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28 初めての町
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桃がクロモに嫁いで、2ヶ月ほど経った。
外は雪がチラチラ舞う日もあったりと、寒くなってきたが、クロモの家は熱かった!!
とにかく鶏がうるさい。桃が歌えば鶏達も歌い出す。数が数だけに大合唱だ。
もぅ500羽ほどになる。流石にヒヨコになる卵は、春になるまで産まないでくれと言い聞かせた。
寒いと文句を言うので火を焚き、もっと美味しいのが食べたいと言うので、餌にキャベツの外側や大根の葉や芋の切れ端などを刻んで混ぜてとクロが大忙しだ。
クロモも、冬に備えて薪を作ったり、薪ストーブを買ってきて設置したりと冬支度に一日中走り回っている。
サクラも、鶏の餌の用意に皆んなの食事の準備、掃除洗濯と休む暇なく働いている。
洗濯も、桃の服とタオル、布団のシーツや枕カバーなど、かなりの枚数になる。外に干せないので空いている部屋にクロモの糸を張り、乾かしているが時間がかかる。
桃は、すっかり自分よりお姉さんになったサクラに家の事を任せて毎日機織りを頑張っていた。
ある日、クロモが雪が本格的になる前に町に行こうと言ってくれ、桃は前日から絶好調で準備した。
着ていく服は、時々クロモと寝る時に見せてくれる町の様子を見て、クロモと一緒に考えた、桃色の可愛いセーターにふわふわした薄い茶色の膝丈のスカートにした。
それに、白のコートと茶色のブーツだ。
サクラが朝から髪の毛を可愛く両サイドから編み込んでくれた。
蜘蛛の姿を見なくて済むように眠らせてもらい、荷物を背中に、桃はクロモのお腹に抱っこされる形で出発した。起きていたら、クロモはゲロ塗れになっているだろう。
町の近くの林の中で、桃は起こされクロモと一緒に初めての町に繰り出した。
最初に行ったのは、いつもクロモが布を売っている反物屋さん。
桃の織る綺麗な布が、高額で買い取られるのを、ビックリしながら見る。
「いつもありがとうございます。クロウ様!」
「こちらこそ。どうですか新しい布は?」
「それはそれは人気でして、幾らあっても足りない状況です。それに、ここだけでしか手に入らないと注文が殺到しております。」
「そうですか。今日は、この布を織っている妻を連れて来ました。桃、こっちに。」
「は、はい。クロウ桃です。よろしくお願いします!!」
「まぁ可愛らしい奥様ですね。クロウ様が隠しておきたがるのも理解できます。ふふふふ。」
町では苗字というものがあり、ここではクロモはクロウと名乗っているそうだ。
「そうだわ、奥様。こちらの布で作ったウエディングドレスとベールが昨日届きました。ご覧になられますか?」
「……?」
「桃、見せていただこう。結婚式で最近はウエディングドレスを着るのが流行っているそうだよ。」
「そ、そうなんですね。はい、見てみたいです。」
「おほほほ、奥様は着物で式を挙げられたのですね。今は着物の後にドレスを着て披露宴を行う事が多いのです。」
「妻は、遠い村から嫁いできましたから、町のことには疎いのです。」
「そうでしたか。随分とお若いように見えますし、かなり昔ながらの嫁入りだったのでしょうね。」
「そうなんです。」
「ささっ、こちらへ。」
案内された部屋に行くと、それはそれは素敵なドレスが掛けてあった。
ベールという物にも綺麗な花の刺繍があちこちに散りばめられていて、桃はホケーーーっと見惚れてしまう。
「店主、この反物で妻に合いそうなドレスを仕立ててくれるか?もちろん仕立て料は払う。」
「もちろんでございます。では、奥様、少し採寸させていただきますのでこちらへ。」
「えっ、でもクロモ様、私、そんな……。」
「奥様、どうぞこちらへ。大丈夫ですよ、この布一反で大きな家が建つほどの儲けになります。ドレスくらいおねだりしても怒られたりしませんよ。」
「そうだぞ、桃。これを織ったのは桃だ。自分の織った布のドレスを一つくらい持っていろ。」
「は、はい。」
採寸が終わり、お金をもらって店を出た。
外は雪がチラチラ舞う日もあったりと、寒くなってきたが、クロモの家は熱かった!!
