山神様への嫁入り

みーか

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36 山犬様

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 桃が目をぎゅっと閉じて体を縮めた時に、声がした。

「おいっ!!山犬様、桃を揶揄ないでください!!」
「ク、クロモ様ーーー、この怖い人が急に家の中に!!」
「落ち着け桃、大丈夫だ。俺の前の山神様だ。」
「え?」
「驚いたか?俺が山神だ。まだ山神をやめていなかったら、お前は、俺の嫁だ。」
「クロモ様で良かったぁ~。」
「おい、失礼だな!!」
「だって、顔怖い。」
「俺はそこの蜘蛛と違ってモテモテだぞ!!」
「蜘蛛でもクロモ様の方が良い。」
「…………酷くないか?俺は、元とはいえ、神だぞ?」
「クククククっ!!あははははは!も、桃、本当に桃はブレないな!すみません、こいつは俺にも最初から失礼だったので許してやってください。」
「まぁいい。今日はな、初めての出産は大変だろうと思い、俺の嫁を1人連れて来た。そこの眷族にでも覚えてもらえ。産まれて落ち着いたら迎えに来る。ほら、出て来い!」
「わたくし、ふゆと申します。」
「あっ、よろしくお願いします。桃です。あ、あの、山犬様……ありがとうございます。」
「はははは、よいよい。産まれた後などの事は俺はよく分からないからな!ふゆにしっかりと教えてもらえ。」
「はい。あっ、そうだ。クロモ様、ご飯食べていってもらいましょう!!お酒もありますよ!」
「そうだな。聞きたい事もあるし、どうでしょう?」
「では、遠慮なくいただくとしよう。」

 サクラと一緒に簡単な料理を作り、ひとまずお酒と一緒に出す。
 後はクロが一緒に料理を作ってくれると言うので、桃も話しに加わった。

「ほぅ、この酒は美味いな!」
「これは梅の実を漬けた、梅酒。本当なら、もっと漬け込むのですが桃が歌うと酒が早く出来上がる。」
「俺も梅酒は知っているが、これほどの味だったか?」
「桃の歌で、野菜は良く育ち美味しくなり、あの林檎は実が大きくなり効果も上がる。梅酒の味も美味しくなる。さぁ、この料理も桃の歌を聞いて育った野菜です。美味しいですよ。」
「それは楽しみだ。」

 料理もどんどん運ばれてきて、昔に無かった料理を美味い美味いと食べてくれる。
 ふゆは、お淑やかにパクパク食べているが、かなり気に入ったのか箸の動くスピードがすごい。

「あっ、山犬様。私、山犬様の本当の姿が見てみたいです。」
「お?いいぞ!惚れるなよ。」

 ふわっと風が吹いて、大きなもふもふのちょっと顔が怖い犬がお座りをしていた。

「か、かっこいいー!それに可愛いーー!さ、触っても良いですか?」
「あぁ、いいぞ。」
「ぅわ~、ふっかふか。」
「そうだろ?桃、俺の嫁になるか?」
「桃を揶揄わないでください!!」
「まぁ、そう妬くな。後1人くらいなら嫁が増えるのも良い。どうだ?」
「山犬様、元の姿はクロモ様に比べたら月とスッポン!気持ち悪い蜘蛛よりずっとずっと素敵です。でも、私はクロモ様の容姿が好きなんじゃないんです。クロモ様が私を思ってくれる気持ちが大好きなんです。」
「ほぉ~、良かったな、黒蜘蛛。」
「……はい。」
「なので、ごめんなさい。私はいくら気持ち悪い蜘蛛でもクロモ様の嫁がいいです。それに少しは慣れて来ました。思い出すくらい………うっ……ぉえ。」
「ぅわー!!桃、ここで吐くな!!それに、さっきから気持ち悪い言い過ぎだ!!」
「がはははははははは、面白い嫁をもらったな。」

 
 サクラとふゆの部屋を整えて、暖めておいた。妊娠中の桃は先に休ませてもらう事にした。

 桃が部屋に入ってからもしばらく料理を楽しみ、ふゆを部屋に案内してから、クロモは自分が引いた温泉に案内して山犬様と一緒に入る事にする。

「俺に聞きたい事があるのだろう?」
「はい。俺は桃が嫌がるから日中は人間の姿でいます。どれくらいなら人間の姿でいても大丈夫なのでしょうか?」
「ふむ。俺は日中元の姿だったが夜は毎晩人間の姿になっていた。嫁が8人もいたら大変でな。あまり気にしなくていいんじゃないか?」
「そ、そうですか。」




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