、小梅が結婚して子が産まれたら、この近くで暮らしてもいいんでしょう?それなら、爺様とか結婚してる人や、幼い子なんかは、ここで暮らしてもいいんじゃないの?そしたら、わざわざ恵みとか言って年に一度大荷物取りに来なくていいし、嫁入りだって楽になるよね。それに、ゆきにも会える!できないのかなぁ……?」
「そうだよな。そうできれば、色々と楽だ。せめて隣の山に村があれば、俺がいつでもすぐに行ける。」
「山犬様に聞いてみようよ!無理なら仕方がないけどさ、聞くだけでも!」
「そうだな!……あっ……こっちから神界に行く事は出来ないぞ。どうする?」
「そっかぁ~。うーん、呼んでみる?」
「どーやって?」
「無理だろうけど……おーーーーい、山犬様~!!」
「あはははは、それで来てくれたら楽でいいけどな!」
「だよねぇ~、えへへへへ。」

「呼んだか?」
「「えっ?」」
「桃の俺を呼ぶ声がしたから来てみたが、違ったか?」
「いえ、呼びました。」
「何か用か?」
「山犬様、ちょっと聞きたい事があって。せっかくだから座ってください。珈琲淹れてきますね!」
「桃様、サクラがお持ちしますので、お話しをしてください。」
「サクラちゃん、ありがとう。よろしくね!」

「えっとですね、村と祠とこの家がかなり遠いじゃないですか。近くにする事はできないのかなぁってクロモ様と話してたんです。」
「ふむ、なぜ近くにしたいのだ?」
「娘のゆきと息子の春太が村に行ったのですが、村人が少ない為、小さな家が必要な分しかなく、今増やしている所です。俺が夜に行っては建てていて、それを知った村の爺様が祠に御礼に来てくれたのですが帰りに足を滑らせて怪我をしてしまったのです。」
「それで、もしも村や祠が近かったら、もっと楽なのにって思いまして……。」
「なるほどな。事情は分かった。俺が祠を隣の山に作り、そこからかなり離れた場所に住んでいたのは、勝手に嫁になりたいと押しかけてくる娘がいたからだ。何を勘違いしたのか、嫁が死ねば百年待つ必要がないとか都合の良い勘違いをして夜にこっそりと忍び込んだり、毒の入った物を食べさせようとしたりと大変だったんだ。まだ嫁が2人ほどの時はなんとか守る事ができたが、嫁を殺そうとする娘がどんどん増えていってな。まぁ俺がモテるのも悪かったんだが、仕方ない。それで、祠を作り、そこに嫁を連れて来るようにした。祠の近くをウロウロと探し回る者もいたから、家をさらに遠くにした。夜中に俺の布団に潜りこんでくる娘や、俺の嫁に惚れていたと夜這いをしようとする者も多かったんだ。危なくて近くに家など建てられなかった。」
「そんな事になってたんですね!」
「だから、小梅の事も確実に夫婦になって子が出来てからなら近くに住んでも良いと言った。例え俺の意思に関係なく嫁以外の女が俺の子を妊娠したり、嫁が村の男に妊娠させられたりしたら、村は確実に滅びる。それだけの力を与えて嫁に選ばれるのだから、その理りから外れた事が起きる事は絶対にあってはならん。嫁とはそれほど神聖なものだ。そこさえ理解すれば、問題はないぞ。」
「じゃあ、私やクロモ様が村に行ったらダメだったり、嫁入りの日以外に恵みを与えてはダメって言うのは、どうしてですか?」
「あぁ、それはな、俺の姿を見て惚れる者が多いだろ?余計な争いがないように決めた事だ。しかも、嫁1人だけ連れて村に行く事も揉め事に繋がるしな。8人全員連れて行く事はできなかったからなぁ。どの嫁も我が子に会いたい気持ちは同じだから公平に誰も会わないようにした。恵みも今ほど物が無かったからな、一年に一度で問題はなかった。」


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