とにかく鶏がうるさい。桃が歌えば鶏達も歌い出す。数が数だけに大合唱だ。
もぅ500羽ほどになる。流石にヒヨコになる卵は、春になるまで産まないでくれと言い聞かせた。
寒いと文句を言うので火を焚き、もっと美味しいのが食べたいと言うので、餌にキャベツの外側や大根の葉や芋の切れ端などを刻んで混ぜてとクロが大忙しだ。
クロモも、冬に備えて薪を作ったり、薪ストーブを買ってきて設置したりと冬支度に一日中走り回っている。
サクラも、鶏の餌の用意に皆んなの食事の準備、掃除洗濯と休む暇なく働いている。
洗濯も、桃の服とタオル、布団のシーツや枕カバーなど、かなりの枚数になる。外に干せないので空いている部屋にクロモの糸を張り、乾かしているが時間がかかる。
桃は、すっかり自分よりお姉さんになったサクラに家の事を任せて毎日機織りを頑張っていた。
ある日、クロモが雪が本格的になる前に町に行こうと言ってくれ、桃は前日から絶好調で準備した。
着ていく服は、時々クロモと寝る時に見せてくれる町の様子を見て、クロモと一緒に考えた、桃色の可愛いセーターにふわふわした薄い茶色の膝丈のスカートにした。
それに、白のコートと茶色のブーツだ。
サクラが朝から髪の毛を可愛く両サイドから編み込んでくれた。
蜘蛛の姿を見なくて済むように眠らせてもらい、荷物を背中に、桃はクロモのお腹に抱っこされる形で出発した。起きていたら、クロモはゲロ塗れになっているだろう。
町の近くの林の中で、桃は起こされクロモと一緒に初めての町に繰り出した。
最初に行ったのは、いつもクロモが布を売っている反物屋さん。
桃の織る綺麗な布が、高額で買い取られるのを、ビックリしながら見る。
「いつもありがとうございます。クロウ様!」
「こちらこそ。どうですか新しい布は?」
「それはそれは人気でして、幾らあっても足りない状況です。それに、ここだけでしか手に入らないと注文が殺到しております。」
「そうですか。今日は、この布を織っている妻を連れて来ました。桃、こっちに。」
「は、はい。クロウ桃です。よろしくお願いします!!」
「まぁ可愛らしい奥様ですね。クロウ様が隠しておきたがるのも理解できます。ふふふふ。」
町では苗字というものがあり、ここではクロモはクロウと名乗っているそうだ。
「そうだわ、奥様。こちらの布で作ったウエディングドレスとベールが昨日届きました。ご覧になられますか?」
「……?」
「桃、見せていただこう。結婚式で最近はウエディングドレスを着るのが流行っているそうだよ。」
「そ、そうなんですね。はい、見てみたいです。」
「おほほほ、奥様は着物で式を挙げられたのですね。今は着物の後にドレスを着て披露宴を行う事が多いのです。」
「妻は、遠い村から嫁いできましたから、町のことには疎いのです。」
「そうでしたか。随分とお若いように見えますし、かなり昔ながらの嫁入りだったのでしょうね。」
「そうなんです。」
「ささっ、こちらへ。」
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「店主、この反物で妻に合いそうなドレスを仕立ててくれるか?もちろん仕立て料は払う。」
「もちろんでございます。では、奥様、少し採寸させていただきますのでこちらへ。」
「えっ、でもクロモ様、私、そんな……。」
「奥様、どうぞこちらへ。大丈夫ですよ、この布一反で大きな家が建つほどの儲けになります。ドレスくらいおねだりしても怒られたりしませんよ。」
「そうだぞ、桃。これを織ったのは桃だ。自分の織った布のドレスを一つくらい持っていろ。」
「は、はい。」
採寸が終わり、お金をもらって店を出た。
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