山神様への嫁入り

みーか

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44 謝罪

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 ゆきは、餌を持って鶏に囲まれていた。
 木の影から、そーっと覗いて源が見ている。

「ゆき、元気だせ!」
「ゆき、卵、食べる?」
「俺、いるぞ。」
「私、達、一緒!」
「ありがとう。あなた達がいてくれて良かった。こうして話せるのが凄く心強いよ。私ね、どうしていいか分からないんだ。」
「仕方、ない。」
「ゆき、普通!」


 源は、そっと出て行ってゆきに近づく。
 すぐに気付いた鶏達が騒ぎだす。

「ゆき、泣かすな!!」
「クロモ、仇!」

 一斉に鶏達が飛びかかり、突かれ蹴られる。
 源は、避ける事なく全て受け止めて、泣きながら土下座した。

「……俺、本当に……ごめんなさい!!ゆきさんのお父さんに酷い事した。謝る事しか俺にはできない。春太にも怒られた。俺、本当に何も分かってなくて、ゆきさんを幸せにするって約束したのに……最初から間違えてしまって……あの、本当にごめんなさい!!」
「………うん。待ってたよ。謝ってくれるの。……許すよ。」
「…ほ、本当?許してくれる?俺、ゆきさんが好きです!結婚してください!!」
「はい。よろしくね、旦那様。でもね、条件があります。」
「やったーー!!……えっ?……条件?」
「うん、条件。もっと大きな家を作って。必ず子宝に恵まれるから今の家では狭すぎるの。それと、今の倍は働いてね。父様も春太ももっともっとよく働いてたわ。後……母様は父様のもの!私は浮気は絶対に許さないから!!」
「……はい。」
「声が小さい!」
「はいっ!!!」
「よし。さぁ帰って畑仕事をしましょう。それから義父様と義母様に結婚の報告もしなくちゃね!式の準備は、ほとんどできてるから、明後日にも式を挙げるわよ。」
「はいっ!!!」

 俺の娘……怖い……。源、頑張れ~。すでに尻に敷かれてるけど、その方が上手くいくぞ~!!
 
 声は届かないけど、クロモは心から応援した。

 隣で桃は満足そうだ。やっぱり女は強い。

 村の人達にも手伝ってもらい、源の家の横にさらに大きな家を建て始めた。

 ゆきの結婚式は、桃が織った布で作ったウエディングドレスを着て、教会もバージンロードもない村なので鶏達が作る鶏ロード?を鶏達の合唱に合わせて春太と進み、ガチガチに緊張した爺様と源の待つ源の家の庭まで進み、源と一緒に爺様に2人仲良く暮らしますと宣言して、村人全員に祝福された。
 最後には、鶏達の合唱に合わせて風が吹き、桃の花びらがどこからかふわふわと飛んできて、とても綺麗だった。ゆきの耳には、桃の歌声も聴こえてきて、嬉しくて涙するゆきの美しさに源は、赤面を通り越して赤黒い顔になり鼻血を吹いて倒れた。
 源の両親に、情け無いと家の中に運ばれていき、その後、春太と小梅が作った料理が並べられ、強い風が吹いて目を開けるとサクラが作ったウエディングケーキや、見た事のないご馳走が並んでいた。
 源は、汚れるからと服を着替え普通の服でケーキ入刀をした。村では初めてのカメラで沢山の写真を撮って、村の人達は初めて食べるケーキやご馳走に大喜びだった。

 桃は、クロモと手を繋いで蜘蛛達からの視界を使ってゆきの結婚を祝った。
 サクラやクロも料理を作ったりしながら時々クロモと手を繋いでゆきの結婚を祝ってくれた。

 次の日から、桃は機織りを頑張り、クロモは、つゆ子に勉強を教え出した。

 桃が6人目の男の子を産み、『秋夜(しゅうや)』と名付けた。
 妊娠期間も少しずつ短くなってきている。
 やはりと言うべきか、すぐに7人目を妊娠。
 その頃にはゆきの妊娠も発覚して、源が大喜びしていた。

 桃ほどではないが、ゆきも妊娠期間は短いようで、すでにお腹が少し目立ってきている。

 小梅からの手紙で赤ちゃん用品を多めに欲しいとゆきが言っていると知り、娘に送るのだから恵みを待つ必要ないだろうとクロモが買い物に行って、初孫の為に大量に買い込んできた。
 もちろん、今回はマタニティーグッズも完璧だ!!

 夜中にクロモがこっそりと運んでおいた。
 ついでに、ゆき達の新居をクロモが一晩でほぼ完成させて、春太の家も完成させた。
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